第710話 魔銃の強化
「何だ!?」
「地震……いや、この感じは違う」
「……何かこっちに来るぞ!!」
レナ達は身構えると、前方の通路の方から足音のような物が鳴り響き、咄嗟にレナは二人の前に出ると闘拳を装着する。やがて現れたのは本来ならばこちらの世界では滅多に目にする事がないはずの魔物だった。
「ゴガァアアアッ!!」
「ブロック……ゴーレム!?」
「嘘だろ!?なんでこいつがこんな所に……」
「でも……小さい?」
姿を現したのは本来ならば煉瓦の大迷宮でも滅多に出現する事のない希少種「ブロックゴーレム」で間違いなかった。ゴーレム種の中でも希少種のはずだが、以前にレナ達が遭遇した個体と比べると体長は2メートル程度しか存在しない。
基本的にはゴーレムはオークやトロールのように大柄な人型の姿をしているが、レナ達の前に現れたブロックゴーレムは全体が細く、しかも「甲冑」を纏った騎士のような姿をしていた。更に特徴的なのは基本的にはゴーレムは鈍重なのだが、こちらのブロックゴーレムの場合はコボルトの如く俊敏でレナ達に襲い掛かってきた。
「ゴオッ!!」
「くっ!?」
「兄ちゃん、援護するぞ!!」
「同意」
拳を突き出してきたブロックゴーレムに対してレナは咄嗟に闘拳で受け止めるが、付与魔法を十分に施していなかったせいか、殴られた際に腕が痺れてしまう。すぐにコネコとシノも動き出し、二人は狭い通路を駆け抜けてブロックゴーレムに攻撃を仕掛けた。
「飛燕脚!!」
「辻斬り」
「ゴガァッ!?」
コネコの蹴りが的確にブロックゴーレムの頭部に的中し、シノも小太刀を抜いて胸元を切り裂く。彼女が手にした「氷華」と「炎華」の攻撃によってブロックゴーレムの胸元に炎と氷が走った。
だが、並の生物ならばともかく、ブロックゴーレムのように全身が金属のように頑強で魔法耐性が高い煉瓦で構成されているブロックゴーレムには妖刀の攻撃も効果は薄かったらしく、ブロックゴーレムは胸元を振り払う動作だけで炎と氷の魔力を振り払う。それを確認したレナは並の攻撃では通じないと判断し、ブロックゴーレムに闘拳を叩き込む。
「
「ゴガァッ……!!」
「防いだ!?」
付与魔法を重ね掛けして殴りつけようとしてきたレナに対し、ブロックゴーレムは咄嗟に両腕を交差して拳を受けると、後方へと吹き飛ぶ。その行動を見てコネコは驚き、レナの攻撃を防いだブロックゴーレムを見てシノも危機感を抱く。
「このブロックゴーレム、普通じゃない。少なくとも前に私達が倒したブロックゴーレムよりも早いし知能も高い」
「それに力も強いよ。俺達が倒したブロックゴーレムよりも強いかもしれない……けど、次で終わらせるよ」
「ゴゴゴゴッ……!!」
レナは闘拳に意識を集中させ、限界強化を発動させて「極化」を引き起こす。深紅の闘拳が更に色合いを増し、外部に放出されていた魔力が完全に闘拳に封じ込められる。
闘拳の異変を感知したのかブロックゴーレムは動きを止め、レナの様子を観察するように待ち構える。そんなブロックゴーレムの行為に対してレナはゆっくりと距離を詰めていく。
「……ゴオオッ!!」
「はああっ!!」
接近するレナに対してブロックゴーレムは拳を振りかざし、同時にレナも拳を突き出す。互いの拳が衝突した瞬間、ブロックゴーレムの拳は闘拳によって破壊され、振りかざした腕が砕け散った。
「ゴアッ……!!」
「兄ちゃん、危ないっ!?」
しかし、片腕を砕かれてもブロックゴーレムは止まる事はなく、足を振りかざしてレナの頭部に回し蹴りを放とうとしてきた。生身の人間であるレナがブロックゴーレムの攻撃を受ければ無事では済まないが、それを予測していたようにレナは身体を屈めて蹴りを回避した。
屈む事で自分の攻撃を回避したレナに対してブロックゴーレムは体勢を整えて追撃を加えようとしたが、その前にレナは腰に手を伸ばすと装着していた「魔銃」を取り出す。
「喰らえっ!!」
「ゴガァアアアッ……!?」
至近距離からレナは弾丸を撃ち込み、ブロックゴーレムの胸元に数発の青色の弾丸がめり込む。かつて盗賊ギルドとの抗争の際、レナはオリハルコンの弾丸の製作を頼んだ事がある。あの時は時間の問題で1発分しか用意できなかったが、この1年の間によってレナの手元には6発分のオリハルコンの弾丸が存在した。
オリハルコン製の弾丸に地属性の魔力を付与させる事で威力を強化させ、更に至近距離から撃ち込む事でブロックゴーレムの肉体に弾丸が貫通する。弾丸が撃ち込まれた箇所には亀裂が走り、それを確認したレナは闘拳を振りかざすと止めの一撃を食らわせる。
「デブリ君直伝、突っ張りぃっ!!」
「ッ――!?」
デブリの突っ張りを思わせる渾身の一撃がブロックゴーレムの肉体に走り、亀裂が全体に広がると、やがてブロックゴーレムの肉体は砕け散った。
※デブリ「レナ……僕、その技を教えたことないぞ(;´・ω・)」
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