第812話 魔大砲
「ぐふっ……な、何が……」
「ぞ、族長の屋敷が……」
「そんな、あそこには子供達が……!!」
「何てことをっ……」
エルフの戦士達は吹き飛んだ族長の屋敷を見て絶望の表情を浮かべ、屋敷の中には里中の子供達が避難させていた。戦車からガロウは顔出すと、戦車に搭載した「魔大砲」の威力を確認し、笑い声を上げる。
「は~はっはっはっ!!こいつはいいな、一発で吹き飛んじまったか!!」
「お、おのれぇっ……」
「許さんぞ、貴様っ!!」
「おっと、危ないっ!!」
ガロウに対して矢が放たれるが、彼は戦車の中に引っ込んで回避すると、再び砲台を動かす。その様子を見ていたエルフ達は怯え、先ほど屋敷を吹き飛ばした砲撃を思い出す。
「と、止めろ!!あれを何とかしなければ……」
「しかし、どうやって!?」
「あの筒のような部分に攻撃しろ!!それ以外に方法はない!!」
『勘の良い奴もいるじゃねえか。だが、俺だけに集中していていいのか?』
戦車は1台ではなく、もう1台存在した。飛行船の甲板から新たな戦車が投入され、地上へと降りたつ。2代目の戦車が降りてきた事に戦士達は唖然とした表情を浮かべる事しか出来なかった。
イレイナは飛行船の上から様子を観察し、彼女が戦車を操作していた。地上の様子を観察し、ここで戦車を投入すればエルフ達をより追いつめられると判断した上での行動である。
(早く降参しろ……これ以上に犠牲者を増やすな)
地上の様子を観察しているイレイナはエルフ達が早急に降伏する事を祈る。この位置からでは会話は聞こえないが、戦車の投入によってエルフ達は追い詰められている事は分かり切っていた。
しかし、先ほどのガロウの砲撃によって屋敷が崩壊し、その中にエルフの子供達が避難していた事まではイレイナも知らない。知っていればガロウの行動を止めていただろうが、飛行船を守るという立場上はイレイナは地上へ降りる事は出来なかった。
「よくも、よくも私の息子をっ!!」
「死ね!!この汚らわしい獣人めっ!!」
「うおおおっ!!」
『あ~あ、無駄だ無駄だっ!!お前等如きじゃ、いくら束になろうと戦車には勝てねえんだよ!!』
戦車に特攻を仕掛けるエルフ達に対してガロウは呆れた声を上げ、砲台を操作して二発目の「魔石砲弾」を発射しようとした時、ここで強烈な光が戦車の背後から放たれる。
「マジック・アロー!!」
『うおおっ!?』
戦車の背後から無数の魔弾が放たれ、2台の戦車に直撃した。思いもよらぬ攻撃に戦車に搭乗していたガロウは驚きの声を上げるが、いったい何が起きたのかとハッチを開いて外の様子を伺う。
「だ、誰だ!?何者だ!?」
「……これ以上は見ていられませんね」
「ああ、我慢の限界だ!!」
「許さん……!!」
里を取り囲む森の中から仮面を被ったイルミナ、カツ、ダンゾウが姿を現す。その様子を見てガロウは驚き、同時にすぐに思い出す。
「そうか、てめえらが来訪者か!!報告は上がっているぞ、くそがっ!!」
「よくも何も悪くないこいつらをいたぶってくれたな……てめえだけは許さねえっ!!」
「本来は部外者の私達ですが……もう見ていられません!!」
「覚悟しろ、お前達は許さん」
里の屋敷を吹き飛ばし、更にエルフ達を蹂躙しようとする獣人兵の姿を見てルイ達も黙って見てはいられなかった。イルミナも遂に戦闘に参加し、彼女は砲撃魔法の準備を行う。
イルミナは杖を天に構えると、上空を浮揚する飛行船に狙いを定め、戦車と飛行船を操作するイレイナを仕留めるために魔法を発動させる。
「フレア!!」
「うおっ!?」
「な、何という魔力だ!?」
「信じられん!!」
杖先に魔法陣が展開すると、巨大な火球が出現し、飛行船の方向へ向けて放たれる。その光景を見たエルフの戦士達は驚きの声を上げ、火球は飛行船へと向かう。
火属性の上級魔法である「フレア」は対象に衝突した瞬間、広範囲の爆発を引き起こす。その威力は大船を焼き尽くす威力は存在し、木造製の船ならば一たまりもなかった。
「イレイナ様!!火球が……!?」
「……問題ない、撃てっ!!」
「魔大砲!!発射準備!!」
しかし、迫りくる火球に対してイレイナは指示を出すと、船に搭載された砲台の魔大砲が狙いを定め、迫りくる火球に対して魔石砲弾を放つ。その結果、魔石砲弾が火球に衝突した瞬間に衝撃波を発生させ、火球を打ち消す。
その光景を確認したイルミナは驚愕の表情を浮かべ、空中に火炎が拡散する。まさか飛行船にも魔大砲を搭載していた事に動揺を隠せず、ガロウは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「ははははっ!!どうした、これで終わりか!?言っておくが、あの船には10両の魔大砲が設置されてるんだ!!その気になれば俺達はいつでもこんなちっぽけな里なんて吹き飛ばせるんだよ!!」
「そんなっ……」
「だったらてめえを人質にするまでだ!!」
戦車から顔を出したガロウに対してカツは駆け込み、手にしていた戦斧を振りかざす。それに対してガロウは笑みを浮かべ、自らも戦車から抜け出して手にしていた戦斧を放つ。
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