第757話 ダンゾウの解放条件
「族長、貴方の判断には私も賛成です。しかし、他の戦士たちが納得するかどうか……」
「それはお主に任せる。儂は族長として一族の未来を守らねばならん……そこでお主たちに頼みがある、どうか儂の護衛役を頼めないか?」
「護衛役、ですか?」
「うむ、儂は今日これから他の里に出向き、話し合いを行いたいと思っておる」
族長のアルフは各里のエルフの争いの元凶であった牙竜の死んだ今こそが好機だと判断し、自らが他の里に赴いて和解の交渉を行いたいという。そして護衛役はエルフの戦士達ではなく、レナ達に頼みたいと告げた。
「族長!?どうして護衛を余所者に頼むのですか!!護衛ならば我々が……」
「ならん、お前達を連れていけば避けないな争いごとを生み出しかねん。アランよ、お主は母親や祖母の仇を目の前にして冷静に対処できるのか?」
「くっ……!!」
「なるほど、それで部外者の僕達に護衛を頼みたいという事ですか」
ルイはアルフの言葉に納得し、確かに他の里ノエルフと因縁がある西里のエルフの戦士を護衛として連れていけば和解交渉が上手くいく可能性は低い。交渉の途中で互いのエルフ同士が抗争を引き起こす可能性もある。
その点では部外者ではあるが実力も確かでしかも牙竜を討伐したレナ達を連れていくという族長の案は悪くはない。レナ達は特にこの島のエルフと因縁があるわけでもなく、牙竜を倒した当事者として話し合いにも参加できるだろう。しかし、この案はレナ達に特に利益はない。
「護衛役を頼みたいと言われても、交渉が決裂した場合は私達も危険に晒されるのでは?」
「その可能性は否定できん。しかし、他の里のエルフ達も内心ではこれ以上の争いは無益であると理解しているはずじゃ。それにルイ殿に話を聞いたが、冒険者という職業は相応の報酬を用意すればどんな仕事も引き受けるのであろう?」
「団長……」
「別に嘘は言ってないだろう?」
最初にアルフとルイが交渉した時に彼女は自分が「冒険者」でどのような存在なのかを説明した時、アルフはその話を聞いてルイ達に護衛役を依頼する事を決意した。当然だが最悪の場合は命も落としかねない危険な仕事であるため、それを考慮してアルフもルイ達が満足する報酬を用意していた。
「報酬に関してだが、まずはここにいるダンゾウ殿の解放、それとは別に我が里で管理している秘宝を提供しよう」
「秘宝?」
「なっ!?族長、あの宝はこの島に訪れた勇者の……!!」
「構わん、話に聞く限りではもう勇者の時代は終わりを告げておる。それにあんな物を持っていても儂等では扱い切れんからな」
『秘宝か……それはどんな宝なんだ?』
アルフの言葉にグランは慌てふためくが、勇者に関連するお宝だと知ってカツは興味を示す。そんな彼に対してアルフは秘宝の正体を話す。
「遥か昔、我々の先祖をこの島に連れてきた勇者は後の時代に訪れるであろう次世代の勇者のため、彼が身に付けていた装備品を我々に託した。その装備の一つをこの里で管理しているのだが……もしも引き受けてくれるというのであればその装備品をお譲りしよう」
「勇者の装備……それは本当ですか!?」
『まさか、伝説の聖剣か!?いや、装備品という事は一つじゃないんだな?という事は盾とか鎧もあるのか!?』
「伝説の勇者の装備品……確かに冒険者としてはこれ以上にない魅力のある品物だ」
「えっと……それは凄そうですね」
勇者の装備品が手に入るかもしれないという話に生粋の冒険者であるルイ達は反応し、一方でレナも興味はあるがそこまで騒ぐ事なのかと悩む。檻の中のダンゾウも腕を組み、具体的にはどのような装備品を受け取れるのかを問う。
「この里で管理している装備品とは何なのだ?」
「儂等が管理しているのは勇者が使用していたという「盾」だけじゃ。この盾は見かけは小さくて地味な色合いではあるが、どんな素材で構成されているのかどれほどの衝撃を与えようと壊れる事もなく、それどころか掠り傷一つさえつかん。しかもどれだけの熱を与えようと変形する事もなく、それどころか熱を帯びる事もない」
『何だ盾か……いや、勇者の盾ならもしかしたら凄い効果があるのかもしれねえな。団長、この依頼引き受けようぜ!!』
「確かに本物の勇者の装備品を手に入れられるのならばやってみる価値はあるかもしれません」
「よし、話は決まった。族長、その依頼は僕達の
「うむ、承知した。ではこちらに付いて来てくれ」
『悪いな、ダンゾウ!!すぐにお前を解放してやるから待っててくれ!!』
「ああ……分かった」
ルイ達は一刻も早く勇者の装備品を見たいがために地下牢を後にすると、アルフの案内の元で装備品が保管されているという宝物庫へと向かう――
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