第758話 勇者の盾

――アルフによると西里を築き上げた先祖はかつては地上に集落を作り出し、生活を送っていたという。元々は西里のエルフが暮らしていた集落は北里と同様に「結界石」と呼ばれる魔石が嵌め込まれた石像によって守られていたという。


だが、ある時に結界石の石像が壊れてしまい、彼等は荒野の岩山の内部に暮らすようになったという。石像が壊れた理由は不明だが、あるエルフの証言によると石像を壊した犯人は罪を犯して里から追放されたエルフの仕業らしい。しかし、実際の所は本当に罪人が石像を破壊したのかは分からない。


地上の集落は瞬く間に荒野の魔物達によって滅ぼされてしまったが、集落に代々伝わる勇者たの盾だけは運び出され、族長の座に就く者が守り続けた。そしてレナ達は族長であるアルフから勇者の盾を見せてもらう。



「これがかつて先祖を救った勇者様が残した盾じゃ」

『こいつが勇者が使っていた盾なのか?なんか、思ったよりも小さくてみすぼらしいな……』

「カツ、失礼ですよ!!」

「ふむ……」

「これが勇者の盾なんですか……」



岩山の1階に存在する宝物庫にてアルフは宝箱に入った盾をレナ達に見せつける。盾の形状は「丸盾」で意外と小さく、直径は50センチ程度しか存在しない。盾の中央部には無職の水晶玉のような物が嵌め込まれていた。


勇者が扱っていた盾というから期待していたカツだったが、出てきた物が意外と小さくてデザインも地味である事に彼はため息を吐き出す。



『おいおい、こんなのが本当に勇者の使っていた盾なのか?なんか地味だな』

「ふむ……では試しに持ってみてはどうじゃ?」

「え!?よろしいのですか?」

「構わぬよ。持てる物なら持ってみるがいい」

「持てる物なら……?」

『よし、そこまでいうなら持ってやるぜ』



アルフの言葉にルイは引っかかりを覚えたが、カツは勇者の盾がどれほどの者かと試そうと手を伸ばす。盾は何事もなく持ち上がり、カツは拍子抜けした声を上げる。



『何だよ、別にそれほど重くもないな。ただの普通の盾じゃねえ、のか……?』

「カツ?どうしたんだ急に?」

『いや、何か力がどんどんと抜けて……うぐっ!?』

「カツ!?」



盾を持ち上げていたカツは突如として身体がふらつき始め、その場に膝を崩す。その様子を見てレナ達は何があったのかとカツの手から離れた盾に視線を向けると、いつの間にか盾に埋め込まれている水晶玉が輝いている事に気付く。


盾の中央部に埋め込まれた水晶玉の内部に炎が発生している事が判明し、それを見たアルフは盾をゆっくりと拾い上げると、水晶玉の光が色を失う。それを見たルイは何が起きたのかを尋ねる。



「いったい、何が起きたんですか?」

「簡単な事よ、この盾は使い手を選ぶ……その者のように盾を防具として身に付けようとした瞬間、この盾は所有者の魔力を吸い上げる力を持つのじゃ」

『ま、魔力を吸い上げるだと……?』

「理屈は不明じゃが、この盾を装備して防具や道具として利用しようとすると所有者から強制的に魔力を吸収し、その人間が最も得意とする属性の魔力を盾が宿す事が出来る。例えば、火属性の使い手ならば盾は炎を纏い、風属性の使い手の場合は竜巻が発生する。このようにな」



アルフは盾を両手で構えると、今度は水晶玉の内部に渦巻が発生すると、盾の前面に風の魔力が宿り、竜巻を想像させる風の渦巻が発生した。その風の強さに危うくレナ達は吹き飛ばされそうになるが、アルフが盾を手放すと魔力は消え去った。



「こ、これが勇者の盾……まさか、所有者の魔力を自動的に吸い上げるとは」

「この盾を使いこなせば魔法を使えない称号の持ち主でも魔法の力を扱える事が出来る。最も長い歴史の中、この盾を完全に扱える人物は勇者様以外におられなかったがな」

「なるほど、流石は勇者の盾だ。それにしてもカツでさえもこの有様だと、並の戦士にはこの盾は扱えないだろうな」

『畜生……』



カツは体力には自信はあるが、ほんの数秒だけ盾を装備しただけで膝を崩してしまう程に疲労してしまった。その事を考えても並の人間では盾を持ち上げただけで昏倒しかねない。


しかし、その一方で魔力容量が大きい人物がこの盾を使用したらどうなるのかと思ったルイはレナに視線を向ける。この中ではレナが最も魔力容量が多いため、試しにレナに盾を装備するように促す。



「レナ君、今度は君が持ってみるかい?」

「え?でも……」

「大丈夫じゃ、この盾は所有者があくまでも「使用する」という意思を持たなければ普通の人間が持っても魔力を奪われる事はないからのう」

「じゃあ、少しだけ……」



アルフの言葉を聞いてレナは安心すると、もしも魔力を吸われた時はすぐに手放せるように宝場の前で盾を持ち上げる。両手で盾を手にしたレナは水晶玉の部分に視線を向け、最初に王都に訪れた時に自分が検査を受けた水晶玉の事を思い出す。




※今回の投稿の10秒前


コネコ「おい!!最近あたしたちの出番がないぞ!!」(# ゚Д゚)

カタナヅキ「え、いや……そういわれましても」(;´・ω・)

コネコ「こうなったもう更新してやる!!」( `ω´)ノ公開ボタン

カタナヅキ「や、止めろぉおおっ!!」(; ゚Д゚)

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