第518話 帰還後

――無事にゴブリンキングの討伐を果たし、さらに捕まっていた女性冒険者を救出して戻ってきたレナ達は即座にルイに迎えられ、クランハウスの方へと移動した。


連れてきた3人の女性冒険者に関しては本来は彼女たちが所属する冒険者ギルドの方へ戻す方が先なのだが、彼女たちから直接話を聞きたかったルイはギルドに連絡を伝えてクランハウスへと案内する。


無事に任務を成し遂げてゴブリンキングの討伐を果たしたレナ達に対してロウガは喜び、特に彼の指導を受けていたナオがゴブリンキングの足を骨折させたという話を聞いたときは非常に驚いた。



「お前ら……本当によくやったな、本当に……ありがとう」

「ろ、ロウガさん……顔を上げてください」



ロウガは人目を気にせずに泣き崩れ、レナ達に対して何度も感謝の言葉を告げた。そんな彼を一応は弟子であるナオは放置できず、他の冒険者も交えて彼を別の場所に移動させる。一方でデブリの方も迎えに来たダンゾウに気づくと鼻息を鳴らして拳を突き出す。



「押忍っ!!」

「ふっ……」



デブリの突き出した拳にダンゾウは無言で拳を向けると、そのまま拳同士を突き合わせる。それだけで満足したのかダンゾウはその場を離れ、ミナとコネコの方もカツの元に向かう。



『どうだった?俺との訓練は役に立ったか?』

「はい、凄く役立ちました!!」

「カツのおっさんを倒すために考えた技、結局はゴブリンキングには使わなかったけど……でも、死霊騎士を相手には役だったぜ。ありがとうな」

『そうかそうか、それは良かったな……え、死霊騎士?』



それぞれが訓練の面倒を見てくれた相手に報告を行う途中、ルイは3人の女性冒険者を連れて自分の部屋へと向かう。レナとドリスもその後に続くが、ここでヒリンはここに残る事を告げる。



「ふうっ……まだ身体がだるいから、私はここで休ませてもらうわ~」

「それでしたら医療室まで案内しますが……」

「じゃあ、お願いするわ~」



ヒリンの言葉を聞いて副団長のイルミナがクランハウス内の医療室の方へ案内を行い、結果的にはクランハウスの団長室にはルイ、レナ、ドリス、そして連れてきたアイーシャ、アルン、ノルンの3人だけが入った。


本来ならば長い間捕まって酷い扱いを受けていたはずであろう3人に対して休息も取らせずに話を聞くのは問題だが、本人たちが話し合いを望んだのでルイは3人を自分の部屋まで案内する。そして最初に質問したのは3人の正体からだった。



「それで……まず、話を伺う前にこちらの質問に答えて欲しい。君たちは「緑の騎士」で間違いないのか?」

「……はい、そうです」

「緑の騎士?」

「私たちの冒険者集団の名前ですぅっ」

「ちなみに考えたのは私よ!!どう、格好いい名前でしょう?」

「う、うん……そうだね」

「なかなかのセンスだとは思いますわ」



捕まった3人の冒険者は「緑の騎士」という名前で活動を行っていたらしく、命名したのは末の妹であるノルンだという。


名付けた張本人は本気で自分達の冒険者集団パーティ名が格好いいと思っているらしいが、他の二人は曖昧な表情を浮かべていた。そんな彼等の反応を見てルイは疑問を抱く。



「緑の騎士か……確か、王都の外から訪れた白銀級の冒険者集団だったはずだね」

「えっ!?私たちの事を知っていたんですか?」

「もちろんだとも、君たちは有名だからね」

「まさか、あの金色の隼にまで私たちの名前を知っているなんて……」

「ふふ、当然よ」



緑の騎士の名前を金色の隼の団長であるルイが知っていた事に上の姉二人は驚き、末の妹のノルンは誇らしげな表情を浮かべるが、そんな3人に対してルイは言いにくそうに答える。



「君たちの噂はよく耳にしているよ。騎士という名前なのに3人とも称号が騎士ではなく、魔術師だからね」

「えっ!?騎士じゃないんですか!?」

「緑の騎士なのに騎士の称号を持った人がいないんですの!?」

「う、うるさいわね!!どうでもいいでしょう、そんな事……!!」

「ああ、だから私は反対したんだ。名前の響きがいいからって、騎士でもないのにk騎士を名乗るなんて……」

「恥ずかしいですぅっ……」



緑の騎士という名前でありながらアイーシャもアルンもノルンも騎士の称号を持ち合わせておらず、そもそも3人とも前衛職ではない。だから世間の間では魔術師なのに騎士を名乗る変わった冒険者達だと認識されていた。


だが、実力に関しては確かで王都の外部から訪れた冒険者の中では一番の実力を誇る事は間違いなく、彼女たちは短期間で銅級から白銀級冒険者にまで上り詰めた。煉瓦の大迷宮に関してもゴブリンキングに捕まるまでは何度か挑んでは生還していた。しかし、彼女たちの正体が森人族だと知る人間はレナ達以外には存在せず、そもそもどうして森人族である彼女たちが人間に変装してまで冒険者を行っていたのかをルイは問う。

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