第796話 正義の味方
「ん?な、何だ……この臭い?」
「なんか、獣臭くないか……まさか、魔物か!?」
「そんな馬鹿な、魔除けの石があるんだぞ。魔物が近づいてこれるわけがないだろうが……」
強い獣臭を感じた兵士達は慌てて周囲を見渡し、警戒態勢へ入った。獣人族である彼等は人間よりも嗅覚に優れているため、異変を察した彼等は武器を構える。しかし、そんな彼等の頭上から話しかける声があった。
「頭上注意」
「えっ……あがぁっ!?」
「あいだぁっ!?」
飢えから声が聞こえてきたかと思うと、大量の小石が兵士達の身体へと襲い掛かり、たまらずに兵士達は頭を抱えて身体を伏せる。いったい何が起きたのか理解できず、見張りの兵士達は悲鳴を上げる。
「いだだだだっ!?」
「た、助けてくれぇっ!?」
「どうした!?」
「何事だ!!」
「んだよ、人が休んでいる時に騒ぎやがって……」
見張りの兵士の声を聴きつけた他の兵士達も集まり始め、彼等は地面に伏せている見張り兵の姿を見て驚く。すぐに彼等は何が起きたのかと駆けつけようとした時、ここで上空を浮かぶ人影に気付いた。
「お、おい!!なんだあれ!?」
「空に人が……浮いている!?」
「ば、馬鹿なっ!?」
「へへっ、てめえら覚悟は出来てるだろうな!!」
上空にはスケボに乗り込んだレナと、そのスケボに捕まるカツの姿が存在し、兵士達は空を浮かぶ彼等を見て驚愕する。そんな獣人兵に対してカツは笑みを浮かべ、戦斧を振りかざしながら地上へと降り立つ。
レナもカツと同じように地上へと移動すると、闘拳を身に付けて左手には勇者の盾を装備した。兵士達は突如として現れた二人組に戸惑うが、そんな彼等に対してカツは堂々と大声を張り上げる。
「正義の味方の到着だ!!お前等、覚悟は出来てるだろうな!?」
「て、敵襲!!敵襲だっ!!」
「なんだ、あいつの肌は……まさか、鬼人族か!?」
「ば、馬鹿なっ!!もう全滅したはずじゃなかったのか!?」
「来るぞっ!!矢を放てっ!!」
兵士達は接近してきたレナとカツに対して弓を構え、一斉に放つ。その攻撃に対してカツは戦斧を振り回して全ての弓を弾き、一方でレナは盾を前に出して矢を弾き返す。
「おらぁっ!!」
「はっ!!」
「ば、馬鹿なっ!?この距離で矢を弾くなんて……ぐあっ!?」
「う、撃つな!!跳ね返されるぞ!?」
カツは自分に迫りくる矢を難なく弾き落し、レナの場合は放たれた矢を勇者の盾で反射して逆に兵士達が矢の餌食となる。下手に矢を撃てば自分達の身が危ないと判断した獣人兵は武器を構えて向かうが、そんな彼等にカツは一人で蹴散らす勢いだった。
「はっ、獣人国の兵士なんてこんなもんか!?」
「ぐああっ!?」
「うぎゃっ!?」
「ひいっ……うわぁあああっ!?」
黄金冒険者であるカツは圧倒的な強さで兵士達をなぎ倒し、あっという間に半数近くの兵士を一人で倒す。一方でレナの方は事前に用意していた小袋を取り出し、中身の小石を握りしめる。
かつてのレナは銀玉を利用して攻撃していた事を思い出し、多人数相手には有効的な攻撃を繰り出す。掌に掴んだ小石全てに魔力を注ぎ込み、兵士達に向けて投擲を行う。ただの小石でも重力を加えれば威力は馬鹿に出来ず、散弾銃の如く兵士達に襲い掛かった。
「はあっ!!」
『ぎゃああああっ!?』
「あいたぁっ!?こら、レナ!!俺も今は生身なんだぞ、当たったら痛いだろうが!?」
「あ、すいません……」
小石の何発からカツに当たるという事態に陥ったが、大多数の兵士を一気に一掃する事に成功し、既に8~9割近くの兵士を倒す事に成功した。残された兵士はどうやら東里のエルフ達の見張りを行っているらしく、すぐにレナ達は集落の中に乗り込む。
「ん?おい、あれを見ろレナ!!どうやらあれが魔除けの石らしいな……」
「あれが魔除けの石……ちょっと結界石と似てますね」
移動の途中、レナ達は魔除けの石と思われる石柱に掲げられた緑色の魔石を発見した。外見は集落を守護する結界石と似ていたが、こちらの方は歪な形をしており、まさに鉱石のような外見をしていた。
この魔除けの石のせいで魔物は近づこうとすると嫌悪感を抱いて接近する事が出来ず、そのせいで魔人たちも集落に乗り込めない状況だった。すぐにレナは魔除けの石を回収に動き、事前に背負っていた壺を取り出す。
「一応、この魔除けの石も回収しておきましょうか」
「おいおい、そんな壺に入れるだけでいいのか?」
「はい、壺の中に入れてしっかりと蓋をすれば大丈夫だそうです」
原理は不明だが、水の入った壺の中に魔除けの石を沈めてしっかりと蓋をすれば魔力の波動は外に漏れる事はないらしく、ここでレナは魔除けの石の回収を行う。これで魔人たちも集落に乗り込めるはずであり、レナ達は急いで東里に捕まっているエルフ達の捜索を行う。
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