後日談 〈ブラン達のその後〉
「そういえば……ブラン達はどうなったんだ?あいつらも一緒に戦ったのに表彰式にはいなかったよな?」
「あ、その事なんだけどさ……ブラン君達はしばらくの間、謹慎を言い渡されているんだって」
「謹慎……?」
ミナ曰く、父親のカインから聞いた話によるとブラン達は今回の騒動でサブの弟子として、ヒトノ国に対しての反乱行為を行ったのは紛れもない事実である。だが、彼等の協力がなければヒトラを倒せる事は出来なかった事もあり、罪と功績を考えた上で彼等に与えられたのは国の管理下の元、謹慎を言い渡される。
罪を犯したとはいえ、サブがヒトノ国のために様々な功績を立てたのも事実であり、彼の弟子達もサブにそそのかされたとはいえ、中にはシデのように師に反対した者もいた。そういう人間は罪には問わず、そもそも現在のヒトノ国は人手不足のために貴重な魔術師の称号を持つ人間を失うわけにはいかなかった。
「シデ君も一緒に今はブラン君達は王城の方で暮らしているよ。皆、優秀な魔術師だから今のうちに魔導士見習いとして仕事を勉強させているんだって」
「そっか……じゃあ、あいつらも元気にしてるんだな」
「良かったな、あんちゃん。そういえば……えっと、ドリスの姉ちゃんを助けてくれた、ちょ……ちょうちょ?」
「チョウ君の事?チョウ君は元気だよ」
シデと共にドリスに力を貸したチョウは冒険者ギルドの方に避難していたが、火竜の襲来時の前に家に残した家族を気にかけてギルドから抜け出していたという。それが功を奏して火竜の襲来時にはギルドに残っていなかったので無事だったらしく、家族も無事だという。
今回の戦で死亡したのはマドウ、サブ、ワドルフ、他にも多数の犠牲者が生まれた。だが、盗賊ギルドは潰滅し、火竜という脅威も排除できた。問題が残っているとすれば裏街区の方に関してだが、盗賊ギルドが消えた事で裏街区は現在は女帝が完全に支配下に収めていた。
「それにしても裏街区の方は凄い事になってるな……あ、お前らは新聞を見たか?」
「新聞?なんの話だよ、あんちゃん?」
「裏街区……あ~そういえばお父さんもなんか嘆いていた気がする」
「何だよ、裏街区の方でなにかあったのか?」
デブリとミナの会話にコネコは気にかかって尋ねると、二人は困った表情を浮かべてコネコに話すべきか悩む。なにしろ内容が内容なだけに子供である彼女に話す事に躊躇してしまうが、ここまで興味を持ったら彼女は自力で調べるだろうと判断した上で二人は話す――
――今までは裏街区は完全に隔離され、常に厳重な警備が施されていた。しかし、現在の裏街区は盗賊ギルドが壊滅した事によって脅威も減り、現在は女帝が裏街区の全域を支配下に収めた。
女帝の長であるパトラは金色の隼を介して国王や大臣たちと接触し、裏街区内に存在する盗賊ギルドの拠点に保管されていた強奪品の類を全て返却するという。その代わりに裏街区の警備体制を見直し、他の地区への出入りを許可して欲しいと願う。
『我々はヒトノ国と争うつもりはない。今後は良い関係を結びたいと思っている……この願いを聞き入れてくれるのならば盗賊ギルドと関与していた大臣や貴族の情報も明け渡す』
パトラは交渉材料として盗賊ギルドが今まで貯め込んでいた資金と強奪品、更には盗賊ギルドと裏で繋がっていたヒトノ国の人材の情報を持ち込む。女帝と盗賊ギルドは敵対していたとはいえ、利害関係が一致していたので最後に手を組んだ。
盗賊ギルド側としては先の反乱が成功すれば盗賊ギルドの拠点も情報も奪われたところで意味はなかったが、反乱が失敗した以上は女帝によって残された拠点も情報も完全に乗っ取られた形となる。当然だが盗賊ギルドの残党は女帝から支配権を取り戻そうとしたが、七影を失って火竜や昆虫種という戦力も手放した彼等に女帝に立ち向かう戦力は残っていない。
『盗賊ギルドの残党の大部分も裏街区の方で監禁している。この条件を飲むのならば我々はすぐにでも彼等を引き渡す事を誓う』
『……つまり、今度は盗賊ギルドの代わりにお主等がこの国の裏社会を支配するというわけか?』
『そちらにとっても悪い話ではないはず、こちらとしてもヒトノ国と争うつもりはないが……この条件を聞き入れなければ我々としても彼等を引き渡す事は出来ないし、これまで通りに裏街区は無法地帯のまま、こちらの自由にさせてもらう』
『むうっ……』
裏街区の隔離の解除を求めるパトラに対して国王は悩みに悩み、盗賊ギルドの残党は放置できず、それにこれまでに盗賊ギルドから奪われた金品が戻ってくるのならばと彼は条件を全て呑み、こうして裏街区は解放されて他の人間の出入りが自由になった――
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