第591話 魔導士VS黄金冒険者

「ええい、何をしておるか!!ここまで来て躊躇したというのか、それほど師が信じられんというのか!!」

「「……?」」



一向にフライングシャーク号の船内に存在する弟子たちが魔石を起爆させない事にサブは怒りを抱くが、その様子を見ていたゴロウとジオは疑問を抱く。


このままでは計画が失敗してしまうと考えたサブは仕方なく、弟子たちが動かないのであれば自分一人でも船を破壊しようと魔剣を構える。正直に言えば年老いてからは魔法剣を発動させるのも辛いのだが、弟子たちが動かなければサブがやるしかない。



「フレイム!!」

「ぐあっ!?」

「な、なんという……!?」



サブが魔剣を掲げた瞬間、刀身の部分に火属性の魔力が宿り、やがて全体が火炎の剣へと変化する。サブが魔力を送り込むほどに火炎の規模は広がり、やがては「火柱」の如く燃え盛ると、船に目掛けて振り下ろそうとした。



(……許せ、お前たちよ)



攻撃を仕掛ける寸前、船内に残っているであろう弟子達に対してサブは一瞬だか攻撃を躊躇した。このまま剣を振り下ろせば中の弟子達も無事では済まないだろうが、それでもサブは意を決したように振り下ろす。


フライングシャーク号に魔掛けて巨大な火炎の刃が振り下ろされようとした瞬間、ゴロウとジオはサブを止めようとした。しかし、その前に二人の背後から足音が鳴り響く。



「スネイク!!」

「なっ!?」



刃が振り下ろされようとした寸前、銀色に光り輝く鎖が出現し、サブが振り下ろそうとした刃の刀身に絡みつく。それはまるで蛇のようにまとわりつき、刃を振り下ろす事が出来ずにサブの腕が止まる。



「な、何だこれは……銀の鎖!?」

「ふうっ……どうやら間に合ったようだな」

「お主は……ルイ!?」

「る、ルイだと……」

「あの金色の隼の……!?」



サブは後方を振り返ると、いつの間にか汗だくの状態のルイが存在する事に気づき、彼女の腕にはサブの魔剣を止めた銀色の鎖が握りしめられていた。その様子を見てサブは自分の魔法を止めたのがルイだとしって焦りを抱く。


只の鎖ならば魔剣から放たれる炎によって溶かされてもおかしくはないが、どういうわけなのかルイが所有する「銀の鎖」は溶ける様子もなく、それどころか蛇のように巻き付いて刃から離れない。無理やりにサブは引き剥がそうとするが、ルイは鎖を手放す事はなく、逆に引き寄せる。



「はあっ!!」

「ぐおっ……舐めるな、小娘がっ!!」

「うわっ……!?」



サブは魔剣を奪い取ろうとするルイに対して負けじと魔剣を引き寄せると、意外に力があってルイの方が逆に引きずられてしまう。老人とは思えぬ力にルイは焦りを抱くが、すぐに彼女は反対の腕を自分の胸元に伸ばして支援魔法を発動させる。



筋力強化ストレングス!!」

「ぬおおっ!?」

「やった!!」

「魔剣を奪い取ったか!?」



ルイの身体が光り輝いた瞬間、彼女の筋力が瞬間的に強化されるとサブの魔剣を遂に奪い取る事に成功した。術者の手元から離れた瞬間に魔剣から放出されていた火炎が消え去ると、ルイは魔剣を受け止めて鎖を外す。


自分の武器を奪われたサブは忌々し気な表情を浮かべて小杖を取り出し、それをルイに向けて構える。彼は魔法剣士の称号を持つが、同時に砲撃魔導士に砲撃魔法も扱える。即座に危険を察したルイは鎖を巻き付けた腕を構えると、防御に転じた。



「ファイアボール!!」

「シールド!!」

「うおっ!?」

「ぐうっ!?」



サブが放ったファイアボールはかつてレナが戦ったムノーやシデが扱った魔法とはレベルが違い、彼が生み出した火球の大きさは5メートル以上は存在した。直撃すればロックゴーレムだろうと焼き尽くす程の火力はあるだろうが、その攻撃に対してルイは銀の鎖を再び放つ。


右腕に巻き付いていた鎖は円を描く軌道で回転すると、円形状の盾と化してファイアボールを直撃した。普通ならば衝撃を受けれ爆散するはずだが、鎖の盾に抑えつけられた火球は爆発する事もなく、それどころか勢いを落としていく。



「馬鹿なっ!?」

「はああっ!!」



ルイは鎖を掴むと、そのまま上空へ向けて振り払う。その結果、火球は軌道を誘導されるように変更し、天井へ衝突する。結果として爆発して天井が吹き飛び、煙に包まれる。


天井から落ちてきた瓦礫に落ちないように気を付けながらルイとサブは見上げると、天井には大きな穴が形成されていた。仮に魔法耐性を持つ魔術師だろうと直撃していれば無事では済まなかっただろうが、どうにか攻撃を受け流す事に成功したルイは冷や汗を拭う。



「ふうっ……流石は帝国二番目の魔導士、恐ろしい威力でしたよ」

「くっ……貴様、何をした!!」

「僕自身は別に何も特別なことをしていませんよ。ただ、この「銀鎖シルバーチェーン」のお陰で命拾いしましたがね」

「魔道具か……!!」



サブは怒りの表情を抱きながらもルイが身に付けている鎖を見て冷や汗を流し、自分の魔法を防げる鎖を見て只の道具ではない事を見抜く。ここでサブはルイが身に付けている銀の鎖の先端部分に何かが取り付けてある事に気づき、目を見開く。

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