第703話 ガノン鉱山
――準備を整えたレナはスケボに乗り込むと、ナカノに暮らす住民の収入源である「ガノン鉱山」へと向かう。サイクロプスが出現した採掘場は鉱山の中腹に存在し、スケボを利用すれば空を飛ぶことも出来るのでわざわざ登山の道具を持ち込む必要もなかった。
今現在のレナは付与魔法の技術も更に磨きが掛かり、現在のスケボの移動速度は100キロを軽く超えていた。更に最近では全身に魔力を灯った状態だとスケボを乗り込む際に発生する風圧も受け流せる事が発覚し、より速度を上昇させてもスケボに乗り込んだレナには影響がない。現在のレナの最高速度は恐らくは時速300キロは超えているだろう。
「……ここが採掘場か」
街を離れてから30分も経過しないうちにレナは目的地の採掘場へと辿り着き、様子を観察する。確かに採掘場は荒らされた形跡が存在し、横転したトロッコや力ずくで引き千切られたようなレールが散らばっていた。
半月ほど前にこの場所にサイクロプスが出現し、暴れ狂って鉱夫を追い散らしたという話だが、その肝心のサイクロプスの姿は見当たらない。坑道に潜り込んだのか、それとも鉱山を離れてしまったのかは不明だが、レナは採掘場へと降り立つと調査を行う。
(とりあえずは魔力感知で探してみるか……)
瞼を閉じてレナは意識を集中させると、周囲100メートルに存在する生物の魔力を感知する。魔力感知の技術もこの1年の間に上達し、今では一瞬で範囲内に存在する魔力を感知し、人間や魔物の位置を正確に把握する事が出来るようになった。
(それらしい気配は……こっちか)
レナは坑道の方にサイクロプスと思われる強い魔力を感じ取ると、荷物の中からランタンを取り出し、火を灯して坑道の中へと入り込む。魔力感知を頼りにレナは坑道の奥へと進み、サイクロプスの姿を探す。
坑道を進み始めてから時間が経過すると、やがてレナは天井が崩れたのか瓦礫で塞がれた通路を発見する。この先の方に魔力を感じるのだが、瓦礫で塞がれていて先に進めない。普通の人間ならばここで諦めるだろうが、レナは掌を伸ばして瓦礫の一部に触れた状態で付与魔法を発動させる。
「
次の瞬間、レナの触れた瓦礫に地属性の魔力が流れ込み、さらに連鎖するように瓦礫に触れていた別の瓦礫に次々と魔力が流れ込んでいく。最初の頃はレナは自分の掌触れた物体しか付与魔法を発動する事が出来なかったが「関節付与」の応用でレナは未知を塞ぐ全ての瓦礫に魔力を流し込む。
掌を離したレナは少し離れると、瓦礫を操作して人間が通れるほどの隙間を作り出す。下手に瓦礫を移動させるよりもこちらの方が手っ取り早く、レナは瓦礫の隙間から身体を潜り抜けて先へと進む。
「ふう、大分進んだな……あ、ここって地属性の魔石も発掘されてるのか」
移動の最中にレナは壁から突き出た地属性の魔石に気付き、帰る前に街長に相談してこの鉱山で発掘された地属性の魔石を購入しようかと考える。マドウから受け取った地属性の良質な魔石は残念ながらヒトラとの戦闘で使い切ってしまい、現在のレナは自分の収入で必要な分の魔石を購入していた。
レナの装備品は全てが地属性の魔石が取り付けられているため、定期的に魔石の魔力が切れる前に入れ替える必要があった。地属性の魔石を購入する人間は少ないため、あまり市場でも取り扱っていない。なので手に入れるのも苦労するのでレナは街を出る前に魔石を購入しておこうと考えた時、前方の通路から鳴き声が響く。
「キュロロロッ……!!」
「この声は……サイクロプスか」
少し可愛らしくも聞こえる鳴き声を耳にしたレナは前方をランタンで照らすと、暗闇の中から体長が軽く2メートルを超える土気色の巨人を目の当たりにする。外見はロックゴーレムと若干似ているが、サイクロプスの場合は岩石ではなく、生身の生物である。
通路の奥から出現したサイクロプスは坑道の中に人間の少年が存在する事に気付き、不思議そうに首を傾げた。その様子を見てレナは背中に抱えていた鞄から捕獲用の武器を取り出そうとした時、突如として坑道内に振動が発生した。
「うわっ!?」
「ギュロォッ!?」
一瞬だけ坑道に振動が走ると、レナは膝を崩し、サイクロプスは岩壁に身体をぶつけてしまう。その際に巨体が岩壁に衝突したせいで亀裂が発生し、天井にまで広がる。結果として亀裂が天井に届いた瞬間、瓦礫が崩れ落ちてサイクロプスの頭部に激突した。
「ギュラァアアッ!?」
「あっ……やばい」
頭部に強い衝撃を受けたサイクロプスは目を血走らせ、頭に血が上った影響せいでサイクロプスは我を失い、近くに存在したレナに視線を向ける。冷や汗を流しながらもレナは愛想笑いを浮かべるが、サイクロプスは真っ先にレナへ向けて拳を振りかざす。
※レナ「今のは俺のせいじゃないのに(;´・ω・)」
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