第806話 鋼鉄の八輪車
「おおっ……相変わらず大した力だな」
「ダンゾウがいてくれて助かりましたね。しかし、今ので地上の者にも気づかれた可能性があります。回収したらすぐに引き上げましょう」
「あと少しだと思うんですけど……」
ダンゾウの一撃によって岩石を破壊され、瓦礫を撤去しながらカツたちは掘り進むと、やがてミノのスコップに硬い物がぶつかる音が鳴り響く。彼は急いで土砂を掻き分けると、遂にレノが埋め込んだ地竜の核が発見される。
「おおっ!!見つけたぞ、こいつが地竜の核か!!」
「なっ!?畜生、先に見つけられたか……」
「ギギッ……スゴイ、オオキナチカラヲカンジル」
「ああ、まるで竜種が傍にいるようだ」
地竜の核の発見に成功したレノたちはダンゾウの力で土砂から核を引きずり出し、回収に成功する。地竜の核を前にしてレナ達は圧倒され、まるで傍に地竜が居るかのような存在感を放っていた。
「凄いな、これが竜種の核か……確かにこれを破壊すれば途轍もない事が起きそうだ」
「そのような事態に陥るのは避けたい所ですが……ダンゾウ、持ち運べますか?」
「これぐらいならば問題はない」
ダンゾウは地竜の核を持ち上げ、無事に回収に成功する。レナ達は地竜の核を外に運び出すために掘り進んだ道を引き返そうとした時、ここで天井の方に亀裂が生じる。
「くっ!?」
「うおっ、どうしたレナ!?」
「分かりません、急に上の方から衝撃が走って……!!」
レナは付与魔法の力で土砂を操作する事で通路を維持していたが、突如として地上の方から衝撃が伝わり、天井に徐々に亀裂が生じ始める。このままでは掘り進んだ通路が崩れ去るのは時間の問題だと判断し、急いでレナ達は避難を行う。
地上の方で何かが起きている事は間違いなく、レナ達は天井が崩れ落ちる前に通路を抜けて外への脱出を計る。この際にレナだけは通路を維持するために全員の最後尾を移動し、壁伝いに地属性の魔力を流し込みながら皆の後に続く。
「うおおっ!!走れ走れっ!!」
「あと少しです!!」
「レナ、大丈夫か?」
「俺の事は気にしないでください、早く進んで!!」
他の者を先に行かせた後、レナは後方の通路を振り返ると、遂に天井が崩れ始める。上から大量の瓦礫が降り注ぎ、その光景を確認したレナは魔力を送り込むのを辞めて自分も駆け出す。
(まずいっ……!?)
瞬間加速を発動させ、足の裏から重力の衝撃波を発生させてレナは加速すると、地上へと続く大穴まで辿り着く。どうにか完全に天井に崩れる前に脱出を果たしたレナだったが、ここで他の者達が地上の出入口で立ち止まっている事に気付く。
「どうかしたんですか?」
「しっ……あれを見てください、船が地上に移動しています」
レナ達が地面を掘り進めた場所は湖に存在する飛行船から100メートル以上から離れた場所からだが、この距離からでも飛行船の様子は伺えた。レナはイルミナの指し示す方向に視線を向けると、確かに飛行船が湖から陸地へと乗り上げていた。
先ほどの振動はどうやら飛行船が地上に移動した際の影響らしく、恐らくはイレイナが船を動かし、湖から陸地へ飛行船を移動したと考えられた。しかし、本来は水面に浮かばせるはずの船を陸地にわざわざ移動させた事にレナ達は疑問を抱くと、ここで船の甲板に異変が起きた。
「あれは……何だ!?」
「馬車、か?」
「何ですかあれは……!?」
「まさか、乗り物?」
船の甲板が割れたかと思うと、船内の方から巨大な「八輪車」が出現する。この世界には本来は存在しない代物だが、その外見は自動車というよりも「戦車」を想像させた。戦車に酷似した乗り物はゆっくりと浮上すると、地上へと降り立つ。
八輪車は全体が鋼鉄に覆われ、更には砲台までも存在した。そして戦車から発せられる魔力はイレイナの物で間違いなく、どうやら彼女の付与魔法で動かしている事が発覚する。
「あの乗り物、イレイナが操っているのは間違いないですけど……いったい何なんでしょう」
「分かりません。ですが、嫌な予感はしますね」
「おい、見ろ!!また同じのが出てきたぞ!!」
カツの言葉にレナは船に視線を向けると、同じ型の戦車がもう一台出現したかと思うと、2台の戦車が並ぶ。その様子を確認したレナは嫌な予感を覚え、どちらもイレイナの付与魔法で操っているのは間違いない。
2大の戦車はゆっくりと動き始めると、やがて飛行船の方も動き出し、戦車と共に移動を開始した。その方向は間違いなく南に向けて移動したのを確認すると、敵の狙いが南里である事をレナ達は悟る。
「まずい!!奴等、南里の方へ向かっているぞ!!」
「まさか、もう攻め込む気か!?」
「そんなっ……!!」
「くそ、早く里に戻るぞ!!」
飛行船と戦車が南里に向けて進行を開始した光景にレナ達は焦りを抱き、すぐに南里へ戻ろうとした。しかし、ここでイルミナはがら空きになった転移台を確認し、立ち止まった。
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