第695話 限界
ヤマタノオロチの異変はルイだけではなく、他の者達も気づき始めていた。スケボに乗り込んで空を移動しながらもレナはドリスに切り落とされたヤマタノオロチの首に視線を向けると、本体と切り離された影響か全体が崩れて消え去っていく。
(そうか……奴の肉体、無限に再生するわけじゃないんだ。切り離された箇所は魔力が崩壊して消えるなら、もっと損傷を与えればいずれあいつも限界を迎える。その時に聖属性の魔力を注ぎ込めば倒せるかもしれない!!)
レナはヤマタノオロチとの戦闘に勝機を見出すとまずは残りの5つの首を狙う事にした。頭さえ潰せば脅威も半減するため、レナは残り少ない魔石の数を把握して攻撃を切り替えることにした。
「
『グウッ……!?』
闘拳に限界まで魔力を込めたレナはヤマタノオロチに接近すると、そのまま攻撃を仕掛ける素振りを行う。それを確認したヤマタノオロチは狙いをレナに定めようとしたが、その隙を突いて他の者達も動き出す。
レナを狙おうと動き出した全ての首を見て真っ先に仕掛けたのはデブリであり、彼は魔剣を抱えたツルギを掴むと、勢いよく身体を振り回す。プロレスのジャイアントスイングの要領でデブリは彼の身体を投げ飛ばした。
「ふんぬらばぁっ!!」
「ぐぐっ……うおおおっ!!」
『なニィッ!?』
魔剣を突き出す形で投げ飛ばされたツルギはレナの背後から近づこうとした首に対して「サンダーブレード」を発動させ、先ほどのドリスのように吸収される前に首の切断を行う。
予想外の方向からの攻撃にヤマタノオロチは動揺し、一方で今度はナオとヒリンが駆け出すと、地上からヤマタノオロチの胴体に目掛けて拳と拳を繰り出す。
「おらぁっ!!」
「崩拳!!」
『ぬオッ……!?』
二人の攻撃を受けたヤマタノオロチの巨体が僅かに揺らぎ、それによってレナに近付いていた首の一つが軌道を大きく逸れてしまう。他の首の妨害を潜り抜けたレナは闘拳を叩き込み、一気に魔力を解放させて二つの首を吹き飛ばした。
「
『ぐぁあアアアッ!?』
「よし、あと少しだ!!」
頭が無事な首が二つだけとなったヤマタノオロチを見てルイは声を上げると、続けてゴロウとカインが動き出す。カインはゴロウに向けて頷き、それを見たゴロウは彼に向けて体勢を屈めた状態で盾を上に構える。
カインはゴロウに向けて駆け出すと彼の盾に乗り込み、そのままゴロウは上空へと押し出す。ゴロウの力を借りてカインは跳躍すると、ランスを放つ。
「くたばれぇっ!!」
『ググッ……ナメルナァッ!?』
迫りくるカインに対してヤマタノオロチは首を動かし、彼の攻撃を寸前で回避する。ランスが空振りしたカインは空中に放り出された状態で隙だらけとなり、そんな彼に対してヤマタノオロチはもう片方の首を伸ばす。
『シネェッ!!』
「っ……!?」
「お父さんっ!!」
しかし、カインが飲み込まれる前に飛竜に乗り込んだミナが駆けつけ、彼を救うために彼女はヤマタノオロチは後頭部に接近する。そして特訓の末に編み出した彼女だけが扱える技を繰り出した。
(お母さん……力を貸して!!)
亡き母親から教わった「螺旋槍」それを娘であるミナは更に発展させた新しい技を繰り出す。彼女は槍を手元で回転させた状態で突き出す。
「真・螺旋槍!!」
『オアアアッ!?』
「うおっ!?」
ヤマタノオロチがカインに喰らいつく寸前にミナは回転力を上昇させた一撃を繰り出し、頭を吹き飛ばす。その光景を目にしたカインは目を見開き、既に娘が自分を超える螺旋槍を扱った事に彼は驚く。
一方でミナの方は全力を出し切ったのか腕が震えて動けず、代わりに飛竜がカインの身体を抱きかかえる。先の一撃に体力を使い果たした娘に対し、カインは素直に褒める。
「……助かったぞ、お前は私の誇りだ」
「あっ……」
「シャアッ!!」
カインの言葉にミナは驚きながらも彼に視線を向けるが、ヒリューが抱き抱えているせいで顔はよく見えなかった。しかし、彼の口元は笑みを浮かべてる事だけは見抜き、彼女も同じように笑顔を浮かべた。
一方で残った首が一つだけとなったヤマタノオロチは徐々に全身を痙攣させ、全体が小さくなっていく。どうやら全ての頭を再生する余裕もないらしく、全体を縮小化させる事で魔力を圧縮させ、やがて体長が10メートル程度の「火竜」へと変貌する。
『グググッ……ぎ、ギザまらァっ……!!』
「また小さくなりましたよ!?」
「やはり……奴も限界が近い!!このまま攻撃を続ければ必ず倒せるんだ!!」
「うおおおっ!!いくぞレナぁっ!!」
「うんっ!!」
もうヤマタノオロチの姿を維持する事も出来なくなったのか、火竜の姿に変異したヒトラに対してデブリは駆けつけ、レナも同じように飛び出す。そんなデブリの姿を見てドリスが慌てて引き留めようとした。
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