第575話 閑話《ドリスの特訓》

――時は少し遡り、金色の隼の冒険者としてドリスは連日のように依頼を引き受け、誰よりも早く達成していた。既に彼女は13件の依頼を果たし、今日は既に2件の依頼を終えていた。


どうして彼女が依頼の達成率が早いのかというと、単純に言えばドリスが魔術師である事が関係している。冒険者の中でも魔術師は特に人気が高く、彼等は主に魔物の討伐系の依頼で活躍する事が多い。


並の剣士や戦士では相手にならない中型から大型の魔物が現れたとしても、魔術師ならば強力な魔法で対抗できる。ドリスの場合は砲撃魔法は扱えないが、合成魔術を扱えるため、大抵の魔物は一人でも対応できた。



「フゴォオオッ!!」

氷盾シールド

「プギャッ!?」



王都の外の草原にて出現したボアに対してドリスは氷塊の魔法を発動させ、大きな盾を作り出す。正面から突っ込んできたボアは氷の大盾に衝突して自分が逆に衝撃を受けてしまい、足元をふらつかせる。


ボアは魔物の中では危険度はゴブリンやオークよりは高いが、あまり知能は高くないので基本的に突進以外に攻撃手段はなく、突進に気を付けさえすればドリスの敵ではない。ボアが怯んでいる隙に彼女は両手を横に広げ、新たな魔法を発動させた。



氷腕アーム!!」

「フガァッ……!?」



ボアの視界にドリスの傍に巨人族の腕よりも巨大な氷塊の「腕鉄甲」が出現すると、そのまま拳を握りしめてボアの肉体に叩きつけられる。



氷拳フィスト!!」

「ブギィイイイッ!?」



上空から拳を叩きつけられたボアは悲鳴を上げ、そのまま気絶してしまったのかぴくぴくと身体を痙攣させながら動かなくなる。その様子を確認したドリスは依頼書の内容を確認して額の汗を拭う。



「ふうっ……これでこの依頼書も達成ですわ」



今回の依頼の内容はボアの討伐ではなく、ボアの新鮮な肉が欲しいという王都内のとある飲食店の料理人からの依頼だった。近いうちに大切な客人を招くので出来る限り質の良い肉料理を披露するため、依頼書にはボアの肉以外にオークや赤毛熊などの魔物の肉も仕入れるよう記されていた。


難易度は高いがその分に報酬も高く、評価点も高いのでドリスは率先して自分が依頼を引き受けた。他の人間では短時間の間にこの3体の魔物を仕留めて回収するのは難しく、ドリスが引き受ける事になった。



「さてと、後はこのボアを運び出すだけですけど……はあ、こんな時にレナさんがいてくれたら楽でしたのに」



ドリスは仕留めたボアをどのように運ぶのかを悩み、依頼の内容はボアの新鮮な肉の回収なのでこの場で彼女が解体を行い、必要分の肉を回収するという手段もある。しかし、もしもレナがこの場に存在すればボアを抱えて王都にまで楽々と運び出せるだろう。


仕留めたボアを見てドリスは困った表情を浮かべ、このまま必要な分だけ肉を回収して持ち帰ったとしても、残りの死骸は置いていかなければならない。その場合は草原の魔物たちに食い散らかされるだろうが、その事に関してはドリスは少し不満を抱く。自分が折角倒した魔物だというのに素材を全て回収できない事に悔しく思った。



(どうにか私の魔法でこのボアを運び出す事が出来ればいいのですが……そうだ!!氷塊の魔法で大きな円盤を作り出してその上にボアを乗せる事が出来れば……いや、無理ですわ)




氷塊の魔法の応用で大型の円盤を作り出してボアを運ぶ方法を考えたドリスだったが、生憎と彼女は作り出した氷塊を乗り物として扱うほどの技術は身に付けておらず、残念ながら諦めるしかない。



(悔しいですわ、私がもっと初級魔法を扱いこなす事が出来たらこんな事にはならなかったのに……ここは一刻も早く、氷塊の魔法を完璧に扱えるようにならなければ!!)



ドリスの理想としてはレナのように自分の魔法を使いこなし、最終的には自分の氷で作り出した乗り物を乗りこなして移動できるようになりたかった。常々、レナが付与魔法で操作するスケボを見ていて彼女は憧れを抱き、自分もレナのように空を飛び回りたいと思っていた。


しかし、現在のドリスの氷塊の魔法ではレナのような芸当は出来ず、レナの場合も最初の頃は付与魔法で物体を自由に動かすのにも苦労していた。何年も練習を続けた事で今現在は繊細な動作も行えるようになったが、生憎と今のドリスにはゆっくりと鍛錬を行う時間はない。



「はあっ……私も空を飛んでみたいですわ。レナさんのように……ん?」



ドリスの視界に空を飛ぶ小鳥の姿が入り、翼を広げて自由に飛び回る小鳥の姿を見てドリスは目を見開き、ある事を思い出す。



「そ、そうですわ……この手がありましたわ!!」



自由に空を飛び回る小鳥を見てドリスは新しい魔法の発想が思い浮かび、早速実践するために彼女は依頼を急いで終わらせようとした――




――この翌日、彼女は依頼の合間に草原に赴いてはとある魔法の練習を行うようになった。





※没案


ドリス「そうですわ!!右手に火球、左手に氷塊、この状態で合成魔術を行い、プラスとマイナスのエネルギーを組み合わせれば消滅呪文が出来そうな予感……はぐっ!?」( ゚Д゚)!?

カタナヅキ「あ、危なかった……この作品が終わるところだったぜ」(;´・ω・)ノトンカチ

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