第516話 森人族(エルフ)
「良かった……皆生きてるよ!!」
「もう大丈夫ですわ、安心して下さい」
「あ、ああっ……」
「た、助かったの、私達……?」
「う、ああああっ……」
檻の出入口を破壊して中に捕まっていた女性冒険者達にミナとドリスが近寄ると、彼女たちは涙を流して遂に救援が来てくれたことを喜ぶ。全員が装備を剥がされ、下着だけの状態であり、痛めつけられていたのか傷跡もあった。
彼女たちを見て同じ女性であるミナとドリスは放置する事が出来ず、レナも見ていられずに荷物の中からマントを取り出して渡す。掴まっていた女性の数は3人であり、大迷宮内で行方不明になった冒険者達で間違いないらしく、ゴブリンキングに捕らえられてからずっと彼女たちは檻の中で過ごしていたという。
「大丈夫ですか?ちゃんと話す事は出来ますか?」
「え、ええっ……ありがとう、落ち着いたわ」
水筒を渡して水を飲ませると彼女たちは生気を取り戻したように顔色が良くなり、安堵した表情を浮かべる。そんな彼女たちを見て余程酷い扱いを受けていたと判断する一方、ここでドリスはある事に気づく。
「あの……もしかして貴方達は
「森人族?」
「えっ!?」
ドリスは捕まっていた女性たちの耳元が妙に細長い事に気づき、よくよく観察すると3人とも金髪で碧眼だった。現在は身体が薄汚れているが、3人とも随分と容姿が優れており、恐らくは身体を清めれば目を見張るような美貌を取り戻すだろう。
森人族という言葉にレナは首を傾げ、あまり聞きなれない単語だったがミナの方は心当たりがあるらしく驚いた表情を浮かべる。その一方で3人の女性は苦笑いを浮かべながらドリスの質問に答えた。
「ええ、その通りよ……私達は森人族よ」
「やっぱり!!会えて光栄ですわ、私は森人族を見るのは初めてですの!!」
「え、そんなに有名なの?」
「レナ君、知らないの!?あの森人族だよ!?」
「な、名前ぐらいしか……」
森人族の事をよく知らないレナはドリスとミナの驚きように戸惑うが、そんな彼に対してドリスは若干興奮した様子で話しかける。
「森人族とはこの世界で最も魔法の知識の精通し、緑の自然をこよなく愛する存在として知れ渡っていますわ。森人族として生まれた者は誰もが美しい容姿を持ち合わせ、人間の3倍は長く生きるといわれる滅多な事では人里に訪れる事がないという伝説の種族として語り継がれていますわ!!」
「へえっ……そんなに有名なんだ」
「それは……ちょっと大げさよ。私たちは別に全員が容姿に優れているわけでもないし、そもそも人里に訪れるときは人の姿に偽装しているだけよ」
ドリスの説明を聞いていた森人族の3人は苦笑いを浮かべ、本人たちによると別に森人族という存在はそれほど珍しいわけでもなく、人間と大差ない存在だという。
より正確に言えば人間の視点から見れば森人族は容姿が整っているように見えるが、森人族にとっては自分たちがそれほど特別に優れた存在だとは思ってはいないらしい。
「改めて紹介させてもらうわね、私の名前はアイーシャ……この二人は妹のアルンとノルンよ」
「アルンです」
「ノルンよ」
一番背の高い女性の名前がアイーシャというらしく、その次に一番背が低いのがアルン、最後に髪の毛が一番長い女性がノルンだと自己紹介した。レナ達は3人の名前を聞いた後、ここで疑問を抱く。
「あら、おかしいですわね……私たち、行方不明者の名簿を確認しているのですが、貴方達の名前は確かに記憶にあるのですが、森人族の冒険者集団だったとは記載されていなかったと思いますが……」
「それは……そうでしょうね」
「私たち、人間に変装して冒険者になったんです~」
「さっきも言ったでしょう?森人族は人に化けて人里に訪れると……私たちは人間の冒険者のふりをしてここへやってきたのよ」
「えっ!?」
3人は心の余裕を取り戻したのか話し方も落ち着き、自分たちが人間に変装して冒険者活動を行っていた事を語る。3人の言葉にレナ達は動揺を隠せず、身分や種族を偽装して冒険者になる事は当然だが禁止されている。
もしも3人が地上に戻ったとしても、冒険者ギルド側から種族を詐称して冒険者になったことを咎められるのは間違いない。最悪の場合、冒険者の身分を取り消されるかもしれないが、もうこの3人にとってはそんな事はどうでもいいらしく、一刻も早くこの場所から離れたいという。
「ねえ、お願いよ……私達を外の世界へ連れていってほしいの。もう私も妹たちも限界なのよ。こんな場所に閉じ込められて、豚の餌のような食事を食べて生き延びる生活なんて耐え切れない……」
「そ、そんな酷い生活を……」
「お願いします、私たちに出来ることな何でもするから助けてください……」
「あっ……で、でもエッチな事は駄目よ!?そういうのは結婚を約束した人にしかしないんだからね!!」
「いや……しませんよそんな事」
姉二人は助けてもらうためならば何でもすると言い出す一方、末の妹のノルンは頬を赤らめてちらちらとレナに視線を向ける。だが、別に頼まれなくともレナ達は彼女たちを救うつもりだった。
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