第495話 ドリスの異変
「ど、ドリスさん!?」
「うっ……」
「これは……イルミナ、すぐに魔力回復薬を!!」
「は、はい!!」
鼻血を出したドリスはやがて力を失うように倒れこみ、慌ててレナがドリスを抱き上げた。それを見てルイはイルミナに魔力回復薬を用意するように指示をだすと、ドリスを横にさせて様子を伺う。
ドリスは声を掛けられて目隠しを解くと、彼女は頭を抑えながらもどうにか身体を置き上げた。その様子を見てレナは安堵するが、そんな彼女にイルミナは魔力回復薬を渡す。
「どうぞ、飲んでください。気分が楽になるはずです」
「あ、ありがとうございます……うっ、まずっ!?」
「悪いが我慢してくれ、市販の物と違って僕たちが使用するのは効能が強い分、味は悪いんだ」
「は、はい……うぷっ」
イルミナに渡された魔力回復薬を口に含んだドリスは危うく吐きそうになるが、どうにか飲み干す。その結果、彼女の顔色もよくなった。その様子を見てレナは安心するが、いったい何が起きたのかをドリスに尋ねた。
「ドリスさん、本当に大丈夫?何があったの?」
「いえ、それが私にも分かりませんわ……最初は魔力を感じ取ろうと頑張っていたのですけど、だんだんと意識が遠くなっていき、いつの間にか身体が倒れていました」
「団長、これはもしかすると……」
「ああ、そうなのかもしれない」
ドリスの話を聞いてルイとイルミナは合点がいったような表情を浮かべ、二人にドリスの身に何が起きたのかをレナは問いただす。
「あの、ドリスさんに何が起きたんですか?」
「……恐らく、ドリス君は僕と同じように魔力感知の長時間の維持が出来ないんだ。だから無理に魔力を感じ取ろうとして肉体に負担が掛かったんだ」
「もしも治療が遅れていたら大変な事になっていました。ドリスさん、今後はもう魔力感知を迂闊に使うのは駄目ですよ」
「わ、分かりましたわ……」
二人の言葉に頭を抑えながらもドリスは承諾し、どうにかレナの肩を借りて起き上がった。この様子を見てこれ以上の魔力感知の練習は不可能だと判断したルイはレナにドリスを連れて家に帰るように促した。
「ひとまず、ドリス君は彼女の家に連れて行って休ませた方がいい。もしも明日の探索も支障があるようならば明日の探索は中止にした方がいい。他に皆にも伝えておいてくれるか?」
「はい、分かりました」
「め、面目ないですわ……」
「いえ、ドリスさんに落ち度はありません。むしろ、魔力感知の危険性を伝えていなかった我々の落ち度です」
「イルミナの言う通りだ……とにかく、今日のところは安静にしてくれ。馬車も用意しよう、今は一刻も早く身体を休ませるんだ」
「あ、大丈夫です。俺が送り届け方が早いと思うので……」
馬車を用意するよりもレナのスケボで送り届けた方が早く、ひとまずはドリスをレナは抱き抱えると、しっかりと落ちないようにルイとイルミナに頭を下げて部屋を退出した。
ドリスを抱えながらレナは外へ向かう途中、彼女の顔色を伺う。その際にドリスと視線が合い、こんな状況ながらにドリスは笑みを浮かべる。
「ふふふっ……殿方にこんな形で密着する事になるなんて少々恥ずかしいですわね。それも相手がレナさんとなるとコネコさんとミナさんとナオに嫉妬されそうですわ」
「え?」
「まあ、冗談はさておき……レナさん、私は明日の探索に参加しますわ」
「いや、でも……無理は駄目だよ」
「大丈夫です、この程度の疲労など1日もあればどうにかなります……それに私としては喜ばずにはいられませんわ。この魔力感知という技術、必ず私は使いこないしてみせます」
「えっ……」
「先ほどは倒れてしまいましたが、意識を失う寸前に確かに私は感じましたわ……あのお方の魔力を」
「あの御方?」
レナはドリスの言葉を聞いて驚き、今現在は自分に抱えられなければ動く事も出来ないドリスが探索に参加するのは明らかに無理に思えた。しかし、ドリスの方は自信に満ちた表情を浮かべ、レナに微笑む。
ドリスの言葉にレナは戸惑い、彼女の言い方から察するに誰かの魔力を感じ取ったようだが、それはルイとイルミナ以外の人物らしい。レナに抱えられなければならない状態に陥りながらもドリスは魔力感知を身に付けた事は後悔しておらず、むしろより魔力感知を極める事を誓う。
「見ていてくださいレナさん……私は必ずやこの技術を極めて見せますわ――」
――その後、コネコ達と合流したレナはドリスを家に送り込んだ後、彼女は今日一日は家で休養を取る事になった。コネコとデブリはドリスの約束していたケーキに関しては後日ご馳走になることになった。流石に事情が事情だけに二人も文句を言う事は出来ず、ナオはドリスが心配なので彼女の看病を行うために残り、他の者たちは時刻が昼時なので昼食を取るために適当な店で食事を取ることにした。
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