第733話 転移魔法陣の位置

「ふむ……この地図を見る限り、僕達が転移した場所は縦に重なるように存在するね。まあ、だいたいの位置を目安に書き込んだだけだから、必ずしも直線状に存在するとは限らないが」

「あ、本当だ」

「これは……偶然でしょうか?」



地図の上にルイは線を引くと、偶然なのかレナ達が転移した場所は直線に並んでいた。地図を見た限りでは南方に存在したレナが北へ向けて移動中にイルミナと合流し、そして北方に存在したルイと合流を果たした形となる。


レナは南端から北側へ移動した事になるが、その途中でダンゾウとカツの姿は見ておらず、二人を見逃した可能性も十分に有り得るが、イルミナは島の地形を確認すると、ここで彼女は湖に存在する転移魔法陣の位置を見て今度は横向きに線を引く。



「もしかしたらだが、二人が転移した場所はこの線の何処かに存在するかもしれない」

「え?荒野と草原に二人は飛ばされたんですか?」

「ああ、僕達が発見した転移魔法陣をよく見てくれ。それぞれが雪山、島の中心部、南方に別れているだろう?これはただの偶然とは思えない、もしかしたら西側と東側にも転移魔法陣が刻まれている可能性が高い。それに思い出してくれ、長老の話だと東西南北にエルフの集落があるという話だったろう?」

「あ、そうか!!なら、西側と東側にも集落がある!?」



南側に転移した時はレナは集落は発見できなかったが、長老の話ではこの島には東西南北にエルフが暮らす集落があるはずのため、必然的にも荒野と草原の地方の何処かに集落があるはずだった。



「元々は勇者を育成する場所として選ばれた島だ。ならば勇者も次世代に召喚される勇者のために安全な場所を用意する必要があったんだ。実際に僕が転移した遺跡とこの集落はそれほど離れていない、そう考えれば転移魔法陣は集落の近くに存在する可能性が高い」

「ですが、私が転移した場所には集落は確認できませんでしたが……」

「さっきもいったが、集落が存在するのは東西南北のみだ。島の中心部には集落は存在しない……という事はイルミナが転移した場所に何か他に秘密があるのかもしれない。イルミナ、何か気になった事はないか?」

「気になる事ですか……あっ」



ルイの言葉にイルミナは何かを思い出したような表情を浮かべ、彼女は自分が転移した台座の中心部に何かを嵌め込むような穴があった事を思い出す。



「そういえば私が転移した魔法陣の台座には中心部に窪みが存在しましたが、御二人はどうでした?」

「え?えっと……」

「いや、僕の台座にはそんな物はなかったな」



イルミナの言葉にレノは戸惑い、一方でルイの方は即答した。彼女は念のために自分が転移した際に転移魔法陣の様子を確認し、イルミナが告げた「窪み」はなかった事は間違いなかった。


レナもはっきりと魔法陣の記憶が残っているわけではないが、少なくとも覚えはない。もしかしたら忘れているだけかもしれないが、イルミナによると彼女が確認した魔法陣の中心部には円形の窪みが存在したという。



「ふむ、もしかしたらイルミナが発見した転移魔法陣の台座に何か秘密があるかもしれない。しかし、今はダンゾウとカツの身も心配だ。それに仇討ちの件もある」

「仇討ち?それはどういう……」

「その辺の説明は悪いがレナ君から聞いてくれ、僕は少し確かめたいことがあるから席を外すよ」

「え、あの……?」



ルイはイルミナの説明はレナに任せると部屋を退出し、そんな彼女の姿を二人は呆然と見送る。この状況下で何を確かめるつもりなのかと気になったが、とりあえずはレナはイルミナにこれまでの経緯を説明した――






――部屋から退室したルイは集落の魔人から長老の居場所を聞き出し、彼が普段暮らしている建物へと辿り着く。建物の扉をノックしても返事はなく、鍵が掛かっていなかったのでルイは事前にを声をかけてから中に入る。



「長老、ルイです!!中に入りますよ?」

「げほっ、げほっ……だ、誰じゃ?」

「長老!?」



扉を開くと長老が血反吐を吐いて床に膝を付いている姿を見たルイは驚き、すぐに彼の元へ近づいて肩を貸す。長老の顔色は悪く、彼女は近くの部屋に移動してベッドの上に横たわらせた。


長老の顔色を確認し、彼女は自分の荷物の中から回復薬を取り出す。だが、残念ながら病気の類には回復薬は効果はなく、彼女が長老の口元に回復薬を飲ませても彼の顔色は変わらない。それでものどを潤す事は出来たらしく、少しは楽になったのか長老は例を告げる。



「すまぬ……助かった」

「いえ、それよりも大丈夫ですか?」

「ふふっ……これが大丈夫に見えるか?」

「いや、見えません。相当に無理をされていたようですね」

「ああ……残念だが、儂の命はもう長くはない」



長老は自分のてに視線を向け、もう間もなく命を終える事を理解していた。どんな薬や治療法を施そうと自分は助からないと判断した彼はルイの腕をつかみ、頼み込む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る