後日談 〈復興作業〉
――盗賊ギルドが壊滅してから数日後、工場区から派遣されたドワーフの指揮の元、中央街の復興作業が開始された。工場区の方も被害は大きかったが、やはりケルベロスや火竜が襲来した中央街の方が被害は尋常ではなく、多くの犠牲者が生まれていた。
「おら、炊き込みだぞ!!遠慮なく喰いやがれっ!!」
「怪我人はこちらへどうぞ!!薬は十分にありますので安心してください!!」
「追加の器材を運んできました!!」
「おう、そっちの方に運んでくれ!!」
中央街では数多くの兵士が行きかい、その中には冒険者の姿も多かった。彼等は家を失くした人間のために炊き込みや怪我の治療を行い、まずは彼等の住む場所を提供するために仮設住宅の建設を急ぐ。人間よりもずっと手先が器用で力もあるドワーフ達が協力し、次々と運ばれてくる材料を利用して建物の建設を行う。
ドワーフだけではなく、他の種族の者も協力して復興作業に専念する。巨人族のような腕力に優れた者達は荷材を運ぶのに活躍し、運ばれてきた材料を利用してドワーフが建物を建設し、それ以外の種族は炊き込みや怪我の治療などで活躍を行う。それぞれの種族に合わせた作業分担で仕事を勧めていき、順調に復興は進んでいた。
「へえ……あんな事があったから皆元気ないかと思っていたけど、思ったよりも元気そうだな」
「そうだね、僕達も頑張って手伝わないといけないね」
「ふんっ!!力仕事なら僕の出番だな!!うおおおっ!!」
復興作業する人間の中にはミナ達も含まれ、彼女達は冒険者として作業の手伝いを行っていた。腕力に地震のあるデブリは両手に大量の木材を抱えて運び込み、他の者達も材料を運び出すのを手伝う。
「ふうっ……それにしてもこういう時は兄ちゃんがいてくれたらよかったのにな。兄ちゃんの付与魔法ならどんな物でも浮かばせて運んでこれるのに……」
「仕方ないよ、レナ君はもう黄金級冒険者なんだから……僕達と違って色々と大変なんだよ」
「そうはいうけどさ、あたし達も金級冒険者に昇格したんだぞ?なのに最初の仕事が荷車運びなんて……なんだかなぁっ」
「我儘を言っては駄目ですよ。復興作業も立派な仕事です」
荷材運びでは誰よりも役立つはずのレナは復興作業には参加しておらず、彼は現在は黄金級冒険者に昇格するため、正式な手続きを行っていた。レナの年齢で黄金級冒険者に昇格した人間など数十年ぶりであり、街中ではレナの噂でも持ちきりだった。
「おい、聞いたか?金色の隼に所属している冒険者がまた黄金級に昇格したらしいぞ?」
「ああ、聞いた聞いた!!凄い話だよな、あのクランだけで何人の黄金級冒険者がいるんだよ」
「しかも今度のはまだガキだって話だぞ?それもあの火竜を倒すのに貢献した凄い冒険者だとよ!!」
「へっ……信じられるかよ。どうせ、金色の隼が手柄を独り占めするためにうそぶいたんじゃねえのかよ」
「んだとてめぇっ!?うちの兄ちゃんを馬鹿にすると許さねえぞこらぁっ!!」
「うおっ!?な、何だこのガキ!?」
「ちょ、駄目だよコネコちゃん!!落ち着いて!!」
噂話を盗み聞きしていたコネコはレナを馬鹿にした男に怒鳴りつけ、危うく蹴りつけようとする彼女を他の者が慌てて引き留める。現在のレナは良くも悪くも王都で最も注目の人物となっており、今ではその名前を知らない人間がいないほどである。
何しろレナの功績は非常に大きく、七影のジャックとヒトラを討ち倒し、更には竜騎士隊や金色の隼の協力はあったとはいえ、あの「ケルベロス」を討伐した事は噂になっていた。
今回の功績でレナは本来ならば黄金級冒険者になるための昇格試験さえも免除されるが、これは普通ならばあり得ない処置である。冒険者は実力社会のため、余程の大きな功績を上げなければ冒険者の最高階級である黄金級冒険者の昇格試験を免除するなど有り得ない。
「あ~あ、今頃は兄ちゃんは何をしてるのかな……あれ、そういえばドリスの姉ちゃん達はどうしたんだ?」
「もう、忘れたの?ドリスさんのお母さんとお父さんは無事だったんだけど、家が燃えちゃって今はダリルさんの新しい屋敷に世話になってるんだよ。新しい家を建てるためにドリスさんもナオ君も手伝ってるんだよ」
「ああ、そういえばそんな事を言ってたような……じゃあ、シノの姉ちゃんは?」
「え?僕は知らないけど……そういえば見かけないね、どうしたんだろう?」
「おかしいな、サボって逃げたのかな……でも、シノの姉ちゃんも意外と義理堅いからサボるような真似をするわけないか」
シノに関しては誰も所在を知らず、彼女は時々姿を眩ませる事があるのでミナもコネコもあまり気にしない。一方でデブリの方は他の面々がどうなったのか気にかかり、二人に話しかける。
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