第512話 大乱戦
――ギィアアアアアアッ!!
天井から落下してきたゴブリン亜種の大群を前にして最初に動いたのはドリスであり、彼女は両手を広げると火球を作り上げ、更に風圧の初級魔法を発動させる事で合成魔術を発動させる。
その結果、ドリスの手元には荒ぶる火炎が誕生し、彼女は投擲を行うかのように自分の手元に作り出した火炎を次々と放つ。
「火炎流槍!!」
『ギャアアアッ!?』
ドリスは上空へ向けて連続で火炎槍を放ち、投擲された火炎の槍は弧を描いて接近しようとしてきたゴブリン亜種を焼き尽くす。一度の攻撃で数匹のゴブリンを巻き込み、次々とゴブリン達は火炎に飲み込まれるが、それでも全てのゴブリンを焼き尽くすには至らない。
「ギィイイッ!!」
「近寄るなっ!!」
「ギャウッ!?」
魔法を放つドリスに近付こうとした個体に対してレナは魔銃を構え、的確に頭部を打ち抜く。火炎流槍から逃れたゴブリンを魔銃の弾丸で近づけさせないようにするが、ドリスと違ってレナの魔銃の場合は弾丸を撃ち尽くすと補充の必要があり、その隙を付いて左右に分かれたゴブリンの集団が迫る。
ドリスに近付こうとしたゴブリンの集団に対してコネコとナオが駆け出し、二人は次々とゴブリンを蹴り飛ばす。特にコネコの場合はバトルブーツの特性を生かして加速し、次々とゴブリン達を蹴散らす。
「近づくんじゃねえよっ!!」
「ドリスには手を出させない!!」
「ギャアッ!?」
「ギエエッ!?」
「ギャヒンッ!?」
十分に加速した状態ならば小柄で非力なコネコだろうとゴブリンを倒す程度の威力の蹴りを引き出し、ナオの方も体力が少ないながらに親友を守るために身体に鞭を打ってゴブリンを倒す。その一方で他の仲間達も奮戦し、ミナとデブリも奮闘する。
ミナは槍を手元で回転させながら次々と迫りくるゴブリンを吹き飛ばし、ドリスとレナを守護した。そんな彼女の様子を見ながらデブリの方も張り手を繰り出してゴブリンを殴り飛ばす。
「回転!!」
「「「ギャウッ!?」」」
「どすこぉいっ!!」
「ギャフゥッ!?」
「ギギィッ!?」
体力が切れかかっているとはいえ、デブリの攻撃を受けたゴブリンは絶命は免れず、しかも噛みついたり爪で攻撃を仕掛けようとしてもデブリの肉厚な肉体には通じない。
「ギィアッ!!」
「そんな鈍ら……僕の肉体に傷がつけると思っているのかぁっ!?」
「ギャギャッ……!?」
寂れた手斧を構えたゴブリンがデブリの大きな腹部に目掛けて振り下ろすが、あろうことかデブリは避ける事もせずに正面から受け止め、逆に攻撃を仕掛けたゴブリンの手斧の柄の方が砕けてしまう。流石に刃の部分を破壊する事は出来なかったが、服越しにとはいえ、まともに刃物を受けたはずのデブリの肉体は傷一つなかった。
一見するだけでは肥満体系に見えるデブリだが、その肉体は究極的なまでに筋肉と脂肪を組み合わせた奇跡の肉体を誇り、柔軟性だけではなく耐久性も優れていた。体力が万全ならばデブリはミノタウロスだろうがブロックゴーレムの攻撃にも耐えきれるという自信もある。
「これでは埒があきませんわね!!ならば……回転氷刃!!」
『ギィアアアアアッ!?』
ドリスは火炎槍で攻撃を続ける事に限界を感じると、今度は戦法を変えて巨大な円盤状の氷塊を作り出し、まるで丸鋸のように高速回転させて次々とゴブリンを切り裂く。その様子を見てレナも先ほど取り出した魔石を闘拳に握りしめると、付与魔法を発動させて握りつぶす。
「
『ギギィッ……!?』
レナは右腕を上空へ掲げると、そのまま跳躍を行う。その光景を十数匹のゴブリンが目を奪われると、レナは地上へ向けて拳を振り下ろし、闘拳の掌で破壊した雷属性の魔力を一気に拡散させた。
「
『ギャアアアアッ!?』
「グガァッ……!?」
闘拳の拳が地面に衝突した瞬間、闘拳に纏っていた地属性と雷属性の魔力が一気に拡散し、酷範囲に電流が広がった。その結果、十数匹のゴブリンが一瞬で感電して黒焦げと化して倒れると、その光景を見ていたゴブリンキングも目を見開く。
貴重な魔石を消費したがゴブリンを一気に排除したレナは続けて水属性の魔石を取り出し、今度は籠手を装備した左手で掴む。その様子を見たゴブリンキングは配下のゴブリン達にレナが次の行動に移す前に標的するように命じた。
「ガアアアアッ!!」
『ッ……ギギィッ!!』
ゴブリンキングの声を耳にしたゴブリン亜種の大群はレナに標的を変更させ、まだ残っていた全てのゴブリンがレナの元へ向かう。ゴブリンの異変に気付いたレナは左手の魔石だけでは足りないと判断すると、右腕に風属性の魔石を握りしめた。
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