第762話 南里の戦士長
「見ての通りだ!!我等の抗争の元凶である牙竜は討伐を果たされた!!そして、ここにいる4人を見よ!!この者達は大陸から訪れた冒険者だ!!」
「冒険者!?」
「何だそれは?」
「大陸から訪れただと……ま、まさか!?あの伝承は本当だったのか!?」
アルフの言葉に密林から現れた南里のエルフの戦士達は戸惑い、彼等はレナ達と牙竜の頭部を見て慌てふためく。南里でも勇者の伝承は残っていたが、まさか本当に大陸からこの島へ訪れる人間が現れるなど思いもしなかったのだろう。
北里を除く3つの里が争う原因となった牙竜の頭部を持ち込んできたアルフに対してエルフの戦士達はどのように対処するべきか悩み、ここで戦士達の中でも一番年齢が上の男性が前に出てきた。
「西里の族長のアルフよ!!俺は南里の戦士長を任されているブナンだ!!その牙竜の首が本物かどうかを確かめたい!!」
「ブナンか、よかろう!!いくらでも確かめるが良い!!儂等は少し離れる、その間に調べるがいい!!」
「……気遣い、感謝する!!では、調べさせてもらうぞ!!」
牙竜の首を確かめるために近付いたら攻撃されるのではないかと警戒していた戦士達だが、アルフがレナ達を連れて離れると、彼等は安心したように牙竜の頭部を確認する。その結果、死骸が本物である事が判明し、何度も自分達の里を窮地に追いやった牙竜の変わり果てた姿に戦士達は唖然とした。
「これは……確かに本物のようだな」
「この顔、見間違えるはずがない」
「しかし、いったい誰がこの怪物を……ま、まさか!?」
「大陸からの来訪者よ、これを倒したのはお主等か!?」
「その通りだ!!正確に言えば僕達と北里の生き残りの戦士達が共に戦い、この牙竜を討伐する事に成功した!!そしてこのペンダントが僕達と北里の戦士が協力した証拠だ!!」
ブナンの言葉にリルは堂々と北里の長老から差し出されたペンダントを取り出して見せつけると、南里の戦士達は驚愕の表情を浮かべた。彼女の所有するペンダントは北里の戦士しか身に付ける事は許されない代物である。
当の昔に滅ぼされたと思っていた北里にエルフの生き残りがいた事、しかも大陸から来訪してきた人間達と協力して牙竜を倒したという事実にブナン達は動揺を隠せない。そんな彼等に西里の族長はレナの背中を押して彼等に見せつけた。
「南里の戦士長よ、この彼を見よ!!彼が所有している盾は我が里で管理していた勇者の盾だ!!」
「な、何だと!?」
「勇者の盾だと!?」
「我々はこの御方を勇者の子孫だと認め、盾を渡した!!この御方は勇者様しか扱えぬはずの装備品を扱える!!つまり、この御方こそが伝承の次世代の勇者様だと我々は認めた!!」
「え、あの……」
「いいから言わせてあげるんだ」
アルフの言葉にレナは呆気に取られるが、ルイが黙って彼に話をさせるように促す。アルフの言葉にブナンはレナが装着している勇者の盾に視線を向け、彼は本当に西里のエルフ達がレナの事を勇者と認めているのか疑問を抱く。
「西里の族長よ!!そのみすぼらしい盾が本当に勇者の盾であると証明できるのか!?」
「嘘だと思うのならば見せてやろう!!この盾の力を知ればお主等も信じるだろう!?」
「なるほど、そういう事か……よし、カツ。もう一度吹っ飛ばされてくれ」
『簡単に言うんじゃねえよ!?あれ、凄い痛いんだぞ!?』
「ですが、力を見せるとなると誰かが盾に攻撃しなければ……」
勇者の盾である事を証明するには誰かがレナが装備した状態の盾に攻撃をする必要があり、まさかそんな役目を老人のアルフや女性のルイやイルミナに任せられるはずがない。
この場ではカツが最もな適任者なのだが、彼は最初に勇者の盾の力を思い知らされているので攻撃をする事に反対を示す。その様子を見ていたブナンは背中に抱えていた大弓を構えると、自分が名乗りを上げる。
「そこまで自身があるというのであれば俺自身がその盾の効能を確かめてやろう!!問題はないな!?」
「といっているが……どうするレナ君?」
「弓矢か……それなら大丈夫だと思います」
ブナンが装備している大弓を見てレナはこれなら攻撃を仕掛けられても問題はないとレナは了承したが、そのレナの態度を見てブナンは侮辱されたような気分に陥り、彼は密林に視線を向けて一本の樹木を指差す。
「言っておくが、俺の弓の一撃を侮るなよ!!よく見ておけ、我が矢は大樹をも一撃で粉砕する威力を持つ!!」
「うわっ!?」
大弓に矢を番えたブランは大樹へ向けて発射すると、事前の宣言通りに矢はすさまじい速度で放たれ、樹木に衝突した瞬間に派手な倒壊音が鳴り響く。本当に1発の矢で樹木を破壊したブナンは誇らしげな表情を浮かべる。
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