第805話 地竜の核の回収
「くそっ、名案だと思ったのによ……」
「そうですね、作戦自体は悪くないと思います……そうだ、それならば地竜の核を先に回収し、加工して地竜の核の一部を使うという手段はどうでしょうか?」
「ん?どういう意味だ?」
「飛行船には先ほどレナが言っていた様に地属性の魔石が設置されています。それを誘爆させれば飛行船の破壊するには十分でしょう。そのために地竜の核を回収し、レナの魔銃の魔石弾のように遠距離から攻撃できる魔石の武器を作り出す、というのはどうでしょうか?」
「あ、なるほど……それなら遠くから船に撃ち込んで壊す事が出来るかも」
イルミナの言葉にレナは賛成し、要するに地竜の核を加工して魔石弾よりも強力な遠距離攻撃用の武器を作り出せばいい。そしてここでレナが思いついたのは火竜との決戦の際に渡された「魔鉄槍」であった。
魔鉄槍は魔石を装着させる事でレノの意思で自由に操作できるだけではなく、その攻撃威力も高く、竜種にすら損傷を与えられる。魔鉄槍のような武器を作り出し、それらに地竜の核を取り込めば船を破壊する武器としてこれ以上に最適な武器はない。
「あの、この里には鍛冶師はいますか?」
「一応は何人か……ですが、普通の魔石ならばともかく、竜種の核の加工となると彼等に手に負えるかどうか……」
「そうですか……あ、そういえばこの島に金属で出来た大きな槍とかはありますか?」
「生憎ですが、そのような物は……基本的に我等の道具は刃物を除けば殆どが木造製でございます」
この島では金属の加工も難しく、建物に関しても全て木造製である。一応は鍛冶師はいるが、彼等も地竜の核の加工や金属製の大型の槍が作り出せるかどうかは分からないという。
だが、他に良案が思いつかない以上は仕方がなく、レナ達は作戦実行のためにまずは地竜の核の回収に向かう事にした。地竜の核は転移台の近くの地中に埋まっているため、まずはどうにかそこまで移動して地竜の核の回収を行う必要があった――
――馬鹿正直に地上から接近し、転移台の地面を掘り返して地竜の核を回収するわけにもいかず、レナ達は獣人兵の監視の目が届かない位置から地面を掘り進んで地中から地竜の核が封印されている場所まで向かう事にした。
「うおおおっ!!」
「負けるかぁあああっ!!」
「ギギィッ!!」
「ガアアッ!!」
「皆、凄い……でも、もうちょっと静かに掘ってくれませんか?」
スコップを手にしたカツと魔人たちが地中を掘り進め、今の所は順調にレナ達は地竜の核の方向に向けて掘り進んでいた。最初に飛行船から離れた場所でレナの付与魔法の力で地中深くまで繋がる穴を作り出し、そこから先は体力自慢の者達が壁を掘り進む。
付与魔法の力で一気に地中の土砂を掻き分けて進めばいいのではないかと思われるが、壁を堀った際に出来上がった通路が崩れないようにレナは常に壁や天井に魔力を流し込む必要があるため、もしも気を抜けば天井が崩落し、皆が押し潰される可能性がある。そのために自力でカツたちは壁を掘り進む必要があった。
「いいか、地竜の核を最初に見つけ出した奴が一番だ!!そいつがこれからは魔人の隊長だからな、忘れるなよ!!」
「うおおおっ!!隊長の座は渡さねえぞっ!!」
「ギギッ、マケナイッ!!」
「ガウガウッ!!」
「カツ……貴方、いつから魔人になったのですか」
魔人たちを扇動して地中を掘り進めるカツにイルミナは呆れるが、彼等のお陰で順調に壁を掘り進んでいく。ちなみに当てもなく地面を掘り進んでいるわけでもなく、イルミナが魔力感知を発動させて地竜の核の位置を把握し、彼女が指示を出して壁を掘り進む。
「ちょっと待ってください……若干、ずれていますね。こちら側の壁から掘り進んでください」
「よし、こっちだな……うおりゃあっ!!」
「うおおっ!!おっ!?」
イルミナが示した方向にカツとミノはスコップを突き立てるが、ここで思わぬ感触が広がり、壁の中から大きな岩が出現した。岩は非常に硬く、持参したスコップではどうしようも出来ず、カツは困った風に岩を叩く。
「こいつは……壊すのは難しそうだな。おい、イルミナ。お前の魔法で崩せないのか?」
「こんな場所で私が魔法を使えば二次被害を起こしますよ?風の魔法を使えば吹き飛ばされるかもしれませんし、かといって火属性の魔法ならば蒸し焼きになる可能性も……」
「よし、進路変更だ!!」
「……いや、待ってくれ」
カツはイルミナの話を聞いて岩を避けて別の場所から掘り進めようとしたが、ここでダンゾウが拳を鳴らしながら岩の前に移動すると、彼は中腰になって拳を構える。精神を集中させるように彼は目を閉じると、次に目を見開いた瞬間、拳を振りかざす。
「金剛撃!!」
「うわっ!?」
「うおおっ!?」
「きゃあっ!?」
強烈な衝撃が通路内に響き、ダンゾウが振り抜いた拳が巨岩に衝突すると、音を立てて崩れていく。その光景にレナ達は驚くが、ダンゾウは大したこともないように手を叩く。
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