第815話 光の柱

「ぐああああっ!?」

「ミノ……さん!?そんな……!!」

「ちっ、そういえばてめえもいたな!!この間の借りだ、死んじまえっ!!」

『ギギィッ!!』



イルミナはミノが自分を庇う姿を見て驚き、一方でガロウの後方からゴブリンの群れが駆けつける。それに気づいたガロウは鬱陶しい表情を浮かべてアックスを周囲に振り回す。



「しつこいんだよ、お前らっ!!回転斧!!」

『ギィアアアッ!?』

「ぐはぁっ!?」

「きゃあっ!?」



ガロウの発動した戦技によってゴブリン達は吹き飛び、ミノも後ろに倒れ込んでイルミナも巻き込まれてしまう。流石にガロウも全身から汗を流し、周囲に視線を向ける。


神器アックスによって地面には数十名のエルフの戦士と獣人兵が倒れ込み、その中にはダンゾウとカツ、ミノやイルミナ、更にはゴブリン達の姿も存在した。もう誰もがまともに戦える状態ではなく、彼は勝ち誇った笑みを浮かべた。



「はっ、ははっ……ははははっ!!何だ、もう終わりかお前等?俺はまだ戦えるぞ!!さっきまでの威勢はどうした!!」

「しょ、将軍!!お辞め下さい、もうこれ以上は……あぐぅっ!?」

「ちっ、うるせえな……よし、ここで景気づけに花火でも打ち上げるか」



側近の兵士がガロウを落ち着かせようとすると、彼はそんな兵士の首を掴んで戦車の魔大砲の発射準備を指示する。次の標的は里内に存在する民家へと視線を向け、攻撃を行うように命じた。



「あそこから臭いがするな……薬草臭い、怪我人をあの場所に匿っているな。よし、あの建物を撃て」

「しょ、将軍……」

「何だ?その顔は?ああ、どうせ怪我した奴等なんて奴隷に出来ないだろ。治療するのにも金が掛かるんだ。まあ、エルフの女は勿体ないが仕方ねえだろ……命令だ。ここに存在する建物を一つ残らずぶっ壊せ」

「はっ、はい……分かりました」



兵士は逆らっても無駄だと判断すると、怯えた表情を浮かべながらも戦車の元へ向かう。もうガロウを止められる存在はおらず、戦えない者達が隠れている建物へ向けて戦車は砲台を構える。



「さあ、派手な花火を打ち上げろ!!」

「や、止めろぉっ……!!」

「ここまでかっ……!!」



戦線に参加していたライクとアルフは戦車の砲口が建物に構えられる光景を確認し、もう終わりだと確信した。しかし、この時に突如として里の北側の方角にて「光の柱」が誕生した。


光の柱に気付いたのは地上の者達だけではなく、飛行船に乗り込んでいたイレイナ達も確認する。突如として地上から発生した光の柱を見てガロウは何処かで見覚えがある事に気付き、すぐに先日の剣を思い出す。



「あの光はまさか……来訪者か!?」

「くそっ……遅いんだよ」

「来たか……」

「ええ、間違いありません……やっと、来てくれたのですね」



倒れていたカツ、ダンゾウ、イルミナの3人は光の柱を見て笑みを浮かべ、その様子を見たガロウは嫌な予感を覚えた。この状況で島の外から来訪者が現れた事に彼は危機感を抱き、すぐに2両の戦車に砲撃を行うように命じた。



「撃て!!早く撃て、さっさとしろぉっ!!」

「こちらはまだ装弾が終わっていません!!」

「魔大砲、発射準備完了しました!!放てぇっ!!」



2両の戦車の内、ガロウが最初に討ち込んだ戦車は次の装弾に手間取り、もう片方の戦車は準備を終えていた。ガロウの許可を得ると戦車は砲口を光り輝かせ、地属性の魔石で構成された砲弾を放つ瞬間、上空から聞き覚えのある少年の声が響く。




「――させるかっ!!」




空から下りてきたのはスケボに乗り込んだレナであり、彼は魔銃を構えていた。砲弾が発射させる寸前、レノは狙いを定めて魔銃を発砲すると、発射されたオリハルコン製の魔弾が砲口へと入り込み、魔石砲弾を打ち砕く。


その結果、砲台にて砕け散った魔石は暴発し、戦車が吹き飛ぶ。乗り込んでいた獣人兵達は戦車の残骸と共に地面へと叩き込まれ、白目を剥いてガロウの前に転がり込む。



「なっ!?ば、馬鹿なっ!?いったい、何が起きた!?」

「ふうっ……間に合った」



レナは魔銃をホルスターに戻すと、もう一両の戦車に視線を向けた。戦車に乗り込んだ獣人兵は恐怖の表情を浮かべ、急いで魔大砲を発射させようとした。



「ひいっ!?く、来るぞ!!」

「撃て、早く撃てっ!!」

「待て、止めろっ!!そいつに手を出すな……!?」



ガロウが止める暇もなく、危機感を抱いた獣人兵はレナが近づいてくる前に魔大砲を発射させる。それに対してレナは左腕に装着した「勇者の盾」を構えると、正面から迫る砲弾に盾を構えた。



「うおおおっ!!」

「馬鹿なぁっ!?」



盾に魔石砲弾が衝突した瞬間、盾に紅色の魔力が発生すると、魔石砲弾を弾き返す。レナも後ろに転んでしまったが、魔石砲弾は上空へと弾かれ、空中に衝撃波が広がった。その光景を目にした者達は唖然とした表情を浮かべ、一方で地面に転んだレナは無事に盾で砲弾を跳ね返す事が出来た事に安堵する。

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