第749話 エルフ達の正体
「ふむ、こうか?それともこうか?」
「ど、どうですか?何か分かりました?」
「……駄目だな、何の反応もない。これは僕には使えないのかもしれない。イルミナ、試しに君が付けてみてくれ」
「えっ!?わ、私がですか?」
ルイは指輪を装着しても特に反応はなく、彼女はイルミナに手渡して装着するように促す。もしかしたら風属性の適性を持つ彼女ならば扱えるかもしれないと判断し、試しにイルミナに装着させる。すると指輪に取り付けられている水晶玉が反応し、内部にて小さな風属性の魔力で構成された「渦巻」が発生した。
「こ、これは……」
『おおっ!?何だそりゃっ!?』
「反応している?」
「やはりか……恐らく、その指輪は風属性の適性を持つ者にしか扱えないんだ。イルミナ、試しにその指輪を付けた状態で矢を撃ってくれるか?」
「は、はあっ……」
言われるがままにイルミナは弓を拾い上げ、見よう見まねで矢を番える。彼女は魔術師なので基本的には杖以外の武器は扱わないが、矢を掴んだ瞬間、指輪越しに風属性の魔力が流れ込み、矢が放たれた途端に遥か上空まで撃ち上がる。
空の彼方にまで消えたのではないかという程にあっという間に見えなくなるまで飛んで行った矢を見てレナ達は唖然とした表情を浮かべ、イルミナ本人も信じられない表情を浮かべていた。
「これは……とんでもない代物だな、どうやらこの指輪を身に付けるだけで物体の風属性の魔力を送り込めるらしい」
『じゃあ、俺を吹き飛ばされたのもこの指輪のせいか?』
「そうとしか考えられないな。これは素晴らしいが、同時に恐ろしい魔道具だ。使い道によっては恐ろしい武器にもなる」
「いったいどうやってこんな物を……」
「あ、見てください。この二人、目を覚ましそうです!!」
「ううっ……」
「ぐうっ……」
レナが全員に声をかけると、ここで他の者達も目を覚ましそうな二人組のエルフに気付き、警戒態勢に入る。中年男性と青年のような外見をしたエルフ達は頭を抑えながらも上半身を起き上げると自分達を見下ろすレナ達に気付いて慌てふためく。
「お、お前らは……!?」
「人間!?くっ……」
『おっと、下手な真似をするなよ。この距離ならお前等二人の首を切り落とすのはわけないぜ?』
カツが立ち上がろうとした二人組に対して戦斧を見せつけると、その彼の言葉に青年は顔色を青くさせ、中年男性の方は屈辱の表情を浮かべた。
そんな二人の様子を見てルイはあからさまにため息を吐き出し、武器を取り上げた事を理解させるために弓と矢筒、それに二人が所有していた指輪を見せつける。
「気絶している間に君たちの装備は回収させてもらった。それではこちらからの質問なのだが、どうして私達を襲ってきた?別に僕達は君たちに何もしていないのに何故狙った?」
「ま、待て!!別に我々は命まで狙うつもりはなかった!!ただ、命令されただけで……」
「馬鹿者!!それ以上に喋るな!!」
「ほう、命令と来たか……詳しく聞かせて貰おうか」
青年の方はルイの言葉を聞いて慌てて弁解するが、それを見た中年男性の方は彼を黙らせようとした。その様子を見てどうやら彼等は何者かの命令を受けてレナ達に襲い掛かってきた事が判明した。
「答えろ、いったい誰の命令を受けて僕達を襲ったんだ?この島に僕達に恨みを持つ者がいるとは思えないんだが……」
「そ、それは……」
「イヤン!!それ以上に口を開けば俺がお前を……うぐっ!?」
『うるせえな、黙ってろおっさん』
中年男性が青年に口出しする前にカツが口元にを塞ぎ、その間にレナは長老から受け取ったペンダントの事を思い出すと、一応は彼等にペンダントを見せるように促す。
「ルイさん、長老から受け取ったペンダントを見せませんか?」
「そうだな……これを見てくれ、これは北の雪山に存在する集落の住民から受け取った代物だ。これの事は知っているのだろう?」
「なっ!?こ、このペンダントは……お前等、北里のエルフの関係者だったのか!?」
「ふがっ……!?」
長老から受け取ったペンダントを見せつけるとエルフ達の反応が変わり、やはりというべきかペンダントの存在を知っている様子だった。カツは中年男性の口を解放すると、改めてルイは自分達がこの島に訪れた経緯を話す。
「僕達は見ての通り、この島の外から訪れた人間だ。そして北里に暮らすエルフからこの島の成り立ちも聞かされている。君たちは北里以外に暮らす集落のエルフなんだろう?僕達はこのペンダントを持って行けば力を貸してくれると北里に暮らすエルフから聞いたんだが……」
「……北里にまだ生き残りがいたのか、盲点だったな……あの里に暮らすエルフは全員が死んだと報告を受けていたんだがな」
「……それはどういう意味ですか?貴方達は北里に何が起きているのか知っているんですか?」
男性の言葉にレナは聞き捨てならず、他の里のエルフが北里の惨状を知っていたのかを問う。その質問に対して男性は答えるつもりはないのか沈黙を貫き、青年の方は怯えた表情を浮かべる。
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