第804話 作戦会議

レナ達が島を訪れてから4日目の夜を迎え、南里には島中のほぼ全てのエルフが集まっていた。集落を襲撃された西里、東里のエルフも集まり、南里には離反したモルドたちを除くエルフが集まる。


捕縛した獣人兵は使用されていない倉庫に閉じ込め、彼等から聞き出した情報を頼りに敵の勢力を知る事は出来た。これから先はどうするのかを話し合い、まず一つだけ言える事は現状の戦力ではレナ達が下回るという事実だった。



「敵の数は400名弱、対するこちらの数は300名……しかも大半は戦えない女子供や負傷者ばかりか」

「少なくとも里を戦う事が出来る戦士の数は半数の150名程度、その内の50名は南里の警備のために残さないといけません」

「レナ達や魔人の俺達を入れたとしてもせいぜい動かせる勢力は150か160……相手の半分以下の人数だな、しかも敵には火竜の幼体まで付いている」

「しかし、戦える人間の質はこちらの方が上回るのは間違いありません。厄介なのはイレイナという少女と、火竜を操るカイヌという巨人、そしてガロウという男です」



人数的にはレナ達は不利なように見えるが、実際の所は獣人兵の強さはそこまでではない。少なくともこの島のエルフの戦士達ならば万全な状態で戦えば十分に勝てる相手である。二倍近くの数の差があるとはいえ、彼等と魔人ならば力を合わせれば兵数差などひっくり返せる。



「一番厄介なのはイレイナとかいうガキだな、そいつはレナと同じく飛行船を操縦できるんだろ?しかもレナも怪我をしていて完璧な状態じゃねえ、かといってレナ以外にそのイレイナに対抗できる奴もいそうにないな」

「確かにその通りですね、レナの怪我が治るまで待つとしても二日はかかります。その間、敵が動かなければいいのですが……」

「この南里は地形的に守備には優れています。それぐらいの時間ならば持ちこたえられると思います」

「いや、それは不可能だろう。何しろ敵は空を浮かぶ船を持っているからのう……空から近づかれれば里の居場所も特定され、奇襲を仕掛けられる」



仮に地上から敵が侵攻してくる場合ならば南里は密林という地形上、罠にも嵌めやすく、森の中ならばエルフの戦士達が圧倒的に有利である。しかし、敵には飛行船が存在し、空から移動する場合はすぐに南里の集落は見つかってしまう。



「やはり、最大の問題は飛行船ですか……あの飛行船をどうにかしない限り、我々には勝ち目が薄そうですね」

「おい、イルミナ!!お前の魔法であの飛行船をどかんと爆発できないのかよ!?」

「無茶を言わないでください、仮に砲撃魔法や広域魔法を発動したとしてもあれほどの大きさの船を破壊するには相当な時間と魔力を必要とします。第一に私が魔法を発動するまでの間、貴方は守る事が出来るのですか!?」

「敵には400の兵士とイレイナと火竜の幼体もいる……それらからイルミナを守り続けるのは難しいな」



飛行船さえ飛べないように封じる事が出来ればレナ達にも勝機はあるが、その方法が非常に難しい。だが、ここでレナはカツの飛行船を「どかん」とするという言葉を聞いて何かを思い出す。


レナは何か重大な事を忘れているのではないかと考え、何を忘れているのかを思い出すために腕を組む。飛行船が存在する位置、その地下に封じた物、それらを思い出したレナはある作戦を思いつく。



「そうだ!!地竜の核……地竜の核を暴発させて飛行船を爆破させるのはどうですか!?」

「地竜の核だと!?」

「まさか……草原の地中に埋め込んだ核を使うつもりですか!?」

「地竜の核……?」

「おいおい、何をする気だ?」



地竜の核の事を思い出したレナは声を上げると、カツたちは驚愕の表情を浮かべ、一方でエルフと魔人たちは首を傾げる。ここでレナは簡単に魔石を破壊した場合はどうなるのかを説明する。



「魔石を破壊すると内部に蓄積した魔力が暴発するのは知ってますか?それを利用して地竜の核を破壊すれば、きっと凄い規模の衝撃波が発生すると思います」

「じ、地竜の核を……そんな事をして大丈夫なのですか!?」

「大丈夫、とは言えないでしょうね……ですが、地竜の核を破壊すればあの巨大船も壊せる可能性は十分にあります」

「そもそもあの船には空を飛ぶために複数の地属性の魔石が埋め込まれているはずです。もしもそれらを誘爆する事が出来たら飛行船を破壊する事は出来ると思います!!」

「ですが、元々は竜種の核です。恐らく、その破壊力や規模はすさまじいでしょう。下手をしたら周辺一帯が吹き飛ばされるかもしれません」

「流石にそれはまずいんじゃないのか?あいつら全員、死んじまうかもな……」

「構うものか!!侵略者など、死んで当然ではないか!!」

「待て!!飛行船の傍には転移台も存在する、もしも転移台も壊れてしまったら勇者様方が戻れなくなるのでは……」

「うおっ!?そういえばその可能性もあったな……」



レナが提案した地竜の核の爆破作戦を決行した場合、飛行船の近くに存在する転移台も影響を受ける可能性を考慮していなかった。仮に転移台が壊れた場合、レナ達は帰還手段を失う可能性も十分に有り得た。




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