第741話 これが付与魔術師の力だ!!

「うおおおおっ!!」

「ガアアアアアッ……!?」



地竜の死骸を付与魔法の力で浮上させたレナは雲に届く高さまで浮上すると、地竜の死骸を静止させる。牙竜は上昇が止まった事に混乱するが、下の風景を見て怯えた表情を浮かべる。




――本来、レナの付与魔法はロックゴーレムのような相手を除いて生物に対して付与魔法を施す事は出来ない。地竜の場合も例外ではなく、ロックゴーレムのように岩石や土砂で構成された肉体の生物ならばともかく、地竜の場合は外見は岩石のようにみえても「生身」の生物には付与魔法は通じない。




しかし、あくまでもレナの付与魔法が通じないのは「生物」だけであって既に死亡した地竜の肉体ならば付与魔法を施す事が出来る。生物に対してレナの付与魔法が通じない理由は基本的には全ての生物は体内に魔力を宿している事が原因である。


弧の世界の生物は必ずや何らかの系統の魔力を宿しており、それが魔術師でなくとも例外はない。そもそも魔術師とは体内の魔力を攻撃エネルギーに変換する能力を持つ者に過ぎず、生き物であるならば動物や昆虫だろうと魔力を宿す。


レナの付与魔法は物体に魔力を流し込み、重力の力で操作を行う。しかし、魔力を宿す生物に付与魔法を施そうとしても、既に魔力を宿した存在にレナが付与魔法で新しい魔力を送り込もうとしても弾かれてしまう。


例外があるとすれがゴーレムなどの魔物は「核」と呼ばれる魔石の力で岩石や土砂を操作して操っているだけに過ぎず、これらの生物にはレナは付与魔法を施す事が出来る。ゴーレムはあくまでも生身の生物ではないが故にレナが魔力を流し込めばその肉体に先に送り込まれていた「核」の魔力を打ち消し、操る事が出来た。




今のレナは死骸と化した地竜の肉体に魔力を流し込み、重力の力で巨体を浮上させ、遥か上空まで浮き上げる事に成功した。そしてスケボに乗り込んだレナは地竜から手を離すと、付与魔法の効果が切れる前にスケボを利用して浮上し、牙竜と向き合う。



「こっちだ、トカゲ」

「ガアッ……!?」



地竜の背中の上にて牙竜はスケボに乗り込んだレナに視線を向け、先ほどまで怯えていたが獲物を前にすると理性を失い、襲い掛かる習性を持つ牙竜はレナに対して飛び掛かろうとした。



「グガァアアアッ!!」

「……落ちろ」



自分に目掛けて飛び込んできた牙竜に対してレナはスケボを交代させると、地竜の背中から飛び出した牙竜は下に視線を向けると、そこには遥か下に存在する島に気付き、悲鳴を上げて地上へと落下していく。




――ギャアアアアッ……!?




まるで人間のような悲鳴を上げて地上へと落下していく牙竜の様子を観察すると、レナは地竜へ視線を向け、付与魔法の効果が切れる前に地上へと落ちていく牙竜へ向けて地竜の肉体を操作し、地上へと降下させる。



「これが付与魔術師の力だぁあああっ!!」



上空から地竜の肉体を押し付ける形でレナは降下すると、すぐに先に落ちていた牙竜へと追いつき、牙竜は落下の際中に更に地竜の肉体に押し潰される形で地上へと接近する。必死に逃げようとするが、空中では上手く身動きが取れるはずもなく、やがて牙竜は島の湖に目掛けて叩きつけられる。


いくら水面の上に落ちたとはいえ、遥か上空からしかも重力によって加速した状態で叩きつけられれば地面の上に落ちたのと変わらず、派手な水飛沫と共に牙竜の肉体は湖の底まで一気に墜落する。その一方で地竜の肉体も完全に瓦解し、木っ端みじんに砕け散ってしまう。


水中に沈んでいく2体の竜種の死骸を見届けたレナは額の汗を拭うと、やがて水面に巨大な魔石の塊のような物が浮き上がってきた。それを確認したレナは驚き、水面に浮上した魔石は色合いから「地属性」の魔石で間違いはなく、ここでレナはある事を思い出す。



「もしかしてこの魔石……まさか、地竜の核か?」



先に火竜と戦った時、七影の長であるヒトラは火竜の体内に宿っていた「核」を摘出し、その力で巨大な魔力を手に入れた事を思い出す。恐らくは水面に浮上した魔石の正体は地竜の「核」だと思われ、岸部の方へと流れ着く。



「これは……凄いな、いい素材になりそうだ」



流れ着いた地属性の巨大な魔石の塊を見てレナは笑みを浮かべ、かつてマドウから受け取った地属性の良質な魔石よりも高純度な魔力を宿している事は間違いなく、これを持ち帰ればムクチやゴイルも喜ぶだろうと考える。


しかし、今は他の者達との合流を優先し、レナは魔石の塊をどうにか陸地へと引き上げると、すぐにルイ達が駆けつけてきた。





※今回にレナの必殺技は割と初期に考えましたが、あまりにも反則的すぎるので今まで出す機会がありませんでした(;´・ω・)

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