第687話 地中から迫りくる存在
「くぅっ……ぜ、全魔力を使い果たしましたわ」
「僕も……指がもう動かない」
「か、回復薬は残ってなかったっけ?」
「残念ながら……」
「け、けど……あたし達、生き残ったんだよな」
「……もう駄目かと思った」
「や、やったね……皆」
「大丈夫ですか、皆さん!?」
倒れ込んだレナ達の元にイルミナは駆けつけ、状態を伺う。先ほどの爆炎を防ぐためにドリスは魔力を使い果たし、シノの方も妖刀の影響で顔色が悪く、デブリの場合は両手が凍傷を引き起こしていた。
ミナとコネコとレナはまだ動けるが、ナオの方もデブリを支えるのに相当な体力を消耗したらしく、何とか立ち上がったが足が震えていた。すぐにイルミナはデブリの両手の具合を確認し、最後に取っておいた回復薬を差し出す。
「大丈夫です、この程度の傷なら治ります。ですが、しばらくは感覚が戻らないと思うので大人しくしてください」
「お、おおっ……良かったな、あんちゃん」
「それより、ヒトラの奴はどうなったんだ!?」
「多分、この爆発だともう……」
「君たち、無事か!?」
天馬に乗り込んだルイ達が飛行船から降りてくると、レナ達の元へ駆けつける。全員の無事を確認しで安堵する一方、ジオとゴロウとカインは爆炎に飲み込まれたヒトラの姿を探す。
「アルト王子は……アルト王子は無事か!?」
「王子、返事をしてください!!」
「落ち着け、話によれば王子はヒトラに憑依されている!!例え、無事だったとしても我々の敵である事に変わりはない!!油断するな!!」
ジオとゴロウは必死に王子を探そうと黒煙の中からアルトを探そうとするが、カインが二人を落ち着かせて引き留める。彼はヒトラに操られたジャックと遭遇しているのでアルトが現在はどんな状態なのか想像は出来る。
火竜の体内に存在した魔水晶の暴発によって周囲の建物は崩壊し、ルイ達の場合は飛行船に乗っていたので助かったが、周辺の建物が完全に崩れていた。身を隠す建物もないため、もしも煙の中から動く人影が存在すればアルトである可能性が高い。
「この煙は厄介だな……イルミナ、君の魔法で吹き飛ばせるか?」
「やってみます……ストーム・バレット!!」
イルミナは杖を構えて風属性の砲撃魔法を発動した瞬間、周囲を漂っていた黒煙が吹き飛ばされる。その結果、ヒトラが存在した場所には巨大なクレーターが存在し、そこにはヒトラらしき姿は見えなかった。
「こ……この跡は……まさか、消し飛んでしまったのか?」
「ヒトラめ!!王子を道連れに自分も死んだのか!?」
「そ、そんな……王子、何処ですか王子!!」
「落ち着くんだ!!まだ死んだとは限らない!!」
クレーターを確認した3人の将軍は瓦礫を掻き分け、ヒトラに憑依されたアルトを探し出そうとした。それをルイは止めて警戒を怠らないように注意する。
仮にここでアルトが死ねばヒトノ国の後継ぎは死んでしまい、その場合は王族の親類がヒトノ国を引き継ぐことになるだろう。だが、アルトの事を幼少期の頃から指導してきた3人の将軍達は必死に彼の姿を探す。
「兄ちゃん、兄ちゃんの魔法でどうにか出来ないのか?確か、前に付与魔法で地面を操作した時もあったよな?」
「……やってみる」
「え、出来るのか!?」
「おいおい、無理すんじゃねえよ……お前だってあんなバカでかい飛行船をずっと動かしてたんだろ?」
「でも、アルト君が埋まっていたら……」
レナはコネコの言葉に頷いてクレーターの中心部に向かい、両手を伸ばして付与魔法を発動させる。地中に何かが埋まっていれば送り込んだ魔力を通してレナも感知する事が出来るため、祈る様にレナは意識を集中させた。
「
両手で付与魔法を発動した瞬間、レナはクレーター全体に魔力を注ぎ込み、地中に何かが埋まっていないのかを確認する。その結果、クレーターの地下の方に違和感を感じ取り、すぐに他の魔術師達も異変に気付く。
「こ、この感覚!?」
「まずい、離れるんだレナ君!!」
「すぐに戻ってきてください!!」
「えっ!?どうしたんだよ急に!?」
ドリス、ルイ、イルミナの三人が何かに気付いた表情を浮かべ、その彼女達の反応にコネコ達は驚く。一方でブラン達も何かを感じ取ったのか表情を険しくさせ、クレーターに存在するレナに注意した。
「おい、何かやばい感じがする!!そこから離れろ!!」
「き、気持ち悪い魔力を感じます!!すぐに逃げた方がいいです!!」
「死ぬぞ、早く戻れ!!」
「急いで、早く戻って!!」
「……来るっ!!」
「な、何なんだよお前らっ!?何が起きてるんだよ!?」
ブラン達の焦った表情にデブリは動揺の声を上げ、一方でレナの方も危険を察知して瞬間加速を発動させてクレーターから離れるために駆け出す。そしてレナがクレーターを抜け出した瞬間、クレーターの中心地に大きな亀裂が走り、やがて巨大な生物が姿を現した。
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