第514話 人質救出
「グガァアアアアッ!!」
「なっ!?あ、あいつ……檻ごと投げるつもりか!?」
自分に迫ってくるレナ達を見てゴブリンキングは傍に置いてある女性冒険者たちを閉じ込めた檻に手を伸ばすと、片腕で担ぎ上げて勢いよく振りぬく。中に閉じ込められていた女性たちは悲鳴を上げ、一方で迫りくる檻に対してレナ達も目を見開く。
迫りくる檻に対してレナは皆を守るために瞬間加速を発動させて飛び出すと、左手を前に構えて準備を行う。そのレナの行為を見て仲間達は驚きの声を上げる。
「レナ君!?」
「いったい何をっ!?」
「大丈夫、信じて!!」
『いやぁああああっ!?』
檻の中で女性たちの悲鳴を耳にしたレナは両手を構え、下手に反発や衝撃解放などの魔法で檻を吹き飛ばせば中の人間の命が危うい。それならばレナは覚悟を決め、もしも失敗すれば自分も檻の中の女性たちも命を落としかねない方法だが、仲間と檻の中の女性を助けるためにレナは左手だけを伸ばし、付与魔法の発動のタイミングを計る。
「
檻がレナの目の前にまで迫り、左手に触れる寸前でレナは付与魔法を発動させ、飛んできた檻全体を地属性の魔力で覆いこむ。その結果、付与魔法を施された檻の勢いは完全に止まり、檻はそのまま衝撃で砕かれる事もなくゆっくりと地面に下される。
「えっ……」
「な、何が起きたの……」
「まだ、生きてる……?」
「くっ……成功した」
檻の中に存在した生気が感じられなかった女性たちだが、死に直面して意識を取り戻したらしく、彼女たちは自分たちが乗っている檻が壊れる事もなく止まった事に戸惑う。一方でレナの方は無事に彼女たちを救い出せたことに安堵した。
――レナが行ったのは「関節付与」の応用であり、事前に左腕に付与魔法を発動させ、檻を受け止める。その瞬間に左手に帯びた魔力を瞬時に檻に流し込む事で重力を操作して檻の勢いを完全に殺して停止させる。
一瞬でタイミングを間違えると吹き飛ばされていたのはレナで間違いなく、その場合は檻の中に入っていた女性たちも無事ではなかっただろう。だが、これで人質に利用されそうな女性冒険者達の救出には成功した。
「す、凄いレナ君……本当に凄い」
「し、信じられませんわ……」
「流石は兄ちゃん……うわっ!?」
「グガァアアアアッ!1」
レナの行為に仲間達が褒めたたえようとしたが、ゴブリンキングの方は檻を受け止めたレナに対して怒りの咆哮を放ち、真っ先にレナを標的と定めて駆け出す。その光景を見たレナはこのままでは檻の中の女性冒険者達が危ないと判断すると、腕を振って檻を飛ばす。
「すいません、離れて!!」
『きゃああああっ!?』
檻が浮かび上がるとそのまま壁際の咆哮に目掛けて一直線に移動を行い、中の女性たちは悲鳴を上げた。レナは彼女たちに申し訳ない気持ちを抱きながらも今は構っていられず、迫りくるゴブリンキングに向けて右腕の闘拳を構えた。
「四重強化……衝撃解放!!」
「ガアッ……!?」
「体勢を崩した!!今だ、畳みかけるぞっ!!」
「おうっ!!」
ゴブリンキングが拳を構えると、咄嗟にレナは闘拳に付与させた重力の魔力を解放して衝撃波を生み出す。結果としてはゴブリンキングが振りかざした拳はレナの闘拳から繰り出された衝撃波によって弾かれ、ゴブリンキングは大きくのけぞってしまう。
体勢を崩したゴブリンキングに目掛けてデブリは突進を行い、右足に組み付く。その一方でナオとコネコも動き、二人は左足に向けて攻撃を繰り出す。
「突脚!!」
「飛燕脚!!」
「グギャッ!?」
左足の脛の部分に向けて二人は蹴りを繰り出す。但し、ナオの場合は空手の前蹴りのように足刀を叩き込む技であった。この技はロウガから教わった戦技でもあり、その破壊力は彼女の「崩拳」に匹敵するか、あるいはそれを上回る。一方でコネコの方は加速した状態で踵を叩きつけた。
二人の攻撃を受けたゴブリンキングは悲鳴を上げ、間違いなく左足の骨は折れて動きを封じられる。更にデブリはゴブリンキングの右足を握りしめると、渾身の鯖折りで右足を締め上げようとした。
「うおおおおっ!!」
「ガアアッ……!?」
人間とは思えないほどの膂力で自分の右足を締め上げてくるデブリにゴブリンキングは目を見開き、咄嗟に払いのけようとするがデブリは離れる様子はない。更にここでドリスも動き出して彼女は両手を重ねて魔法を発動させる。
「氷鎖!!」
「グギィッ!?」
ドリスが両手を突き出した瞬間、氷の鎖が誕生してゴブリンキングの胴体に絡みつき、そのまま鎖は上半身に蛇のように絡みついて締め上げていく。左足だけではなく、胴体まで拘束されたゴブリンキングは必死に引き剥がそうとしたが、その前にミナが槍を構えた状態で迫った。
「螺旋槍!!」
「ガアアアッ!?」
空中に跳躍したミナはゴブリンキングの顔面に向けて槍を放ち、そのまま左目を貫く。高速回転した槍の刃が眼球を一瞬にして潰した後、更に奥までねじ込まれて遂には脳内にまで達した。
ゴブリンキングはミナの槍によって頭を貫かれた結果、力を失ったように倒れ込み、そのまま動かなくなった。その光景を見てデブリとドリスはゴブリンキングの拘束を解くと、レナ達は倒れたゴブリンキングの姿を見て自分たちが勝利した事を知る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます