第693話 反撃開始!!

『ガアアアアッ!!』

「「「うおおおおっ!!」」」



魔法陣を破壊して自分達を飲み込もうとするヤマタノオロチの三つ首に対し、レナとナオは闘拳を振りかざし、ミナは槍を突き出す。三人の武器には付与魔法が既に施され、同時にミナとナオの手元には聖属性の魔力の螺旋が渦巻いていた。




――ドリスの考えた作戦はレナの以外の人間が所有する武器に付与魔法を施し、更にその状態から「魔法拳」の要領で武器に別の魔力を取り込む事は出来ないかという考えだった。


レナの魔法拳は身に付けた武器の魔力を上手く応用し、外部から魔力を取り込む事は特訓に付き合っていたドリスも知っている。この技術は今までレナは自分の手持ちの武器にしか使わなかったが、彼は既に「魔鉄槍」などの武器を使用した際に手元から離れた武器でも外部から取り込んだ魔力を維持して攻撃出来る事は既に証明されている。


この技術を利用すれば他の人間の武器でも魔法拳の要領で外部の魔力を取り込めるため、まずは体力が残っているナオとミナの武器に先にレナが付与魔法を施した後、ヒリンの回復魔法によって彼女の聖属性の魔力を武器に取り込む。その結果、3人は上空から降りてきた三つ首に対して「反撃」を行う。



「勁撃!!」

「螺旋槍!!」

四重強化クワトロ衝撃解放インパクト!!」

『オアアアアッ!?』



ナオは発勁と打撃を組み合わせた一撃を食らわせ、ミナは高速回転した槍を突き刺し、最後にレナが強烈な衝撃波を発生させて三つ首を吹き飛ばす。攻撃を受けたヤマタノオロチは頭部が吹き飛び、そのまま残された首も胴体の元へと引き返した。



「す、すげぇっ……」

「あの馬鹿でかい首を吹き飛ばしただと……!?」

「ふっ……流石は俺の生徒だ」

「ミナ、そこまで成長していたか……!!」



レナはともかく、ミナとナオに大してジオ、ゴロウ、カインの将軍は素直に感心し、あれほどの巨大な首を吹き飛ばすだけの武人は滅多にいない。一方でミナとナオの方も自分の武器に視線を向け、驚愕の表情を浮かべる。



(す、凄い力……これがレナ君の付与魔法の力なんだ)

(これだけの凄まじい攻撃をしたのに魔力がまだ消えない……ふふ、初めて格闘家以外の称号が羨ましく思えました)



先ほどの二人の攻撃はレナの付与魔法の補助もあったお陰で首を吹き飛ばす事ができた。二人は改めてレナの付与魔法の凄さを思い知らされ、一方でレナの方もドリスの作戦が成功した事に安堵した。


どうやら他の人間の武器でも現在のレナの付与魔法を発動させれば外部の魔力を取り込む事が可能だと判明し、戦闘職の人間でもヤマタノオロチに対抗する手段が発覚した。一方で攻撃を受けたヤマタノオロチは三つ首の頭部を再生するが、その結果として吹き飛ばされた分の魔力を失う。



『オノレッ……オノレェッ……!!』

「み、見ろ!!あいつ、また小さくなったんじゃないのか!?」

「確かに……魔力が最初と比べても明らかに減少しているように見えます。このままなら魔力を削り取れば倒せるかもしれません」

「よし、レナ君は他の人間の武器に付与魔法を施してくれ!!僕達も戦うぞ、反撃開始だ!!」

『おおっ!!』



ルイの言葉に全員が沸き上がり、勝機を見出したレナ達の士気が高まる。一方でヤマタノオロチは今度こそ確実にレナ達を始末するために八つ首を動かし、攻撃を仕掛けてきた。



『コノッ……ウジムシガァアアッ!!』

「なら、お前は死体に群がる蠅だっ!!」



あらゆる角度から首を伸ばしてきたヤマタノオロチに対してレナは冷静に地面に付与魔法を発動させ、自分達の足元を陥没させる。


その結果、ヤマタノオロチの八つ首は地中に移動するレナ達を追いかけるために上空から仕掛けるしかなく、別々の方角から襲われたら厄介だったが、一方向から全ての首が襲ってくるのならば十分に対処出来た。



「皆、行くよ!!」

「ああっ!!」

「早くしろっ!!」

「僕も戦うぞっ!!」



レナは戦闘職の人間達に向けて駆け出し、次々と武器に手を触れて付与魔法を施していく。一瞬触れただけで武器に魔力を宿していくレナの姿を見てルイとイルミナは驚き、一方でヒリンの方は広範囲の人間に同時に回復魔法を施す。



「私も本気を出すわよ~……があああっ!!」

「えっ!?」



ヒリンが表情を険しくさせて獣のような咆哮を放つと、上半身を抜き出す。突然のヒリンの行動にアルトは驚愕するが、彼女の肉体を見て男性だと知って衝撃の表情を浮かべる。だが、一方でヒリンの方は全身を発光させて周囲の人間に同時に聖属性の魔力を送り込む。


武器を所持した者達はレナの付与魔法とヒリンの聖属性の魔力を取り込み、武器に赤色の魔力と螺旋状の白色の魔力を宿す。そして頭上に迫りくるヤマタノオロチの奴首に目掛けて同時に戦技を発動させた。

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