第740話 牙竜VS地竜
「アガァアアッ……!!」
「オアアッ……!!」
「まずい、ここから離れるんだ!!巻き込まれるぞ!!」
「うおおっ!?」
「皆、走って!!」
牙竜と地竜の戦闘が開始すると、巨体を生かして牙竜を押し潰そうとする地竜、それに対抗するように牙竜も首元から牙を離すと、背中側へと移動を行う。
「ガアアッ!!」
「オアッ!?」
背中に移動した牙竜は力任せに前脚を振りかざし、地竜の甲羅の破壊を試みる。だが、首元よりも背中の方が頑丈なのか牙竜の怪力と鋭い爪を以てしても甲羅には罅一つ与えられず、逆に地竜は背中を振るって牙竜を振り落とす。
地上へと落とされた牙竜は体勢を立て直すと正面から地竜と向かい合い、互いに牽制するように咆哮を放つ。その光景を目にしたレナ達は急いで距離を取り、安全圏まで避難を行う。
「へへへ、作戦通りに争い始めやがった!!これで後は地竜が牙竜をぶっ倒せば終わりだな!!」
「いや、そう上手くは行かなそうだよ」
「牙竜が……押してる?」
体格差は圧倒的に地竜の方が上回るが、速度と牙の鋭さだけは牙竜が勝るらしく、地竜の顔面に対して牙竜は前脚を振りかざして殴りつける。
「グガァッ!!」
「フガァッ……!?」
「アガァッ!!」
顔面を殴りつけられた地竜は怯み、その隙を逃さずに牙竜は先ほど噛みついた箇所に牙を食い込ませ、より深くに牙を体内へと侵入させる。すると牙竜の首元から血飛沫が舞い上がり、その様子を見ていたルイとイルミナは表情を険しくさせた。
「まずい、このままだと決着が早く着きそうだ……どうやら陸地では地竜よりも牙竜に軍配が上がるらしい」
「ええ、それに地竜は先ほどの戦闘で体内の水を消費しています。攻撃手段が肉弾戦だけとなると、速度を圧倒的に上回る牙竜が有利でしょう」
「な、何だって!?」
「地竜が……負ける?」
竜種同士の戦闘に関しては予想外にも一方的な展開へと陥り、牙竜は自分の何倍もの体長を誇る相手に一歩も引かず、それどころか優勢に立っていた。的確に同じ個所に攻撃を続ける事で地竜の岩石のような皮膚を破壊し、体内にまで牙を食い込ませる。
地竜も牙竜に対して反撃を試みようとするが、動作の速度にあまりにも大きな差があり、地竜が攻撃を仕掛ける前に牙竜は離れてしまう。そして隙を突いては急所を狙い、着実に地竜を追い詰めていく。
「グガァアアアッ!!」
「オアアッ!?」
「まずい、片目をやられた!!」
「このまま止めを刺すつもりか!?」
遂には牙竜の右前脚が地竜の目元を貫き、片目を潰して直接頭の中に攻撃を仕掛ける。やがて地竜の脳内にまで到達したのか、地竜は激しく痙攣すると巨体がゆっくりと傾き始め、牙竜は右前脚を引き抜いて地上へと着地した。
予想外にも地竜と牙竜の戦闘は牙竜の勝利で終わり、地竜の巨体が地面に倒れ込む。勝利を確信した牙竜は地竜の巨体に上り詰めると、自分こそがこの島の主だとばかりに咆哮を放つ。
――グガァアアアアッ!!
地竜を打ち倒した牙竜の勝利の雄たけびが周囲一帯に響き、その光景を目にしたミノは膝を付き、ルイとイルミナの顔色も悪い。まさか竜同士の戦闘でこうも一方的な展開なるとは思えず、牙竜は碌な損傷も受けていない。
「こ、ここまでか……」
「……奴が気づく前に引き返そう」
「ええ、作戦を立て直して挑むしかありませんね……」
「ウォンッ……」
牙竜に存在を気づかれる前にルイ達は撤退を決意したが、ここでルイはレナの姿が見えない事に気づく。先ほどまでは傍に存在したはずだが、何処に消えたのかと探す。
「レナ君は?レナ君は何処にいるんだ?」
「坊主?坊主ならさっきまでそこに……」
「あれは!?み、見てください!!」
イルミナの言葉にルイとミノは彼女が指差した方向に視線を向けると、牙竜に踏み台にされた地竜の死骸に紅色の魔力が流れ込み、やがて全身に伝わる。その光景を目にしたルイとイルミナは驚き、一方でミノは何が起きたのかと戸惑う。
「な、何だ?地竜の奴が光って……」
「あれはまさか……」
「レナ!?」
異変に気付いたのはルイ達だけではなく、地竜の方も自分の足元に迫っている紅色の魔力に気付き、驚いたように顔を向ける。やがて地竜の全身に「地属性」の魔力が覆い込むと、地竜の巨体が震え始めた。
まさかまだ生きていたのかと牙竜は驚いて地竜から離れようとしたが、牙竜が動き出す前に地竜の巨体が「浮上」し、やがて地竜の顎の下からレナが姿を現す。はた目から見ればレナが超巨体の地竜を持ち上げているように見える。
「うおおおおっ!!」
「嘘だろ、おいっ!?」
「レナ君、君という奴は……最高だ!!」
「ま、まさか……地竜に付与魔法を!?」
巨大な地竜の全身に付与魔法を施したレナは牙竜を乗せたまま上空へと浮上させ、自分もスケボに乗り込んで後を追う。一方で浮き上がる地竜の背中の上で牙竜は怯えた表情を浮かべ、必死に甲羅に縋りつく。
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