第738話 その頃の湖では……
「追ってきた!!もっと速度を上げられる!?」
「ギギィッ!!」
ゴブリンはレナの言葉に反応し、更に速度を上昇させるために体重をかけて斜面を滑り落ちていく。その様子を見て牙竜は怒りのままに後を追うが、そんな牙竜の注意を引くために他のゴブリン達が攻撃を行う。
「エンゴシロッ!!」
「コッチダ、バケモノッ!!」
「グガァッ……!?」
移動の際中にゴブリン達はボーガンや投石で牙竜を攻撃し、頑丈な牙竜の肉体には損傷は与えられないが、攻撃を受ける度に牙竜は他へ注意を逸らす。その間にレノは牙竜に弾かれたスケボを引き寄せ、ゴブリンから離れて乗り込む。
「あと少しだ!!皆、頑張れ!!」
『ギギィッ!!』
「グガァアアアアッ!!」
ゴブリン達はレナの掛け声に反応して牙竜を取り囲むように移動を行い、そんな彼等に対して牙竜は煩わしそうに鳴き声を放つが、着実に麓までの距離は縮まっていた。
(ここまでくれば……!!)
降下中、レナは湖に存在するはずのルイ達の事を思い出し、牙竜が動き出した事を伝えるため、彼は闘拳を天に向けて放つ。ある程度の高度まで上昇すると、闘拳に付与させた魔力を一気に解放し、雪山を覆っていた雲の一部を吹き飛ばす――
――その一方で湖の方では既にルイ達が待機しており、彼女達は雪山の様子を伺う。作戦を決行するのは雪山に戻ったレノが牙竜を誘導するのを確認した後であり、合図を確認次第に行動を移す予定である。
ミノに肩車されたイルミナは双眼鏡で雪山の様子を観察していると、雪山を覆い込む雲の一部が吹き飛んだ光景を確認し、レナからの合図を確認した。
「……合図です!!牙竜が動き出しました!!」
「そうか、なら僕達も動くぞ!!」
「おうっ!!」
『ウォンッ!!』
「
湖の前に集まっていた魔人たちはルイの補助魔法を受けると、各自が急いで所定の位置まで移動を行う。その中でも火力が高い攻撃が行えるイルミナは湖の中央に浮かぶ地竜の巨大な甲羅に杖を構えると、彼女は砲撃魔法を放つ。
「ブラスト!!」
「うおおっ!?」
通常の砲撃魔法が「光線型」に対してイルミナが生み出した魔法は「光弾型」の魔法であり、火属性の魔力で構成された塊が発射される。その結果、湖から露出している地竜の背中の甲羅に光弾が触れた瞬間、大爆発を引き起こす。
衝突すれば赤毛熊程度の魔物ならば一撃で葬れるほどの威力を誇るが、残念ながら爆発を受けても甲羅の方はびくともせず、それどころか湖に眠っていた地竜を完全に起こしてしまう。
オァアアアアッ――!!
咆哮を放ちながら岩と亀とトカゲの特徴を持ち合わせる巨大生物が起き上がると、湖の周辺に存在するルイ達を睨みつけた。その圧倒的な迫力にルイ達は気圧されそうになるが、火竜との戦闘を経験しているルイとイルミナはすぐに立ち直る。
「気を抜くな!!身体を動かせ、作戦はもう始まってるんだ!!」
「くっ……お前等、気張れっ!!」
『ウォオオンッ!!』
過去に火竜の威圧を経験しているルイとイルミナはすぐに立ち直ると、他の者達に発破をかける。いちはやくミノは立ち直ると他の魔人に注意を施し、全員が作戦を開始するために動き出す。
地竜は湖の周囲に散らばった魔人たちを見て表情を険しくさせ、自分の縄張りを犯そうとする存在は何者だろうと許さない。地竜大きく口を開くと大量の水を飲み込み、口元から水の砲弾を放つ。
「ブフゥウウウッ!!」
「うおおっ!?」
「キャインッ!?」
「しっかりと避けるんだ!!当たれば即師だぞ!!」
地面を抉る勢いで放たれる水の砲弾に対してミノやコボルト達は全力で回避し、一方でルイとイルミナはファングの背に乗せて貰いながらも地竜の注意を引くために攻撃を行う。
「
「ありがとうございます……マジック・アロー!!」
「オアッ……!?」
イルミナの突き出した杖から魔法陣が展開し、無数の属性の魔弾が発射されて地竜の顔面に衝突した。背中の甲羅だけではなく、顔の方も頑丈なのか傷を与える事は出来なかったが注意を逸らす事に成功し、その間に他の魔人たちも投石を行う。
事前にルイの提案で「投石器」を用意していた魔人たちは地竜に向けて石を投げつけ、顔面に執拗に攻撃を行う。顔面を狙うのは注意を逸らすだけではなく、口元から発射される水の砲弾の牽制も同時に行い、結果から言えば地竜は執拗に顔面を攻撃されて苛立ったように湖の中心部から離れて岸部へと移動を開始する。
「オォオオオッ……!!」
「来たか、単細胞め……よし、ここからは距離を取るんだ!!奴を湖から引き離せ!!」
「ストーム・バレット!!」
「おら、喰らいやがれっ!!」
湖から動き出した地竜を確認してルイは次の指示を出し、雪山が存在する方向へと移動を促す。イルミナとミノは殿を務め、最後まで地竜の注意を引く。
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