第711話 謎の水晶玉
「ふうっ……どうだ、デブリ君の直伝の突っ張りの威力は!!」
「いや、今のただの掌底にしか見えなかったんだけど」
「力任せに殴って壊したようにしか見えなかった」
ここにはいないデブリの必殺技でブロックゴーレムを破壊する事に成功したレナは、残骸を観察して確実に倒したかどうかを調べる。その後に残骸の中からブロックゴーレムの「核」を探し出す。
レナ達は残骸の破片を掻き分けてみるが、何故かブロックゴーレムの体内に存在するはずの「オリハル水晶」と呼ばれるオリハルコンの原材料となる「核」が確認出来なかった。
「あれ?おかしいな、核が見つからない……ブロックゴーレムじゃなかったのかな?」
「え?そんなのあり得るのか?」
「ゴーレム種なら必ず核が存在するはず……もっと詳しく探してみる」
残骸を掻き分けてレナ達はオリハル水晶を探し出すが、特にそれらしき物は見当たらず、これほどの強敵を倒したのに収穫無しなど我慢できず、レナは根気よく探す。するとコネコが残骸の中からそれらしき物を発見した。
「あ、兄ちゃん!!何かあったぞ!!」
「オリハル水晶が見つかったの!?」
「いや、なんか前に見たのと違うみたいだな……何だこれ?」
「それは……」
コネコが取り出したのは無職の水晶玉のような代物であり、どう見てもオリハル水晶ではなかった。水晶玉の大きさは彼女の両手に収まるほどで試しに触れてみるが、試しに触れてみるが特に異変は感じられない。
「何だこれ、これが核なのかな?」
「でも、特別な力は何も感じない」
「硝子玉みたいだな……でも、結構硬いぞこれ」
硝子で構成された水晶玉のように見えるが、その硬度は非常に硬く、少なくともレナの極化した状態の打撃の衝撃が伝わっているはずだが、水晶玉は傷一つ存在しない。水晶玉を手にしたレナは不思議に思い、特に何らかの魔力は感じない。
結局は水晶玉以外には特にめぼしい物は存在せず、残骸の方も何故か回収しようとすると、非常に脆くて少し力を込めただけで壊れてしまう。大迷宮で倒したブロックゴーレムの残骸の場合は簡単に壊れる事はなかったのだが、こちらのブロックゴーレムの残骸は少し力を込めるだけでボロボロと崩れ去る。
「うわ、何だこれ……さっきまで普通に触れたのに簡単に砕けるようになった」
「……その水晶玉みたいなのを回収したせいかもしれない」
「この水晶玉が?」
「それをコネコが取り上げた途端に破片が崩れやすくなった気がする。とりあえず、持ち帰って調べた方がいい。ムクチかゴイル辺りに調べて貰った方がいい」
「それもそうだな……よし、じゃあ帰ろうか」
水晶玉を回収したレナ達は一先ずは通路から抜け出すと、早急に地下の工房に繋がる謎の通路の存在を他の者に知らせ、封鎖を行う――
――その後、レナはムクチとゴイルの元に訪れて地下の工房の件を伝えると、二人は案の定というべきか地下の工房に繋がる謎の通路があるなど知らなかったという。また、秘密の通路に関しては金色の隼の方にも連絡を行い、現在は金色の隼に所属する冒険者達が通路の封鎖を行う。
レナ達が遭遇したブロックゴーレムらしきゴーレムから発見された「水晶玉」の件に関してはゴイルとムクチが調べ上げ、二人が現在借りている鍛冶屋にルイも駆けつけて事情を聞く。ルイの場合はブロックゴーレムと酷似したゴーレムから発見された核に興味を示し、仕事をイルミナに丸投げしてやってきた。
「う~ん……駄目だ、全く分からん!!何なんだこの水晶は?いったいどんな素材で出来ていやがる、こんな物は見た事がない!!」
「魔力は感じられないが、ただの硝子玉なはずがない。どれだけ衝撃を与えようと壊れるどころか罅すら入らない……というよりも衝撃を跳ね返される気がするな」
「衝撃を跳ね返す?どういう意味ですか?」
「論より証拠だ、試しにこいつでおもいっきり叩いてみろ」
ゴイルとムクチの言葉にレナは疑問を抱くと、二人はレナにトンカチを差し出す。トンカチを受け取ったレナは不思議に思いながらも水晶玉に向けて軽く振り下す。
「ていっ……うわっ!?」
「どうしたんだ!?」
「い、いや……普通に叩こうとしたんですけど、何故か急に弾かれたというか」
レナがトンカチを振り下ろした瞬間、水晶玉に触れた途端に腕が弾かれ、トンカチを手放してしまう。まるで振り下した際の衝撃がレナに返ってきたような感覚であり、ゴイルとムクチによると原理は不明だが、この水晶玉は外部からの衝撃を跳ね返す性質を持つという。
「どうだ?俺達の言葉の意味が分かっただろ?こいつは只の水晶玉じゃねえ、何の魔力も感じないのに壊そうと力を加えれば跳ね返してきやがる」
「もしかしたら俺達が知りえない未知の魔石の可能性もある」
「未知の魔石……そんな物があり得るのか?」
ムクチの言葉にルイは動揺を隠せず、彼女も魔術師として魔石に関する知識は豊富だが、外部からの衝撃を跳ね返す性質を持つ魔石があるなど聞いた事もなかった。
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