第797話 東里の占拠

「勇者様、カツ殿!!ご無事でしたか!!」

「おお、お前等も来たのか!!」

「どうですか?東里の人たちは見つかりましたか?」



魔除けの石を回収中、南里の戦士達も駆けつけ、彼等はレナ達が騒動を起こしている間にこっそりと別の場所から集落へと侵入に成功していた。彼等の数は20名存在し、その中には東里のアランとグランの姿もある。



「東里の者達は既に発見しました!!兵士達も一人残らず捕縛しています!!」

「おお、やるじゃねえか!!という事はもう敵はいないんだな?」

「はい、恐らくはもう全員の捕縛に成功したと思われます。しかし……思っていた以上に東里のエルフ達の負傷が激しく、彼等を運び出すのは少々難しいと思います」

「そんなにひどい怪我なんですか?」

「ええ、怪我も酷いのですが……殆どが女と子供なのです」



レナ達はエルフの戦士の案内の元、捕まっていた東里のエルフ達の元へ向かう。彼等はもう既に拘束から解放され、地上へと出ていたが全員が酷く汚れていた。



「ううっ……」

「くぅっ……い、痛い、助けてくれ……」

「水、水をくれ……」

「お父さん、お母さん……何処にいるの……」

「こ、これは……」

「……酷いな」



捕まったエルフの殆どは足を負傷しており、中には片足が存在しないエルフもいた。どうやら逃げられないように敢えて足に傷を負わされたらしく、まだ小さな子供に対しても暴行が加えられた形跡があった。


散々に痛めつけられた東里のエルフ達を見て戦士達は嘆き悲しみ、親を探す小さな子供に対してブナンは涙を流しながら抱きしめる。アランとグランも怒りを抑えきれず、捕まえた獣人兵に怒鳴りつける。



「貴様等には血も涙もないのか!!どうして何もしていない彼等をこんな目に!!」

「我々がお前達に何をしたというのだ!?私達はこの島で暮らしていただけだ、お前達の国には何も迷惑を掛けていない!!それをこんな……!!」

「ま、待ってくれ!!こいつらを痛めつけたのは俺達じゃ……うぎゃっ!?」

「嘘を吐くんじゃねえよ!!てめえら、こいつらを奴隷として売り飛ばそうとしてたんだろうが!!」



往生際が悪く言い訳を行おうとした獣人兵をカツは蹴飛ばし、彼等がエルフ達を本国へ連れ帰って奴隷として売ろうとしていた事はレナもしっかりと聞いていた。


帝国では奴隷制度は既に廃止されているが、獣人国では未だに奴隷が存在し、エルフは外見が美しく魔法も使えるという事もあって非常に人気が高い。だからこそ獣人兵は島で捕まえたエルフ達を無暗に殺さず、奴隷として売り捌くために監禁していた事は明白だった。



「己、全員殺してやる!!」

「止めろっ!!気持ちは分かるが、こいつらは捕虜として連れていく……お前等には色々と聞きたいことがあるんだ、身体中の爪を剥ぎ取ってでも色々と教えて貰おうか!?」

「ひいいっ!?」

「ゆ、許してくれ!!頼む、頼むっ……!!」

「うるせえっ!!魔物の餌にされたくなければさっさと立ち上がれっ!!」

「おいおい、何の騒ぎだ?」



カツは獣人兵を怒鳴りつけていると、ミノたちが集落の中に乗り込む。魔除けの石を回収した事で彼等もやっと集落に入ってこれたらしく、ミノ達の姿を見た獣人兵は顔色を青くさせる。



「ま、魔物!?どうして魔物がここに……」

「まさか本当に俺達を魔物の餌に……!?」

「や、止めてくれ!!なんでも話すから、許してくれぇっ!!」



獣人兵の混乱の極みに陥り、魔人たちの姿を見て失禁する者も現れ始めた。これでは埒が明かないと判断したレナは頭を掻きながらも彼等に尋ねた。



「なら、俺達の質問に嘘偽りなく答えてください。貴方達には色々と聞きたいことがありますからね」

「は、はひっ!!」



兵士達はレナの言葉に全員が激しく首を縦に振り、その様子をミノは不思議な表情で首を傾げ、カツは肩をすくめた――






――東里の生き残りのエルフの救出に成功し、更には50人近くの獣人兵の捕虜を捕まえる事に成功したレナ達は彼等から色々と情報を聞き出す。レナとしては彼等がどうして島に訪れたのか、そして飛行船を操っていた少女の正体を知りたかったが、更に思わぬ事実を知ってしまう。





※今日はここで切ります。明日から第二部の物語の重要な話になると思うので今日はここまでにしておきます。




~その頃のダリルたち~


ダリル「レナ、遅いな……本当に帰ってくるんだろうな」(;´・ω・)ソワソワ

ゴイル「全く、お前は本当に親バカだな……」(´Д`)ヤレヤレ

ムクチ「あいつを信じろ、必ず帰ってくるだろう」(´ω`)



戻ってこないレナを心配しながらも3人で酒を飲んでいます。

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