第760話 重力反射

『よし、行くぞぉっ!!うおりゃあっ!!』

「くぅっ!?」



戦斧を振りかざしたカツに対してレナは左腕に装着した盾を構えると、戦斧の刃が盾に触れる寸前、盾の前面に纏う魔力が強まり、衝突の寸前に戦斧が停止する。そして次の瞬間に凄まじい勢いで戦斧が弾き飛ばされ、それを手にしていたカツも同様に吹き飛ぶ。



『うおおおおっ!?』

「「カツ!?」」

「えっ……あれっ!?」



派手に吹き飛んだカツを見てルイとイルミナは驚愕の声を上げ、一方でレナの方も何が起きたのかと戸惑う。盾に触れる寸前に戦斧が停止したせいでレナ本人には攻撃の衝撃は伝わらず、いつの間にかカツの方が吹き飛ばされていた。


その光景を見ていたエルフ達も唖然とした表情を浮かべ、一方で10メートル近くも吹き飛ばされたカツは地面に倒れると、彼の悲鳴が響く。



『いたたたたっ!?な、何だっ!?何が起きたんだ?』

「カツ、大丈夫か?」

「いったい何が起きたのですか?」

『そんなもん、こっちが知りてえよ!!なんで俺の方がぶっ飛んだんだ?』

「……もしかして、重力?」



レナは自分の装備した盾に視線を向け、カツが戦斧が当たる寸前、レナが扱う「反発」や「衝撃解放インパクト」のように重力を発生させてカツの攻撃を吹き飛ばしたように思えた。


どうやら勇者の盾は外部からの攻撃に反応して自動的に重力を発生させて攻撃を反射する力を持つらしい。分かりやすく言えば自動的にレナの身を守るために「反発」や「衝撃解放インパクト」のような「重力波」を生み出す様子だった。



「そんなに魔力を込めていないのにカツさんをあんなに吹き飛ばすなんて……これ、もしかしたら重力の出力が凄く高くなってると思います」

「なるほど……確かにこれは凄い盾だな」

「カツの体重は甲冑を合わせれば100キロは越えます。それをあんな風に軽々と吹き飛ばすなんて……ボアの突進でも弾き返せそうですね」

『くそうっ、良い盾だな……俺も使いたかったぜ』



普通に反発や衝撃解放を使用するよりも魔力の燃費は低く、それでいながら威力も上昇する勇者の盾にレナは感動する。正確に言えば出力が上昇したというよりも、盾の範囲分に重力が収束された事で威力が上昇したと考えるべきだろう。



「し、信じられん……まさか、本当のその盾を扱いこなす者が現れるとは」

「ゆ、勇者だ!!我々の前に勇者が現れたのだ!!」

「彼が伝承に伝わる次世代の勇者なのか!!」



一部始終を目撃していたエルフ達は勇者の盾を扱いこなすレナを見て彼こそが勇者だと考える者も現れ、族長さえもレナが本当に言い伝えの勇者ではないのかと思う。元々島内に暮らしていたエルフ達は次世代の勇者の力になる事を条件に遥か昔に召喚された勇者が大陸から連れてきたエルフである。


遂に伝承の伝説の勇者が現れたのかとエルフ達はレナの前で跪き、そんな彼等の態度にレナ達は戸惑う。そんな中、族長はレナの元へ赴くと彼は頭を下げた。



「次世代の勇者殿……どうか我々をお救い下さい」

「いや、あの……勇者ではないです」

「やれやれ、英雄の次は勇者と来たか……この調子だとレナ君はその内に世界の救世主と呼ばれそうだ」

「……否定できませんね」

『くっそうっ!!勇者の盾か、俺も装備したかったぜ!!』



レナは自分の前に跪く族長に困り果てるが、ここでカツの発言を聞いてある事を思い出す。西里のエルフ達は勇者の装備品を代々保管していたという話だが、ならば他の装備品は他の里のエルフが管理しているのかを問う。



「あの、聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「何なりとお申し付けくださいませ、勇者様」

「じゃあ、その勇者様は止めてほしいんですけど……その前に勇者が身に付けていた装備品は他にもあるんですか?」

「それは……」



族長はレナの問いかけに困った表情を浮かべ、非常に申し訳なさそうな顔を浮かべながら答えた。



「申し訳ありませぬ、勇者様……我々が管理しているのはその盾のみ、残りの兜、鎧、剣は他の3つの里が管理しているのです」

『何!?つまり、まだ勇者の装備品があるのか!?』

「他の里が管理しているという事は……という事は北里にも勇者の装備品があったのか」

「長老はなにも言われていませんでしたが……まあ、話す機会がなかったのかもしれません」



他にも勇者の装備品が島内にあるという話にカツは興奮し、自分でも装備できる勇者の装備品があるかもしれないと希望を抱く。一方で北里の長老と知り合ったルイ達の方は北里に勇者の装備品があるという話は聞いておらず、今現在も北里に装備品が保管されている可能性がある事を知る。


長老から勇者の装備品の1つを北里が管理しているという話はレナ達も聞いていないが、そもそも勇者の装備品の存在は非常に大切な代物らしく、無暗に外部の人間に話せる内容ではないのかもしれない。それを考えれば長老が黙っていた事も仕方がないが、ここで族長が口を挟む。





※今回の投稿の5秒前


ドリス「螺旋氷弾ドリルガン!!あ、やりすぎましたわ」(´・ω・)ノ公開ボタン

カタナヅキ「ああ、ボタンが粉々に……」(´;ω;`)



※というわけで公開ボタンが壊れたので明日から二話投稿に戻ります。

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