閑話 〈その頃のミナ達〉

――レナ達が南里の族長と交渉を行っている頃、ヒトノ国の王都の方では一向に戻ってくる様子がないレナ達の事を心配し、金色の隼のクランハウスでは冒険者達が集まっていた。彼等はレナ達の事を救援に向かうべきか話し合いを行う。



「やっぱりさ、あたし達も行こうぜ!!もしも兄ちゃんたちに何かあったらどうるすんだよ!?」

「あのな、簡単に言うんじゃねえよ。あの転移魔法陣はな、国が管理しているんだ。俺達が勝手に使っていい代物じゃねえんだよ」

「でも、レナ君達がこのまま戻ってこなかったら……!!」

「そうですわ!!レナさんや団長や副団長にもしもの事があったらどうしますの!?それにカツさんとダンゾウさんも……」

「俺に怒鳴っても答えは変わらねえよ!!国からの指示は待機命令だけだ!!俺達の一存で勝手にあの転移魔法陣は使えないんだ!!」



団長と副団長の不在の間、クランハウスの運営はロウガに任されていた。彼が冒険者の中でも古株であり、人望もあるという事から現在は団長代理を任されている。その彼の元にミナ達は押し寄せ、未だに戻ってこないレナ達を心配して自分達も出向くと告げる。



「ちくしょう、どうして黄金級冒険者の奴等だけで行くんだよ!!団長よりもあたしたちの方が兄ちゃんと上手くやれるぞ!!」

「もう既に皆さんが姿を消してから三日目……確か、三日経過しても帰ってこなければ救援部隊を派遣するように団長が言ってましたよね」

「ああ、だが救援部隊を組織するのはうちだけじゃない。冒険者ギルドの連中も人を集めて用意するんだ。だが、黄金級冒険者のあいつらが一人も帰ってこない事を考えると、相当にまずい事態に陥っていると考えるべきだろう」

「ま、まずいって……どんな事態だ?」

「……最悪の場合、既にあいつらは死んでいる可能性も考慮しなければならない」

「んなわけないだろ!!兄ちゃんが死ぬもんか!!」

「コネコ、落ち着いて……あくまでも万が一の話」



ロウガの言葉にコネコは憤慨するが、それをシノが抑えつける。彼女以外の者達はロウガの話を聞いて俯き、レナ達が生きている事を信じたいが、ここまで帰還が遅いとなると嫌な想像が浮かんでしまう。


この場に存在する者達はレナ達がどんな状況なのかも知らず、全員がレナ達はなんらかの大迷宮に挑んでいると考えた。そして大迷宮ならば転移石を使用すればいつでも帰還できるにも関わらず、レナ達が戻ってこない事に皆が心配するのは仕方がない話だった。



「だ、大丈夫だよね?きっと、大迷宮の探索に夢中になって戻ってこないだけだよね?もしかしたら前の僕達みたいに転移石が使えなくなって、転移台を探しているだけに決まってるよ」

「そうですわね……それならいいんですけど」

「…………」

「な、何だよ皆……まさか、本当に兄ちゃんたちに何かあったと思ってるのか?」



コネコだけはレナ達が死ぬはずがないと信じているが、他の者達は不安を覆い隠せない。しかし、この状況で塞ぎ込んでいても仕方がないと考えた者がいた。



「ロウガさん、ナオの奴はどうしている?」

「え?な、ナオ?あいつなら、そろそろ帰ってくると思うが……」

「何だよ、デブリの兄ちゃん……こんな時にナオの姉ちゃんの事が気になるのか?」

「当たり前だろう。あいつがいないとなると、レナ達を探すときに苦労しそうだからな」

「えっ?」



デブリの言葉に全員が彼に視線を向けると、デブリは真剣な表情を浮かべて自分の腹に手を伸ばし、真剣な表情で答えた。



「……準備してくる」

「準備って……何をする気だよ?」

「決まってるだろ?食い溜めだ、しばらくはこっちに戻ってこれない可能性もあるからな……だから僕は食べる!!」

「食べるって、デブリさん貴方まさか?」

「救援部隊には僕も入るぞ!!今のうちに召しをたっぷり食べて、力を蓄えるんだ!!」

「お、おい!?救援部隊の編制は冒険者ギルドが行うんだ!!だから、お前が入るとは限らない……行っちまった」



気合を込めるようにデブリは頬を叩くと、クランハウスの食堂へと向かう。そのデブリの行動に対してロウガは呆然と見送るが、残されたミナ達は笑みを浮かべて立ち上がる。



「……デブリ君の言う通りだよ、こんな所でじっとなんかしてられないや」

「なら、あたしもムクチのおっさんの所に戻って装備を見直してもらうか」

「私も出来る限りの準備を整えますわ」

「なら、私も……」

「お、おい、お前等!?さっきも言ったが、救援部隊の人員を決める権利は俺達には……」



部屋を抜け出そうとするミナたちに対してロウガは慌てふためくが、そんな彼に対してミナ達は親指を立てて頼み込む。



「「「救援部隊の件、よろしく(お願い、お願いします、お願いしますわ)!!」」」

「だから、俺に決める権利はないって言ってんだろうがっ!!あ、おい!!こら、勝手に出ていくな!!待てって、いや本当に……待ってくれぇええっ!!」



勝手に救援部隊に入る準備を行おうとするミナ達にロウガは追いかけるが、必ずレナ達を救うと決めた彼女達を止める事など出来るはずがなかった――





※コネコ達の出番がないので急遽閑話を挟みました(´・ω・)

 コネコ「早く出せバカヤロー」(#^ω^)

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