第524話 盗賊ギルドへの怒り
――アイーシャの話を聞き終えた後、レナとドリスは部屋を退出して後の事はルイに任せて皆の元へ戻る。内容が内容だけに無暗に他の人間には話さないようにとルイからは注意されたが、それでも仲間達だけには話を伝える事にした。
コネコ達の元に戻ったレナは盗み聞きされないように人気のない場所を探し、現在は誰も使っていない訓練場にて皆に話を伝える。全員がまさか自分たちが倒したゴブリンキングを他の人間が操っていたという事実に戸惑う。
「ご、ゴブリンキングを従えていた!?そんな事が出来るのか!?」
「デブリ君、声が大きい……もっと静かに話して」
「わ、悪い……でも、本当なのかその話?」
「信じられない……ただのゴブリンならともかく、ゴブリンキングを操るなんて……」
話を聞き終えたデブリ達は動揺を隠せず、特にロウガの一件でゴブリンキングの打倒のために全力を尽くしたナオはある疑問を抱く。
「ちょ、ちょっと待ってください!!その話が事実だとしても、ロウガさんの時はどうして襲われたんですか?もしもその男が冒険者を捕まえるように指示を出していたとしたら、どうしてロウガさんの冒険者集団の仲間の人たちだけ殺されたんですか?」
「え?それは……」
「恐らくですが、その時は既に捕まえる必要はなかったのではないでしょうか?」
アイーシャ達は自分たちが捕まっていた時期は把握していなかったが、恐らくは彼女たちが捕まった後、訪れた魔物使いと思われる青年が「冒険者を殺せ」という指示を出した後にロウガ達はゴブリンキングと交戦したと考えられた。
しかし、その場合だとゴブリンキングを従えていた人間は随分と前に七影のゴエモンと共に大迷宮へ立ち寄っていた事になり、当然だが煉瓦の大迷宮が封鎖される前の時期に大迷宮へ訪れる事はなくなった事になる。相当前からその青年はゴブリンキングを従えていた事が発覚し、ある意味ではロウガの仲間が死んだ原因の一端はその青年が関わっている事になる。
「その男がゴブリンキングに冒険者を殺せと指示を出していなければ……ロウガさんの仲間が殺される事もなかったと思いますか?」
「それは……どうだろう」
「確かにその可能性もありますけど……」
「どっちにしろ、そいつのせいでたくさんの冒険者がゴブリンキングに攫われて、殺されたようなもんだろ?」
「……反吐が出るな、くそっ!!」
話を聞き終えたデブリはその青年のゴエモンの事を思うだけで我慢できず、訓練場に受け付けられている樹木に張り手を食らわせる。あまりの樹木は揺れ動き、危うく折れるところだった。
レナもアイーシャの話を聞いていて心中は穏やかではなく、七影のゴエモンが傍に居たという事はその青年も盗賊ギルドの関係者である事は間違いない。また、ゴエモンとの話し方から察するに二人の関係は対等のように思えるため、仮にも七影の一角であるゴエモンと対等の立場だとしたらレナが顔を合わせた事がない七影の一人の可能性もある。
(盗賊ギルド……やっぱり奴等は許せない)
今までにレナの命を何度も狙い、王都で問題を起こしてきた。現在は王都の警備が高まった事で大人しくしてたと思っていたが、冒険者の失踪事件に関与していたと知ってレナは今まで以上に盗賊ギルドの存在を許せなくなった。
(どれだけ多くの人を傷つければ気が済むんだ……くそっ!!)
盗賊ギルドのせいでゴブリンキングによって多くの人間の命が奪われ、それでいながら自分たちは危険な目に遭いそうになれば身を潜める。その非道なやり方にレナは気に入らず、改めて盗賊ギルドへの怒りを抱く。
だが、現状では盗賊ギルドが関わっているのならばこれ以上にレナ達には何もできない。後はルイやマドウに任せる事しか出来ず、結局のところはレナ達だけでは盗賊ギルドを相手にする事が出来ない。敵が組織である以上はレナ達だけでは対抗する事は出来ず、ここから先はヒトノ国に対処してもらうしかなかった。
「兄ちゃん、これからあたし達はどうすればいいんだ?」
「……とりあえずはルイさんから身体を休めるように言われてるよ。火竜の件も解決していないし、ひとまずは待機するように言われている」
「待機か……くそ、火竜の件だけでも厄介なのに盗賊ギルドまで動き出すなんて」
「それにしてもゴエモンと一緒にいたといいう男性は何者なのでしょうか……ゴブリンキングを操れるなんて普通ではありませんわ」
「確か、実験とか言ってたらしいけど……ゴブリンキングを使って自分の能力を確かめていたみたいに言ってたよね」
「そんな事のためにどれだけの冒険者を苦しめたというんですか……絶対に許せない!!」
「うわっ!?」
ナオは怒りのあまりに地面を強く踏みつけ、軽い振動が地面に走ってコネコが慌てふためく。ナオとしては師であるロウガの仲間の仇を討てたと思ったのに実はゴブリンキングを裏で操る別の存在がいたという事実に我慢ならない。
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