第620話 盗賊集団
「よし、早く兄ちゃんの所へ行こうぜ!!もう昆虫種の奴等も見かけなくなったし、今なら工場区へすぐに迎えそうだぞ!!」
「待て!!敵は昆虫種だけじゃない、盗賊ギルドの奴等もいるんだぞ!!」
「それにサブ魔導士のお弟子さんたちもいますわ。焦る気持ちは分かりますが、ここは慎重に……」
「っ……!?皆、気を付けて!!」
会話の途中、ミナ達の傍に存在する建物の屋根に複数人の人影が現れ、地上へ向けて無数の矢が放たれる。一早く危険に気づいたミナは全員を守るために槍を振り回す。
「大車輪!!」
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
「な、何だ!?」
屋根の上から降り注ぐ大量の矢をミナは槍を高速回転させることで弾き返すと、デブリ達は驚いた表情を浮かべて見上げる。すると、いつの間にか屋根の上には黒装束を身に包んだ集団が存在した。
全員の手元にボーガンが握りしめられている事から、先ほどのミナ達の攻撃は彼等である事が判明した。敵が現れたのかとデブリ達は身構えると、黒装束の集団は再びボーガンに矢を装填し、構える。
「射抜け!!」
『はっ!!』
「させるかよっ!!」
再び矢を放とうとした敵に対してシデは反射的に杖を構え、彼は「ファイアボール」を発動させて屋根の上に存在する集団に放つ。2メートルを超える火球が誕生すると、屋根の上の集団に目掛けて接近し、派手な爆発を引き起こす。
「よし、やったか!?」
「いや、まだだ!!あいつら、全員避けたぞ!?」
「何だと!?」
屋根が吹き飛ぶ程の派手な爆発が発生したが、コネコの動体視力は10名程の人影がシデの放ったファイアボールが衝突する前に別の建物へ飛び移った事を見抜く。しかも全員で同じ方向に移動したわけではなく、別々に分かれて移動を行っていた。
他の建物の屋根に飛び移る者、地上へ向けて降下する者、別の建物の中へと避難する者、全員がバラバラに行動したために追撃を加えようにも誰を攻撃すればいいのか分からず、シデは戸惑う。
「く、くそ……何処に隠れやがった!?」
「危ない、シデ君!!」
「うわっ!?」
杖を構えた状態でシデは混乱したように周囲を振り返るが、その隙を狙って彼の後頭部に目掛けて矢が放たれた。それを確認したミナは咄嗟にシデを突き飛ばして矢を回避させるが、その際にミナの腕に鏃が掠ってしまう。
「くぅっ!?」
「ミナさん!?大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫……掠っただけだから」
「ミナの姉ちゃん!!くそ、よくもやったな!!全員捕まえてやる!!」
「駄目だコネコ、迂闊に離れるな!!」
ミナが腕を抑えると慌ててドリスが傷口の確認を行い、それを見たコネコは我慢できずに攻撃を仕掛けた者を探し出そうとするが、デブリが抑える。ドリスは皆の傷口の確認を行い、鏃に毒物が仕込まれていないのかを心配した。
一方でシデの方は自分を庇うために怪我をしたミナを見ていたたまれない気持ちに陥り、自分のせいで彼女が怪我を負った事に申し訳なく思う。一方でデブリの方は忙しなく動き回る敵の姿を確認して動揺を隠せない。
「こいつら、普通の人間じゃないぞ……この身のこなし、間違いなく獣人族だ!!」
「それだけじゃない、こいつらの気配が感じにくい……きっとあたしのような暗殺者か、盗賊の称号を持ってるんだ!!」
「という事は……この方達は盗賊ギルドで間違いないという事ですわね」
ドリスは周囲の様子を伺い、周囲を囲むように忙しなく動き回る黒装束の集団を確認して苛立つ。急いでレナの元へ向かわなければならないのにこれだけの称号持ちの人間を相手にするとなると時間が掛かってしまう。
しかも彼等が放つ矢には痺れ薬でも仕込まれていたのか、掠り傷を折ったミナは膝を崩し、ドリスへともたれ掛かる。彼女は自分の身体の異変に戸惑い、謝罪する。
「うぅっ……ごめん、身体が上手く動けない……!?」
「ミナさん!!しっかりして下さい!!」
「くそ、お前らよくも……うわわっ!?」
ミナの様子を見てデブリが怒りを抱くが、そんな彼に対して盗賊達はボーガンを構え、矢を放つ。慌ててデブリは放たれた矢を交わすが、囲まれた状態で一度に複数の矢を射抜かれ続けられたら必ず死角が生まれてしまい、そこを狙って矢を射抜かれたら避ける事は出来ない。
この場を逃げようにも完全に囲まれているために逃げきれず、反撃を行おうにも相手の数の方が多いため、1人を狙おうとしたら他の9人の邪魔が入ってしまう。恐ろしい程の連携力を誇り、このままでは全員がミナのように痺れ薬が仕込まれた矢の餌食と化す。
「くそ、こいつらちょこまかと逃げ回りやがって……うわっ!?」
「話している余裕もありませんわね……氷塊!!」
「くそっ……どうしようもないのか!?」
「み、皆……僕に構わないで、早く逃げて……!!」
身体が痺れて碌に動けないミナを守るためにコネコ達は奮闘するが、その様子を見ていたシデは自分の杖に取り付けられた複数の火属性の魔石に視線を向け、悔し気な表情を浮かべながらも提案を行う。
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