第694話 総力戦

「反動!!」

「螺旋槍!!」

「刺突!!」

「突っ張り!!」



ゴロウ、カイン、ジオ、デブリの4人は戦技を繰り出し、ヤマタノオロチの首を弾き返す。その一方でレナの方も闘拳に雷属性の魔石を握りしめると、魔法拳を発動させて一気に打ち返す。



魔法拳ブレイク!!」

『ぐああっ!?』



全てのヤマタノオロチの首が弾き返されると、全員が陥没した地面から抜け出し、動き出す。戦闘職の人間は付与魔法が持続している間に攻撃を仕掛け、一方で魔術師組の方もヤマタノオロチへ直接の魔法攻撃は行わず、周囲の建物の残骸や地面に散らばった瓦礫を利用して攻撃を試みる。


全員が一か所に固まると狙われやすいために分散して攻撃を行うのは功を奏し、ヤマタノオロチは自分の周囲に散らばるレナ達に対して無我夢中に八つ首を上空から叩きつけるように放つ。



『こノぉっ……ムシけらがぁっ!!』

「行くぞ、皆ぁっ!!」

『おうっ!!』



レナの掛け声に全員が反応し、天から接近するヤマタノオロチの八つ首に対してそれぞれが対応を行う。真っ先にコネコはレナの付与魔法と聖属性の魔力を纏わせたブーツを利用し、彼女は勢い良く加速してシュリに話しかける。



「チビっ子!!足場を作れ!!」

「誰がチビだ!!」



シュリはコネコの言葉に言い返しながらも彼女のために空中に結界魔法陣を作り出し、足場を用意する。魔法陣を利用してコネコは上空へと駆け上がると、ヤマタノオロチの首の一つに強烈な蹴りを叩き込む。



飛来脚ロケットキック!!」

『ガぁっ!?』



レナの飛来拳の如く加速したコネコの蹴りが的中したヤマタノオロチの首は弾き飛び、それを確認したコネコは笑みを浮かべる。だが、一方で他の首が空中に飛んだ彼女の元へと近づき、彼女を飲み込もうと大口を開く。



『小娘がァっ!!』

「うわっ!?」

「ヒリュー!!」

「シャアアッ!!」



しかし、コネコが食われる前にヒリューに乗り込んだミナが彼女を回収すると、迫りくるヤマタノオロチの首から逃れる。コネコを抱えた状態でミナは空を移動し、その様子を眺めていたイルミナは自分が助けるまでもなかった事に安堵する。


天馬に乗り込んだイルミナはミナがコネコを救出したのを助かめると彼女は別の首に視線を向け、砲撃魔法の準備を行う。聖属性以外の魔法は吸収されてしまうので直接攻撃は出来ないが、彼女はヤマタノオロチの全ての首が繋がっている場所に視線を向け、魔法を放つ。



「マジック・アロー!!」

『ソんな魔法デ……うオっ!?』



イルミナが繰り出した無数の魔弾はヤマタノオロチの首を全て回避すると、ヤマタノオロチの足場に衝突し、激しい振動と煙を巻き上げる。直接的な損傷は与えられないが、それでも体勢を崩した事でヤマタノオロチは隙を作り出す事に成功し、今度はブランとヘンリーが動き出す。



「いくぞ、タイミングをしっかりと合わせろよ!!」

「は、はい!!ちゃんと僕に合わせてくださいね!!」

「お前が俺に合わせるんだよ!!ちっ……行くぞ!!」

「サンダー……ボルト!!」



ブランは両手に黒炎を作り出し、ヤマタノオロチの首の一つに放つ。それを見たヘンリーも同時に雷属性の砲撃魔法を放つ。


二人の魔法はヤマタノオロチに接触する寸前、互いに衝突して反発し合い、複数の属性同士の魔法が組み合った事で生じる「反発作用」を利用して首を吹き飛ばす。



『グあアッ!?』

「やった、成功しました!!」

「は、いくら魔力を吸収するといっても限界があったか!!」



本来は闇属性以外の魔力を吸収できるはずだが、一度に複数の魔力が組み合わさった魔法攻撃に関してはヤマタノオロチも一瞬では吸収しきれず、首の一つが消し飛ぶ。それを目撃したドリスは彼女はアイリから以前に受け取った「魔丸薬」を取り出し、口に含む。



「私も休んではいられませんわ……要は吸収する前に攻撃を加えればいいだけの事!!それならこれが一番ですわ!!」

「ドリス!?何をする気!?」



ドリスは両手を上空に掲げると、魔丸薬のお陰で僅かに回復した魔力を使用して氷塊の円盤を作り出す。そして丸鋸のように周端を尖らせると、円盤を高速回転させてヤマタノオロチの首に放つ。


彼女が得意とする「氷塊」は氷を作り出すという性質上、実体を持つ。それを利用してドリスはヤマタノオロチに吸収される前に首を切り落とそうと攻撃を仕掛けた。



「これが私の必殺技、回転氷刃ですわっ!!」

『ぐぎゃアアッ!?』



回転氷刃によってヤマタノオロチの首の一つが切り落とされ、これで先にコネコとブラン達が損傷を与えた首を含めると3つの首が頭を失う。しかも本来ならばすぐに再生するはずだが、先ほどからヤマタノオロチの様子がおかしく、再生する気配がない。


ヤマタノオロチが発する言葉の数々も時折発音がおかしく、その様子を伺っていたルイはヤマタノオロチを維持するヒトラにも限界が訪れようとしているのではないかと考えた。よくよく考えれば現在のヒトラは肉体すら持たない只の「死霊」なのだ。そんな状態で人間としての意思を維持するのがそもそもおかしな話である。

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