第484話 デブリ、コネコ、ミナの成長
『グッギッギッギッ……!!』
「ふん……僕を食べるつもりか?」
「あらあら……困ったわね~」
4体のゴブリンに取り囲まれたデブリとヒリンは背中を合わせ、二人はお互いの服に手を伸ばす。その姿を見たゴブリン達は本能的に嫌な予感を覚え、先に動く。
両手に短剣を構えたゴブリンが2匹、手斧を構えたゴブリンが2匹、前後左右から同時へ襲い掛かる。だが、それに対してデブリとヒリンは逃げる動作も見せず、逆に二人は飛び掛かってきたゴブリンへ向けて同時に掌底を繰り出す。
「ふんっ!!」
『グギャッ!?』
「とおっ」
『ギィアッ!?』
デブリから強烈な突っ張りを受けたゴブリンは吹き飛び、ヒリンの場合は顔面を掴むと可愛らしい掛け声をあげながら投げ飛ばす。その圧倒的な力に4体は迷宮の壁に叩きつけられ、血反吐を吐く。
想像以上の腕力を誇る二人の攻撃にゴブリン達は床に崩れ落ちそうになるが、どうにか踏みとどまって起き上がった。だが、身体がふらついてまともに動けもしない状態だった。
「ふうっ……どすこいっ!!」
「さてと、そろそろ私も……本気で暴れてやろうかぁっ!?」
『ギギィッ!?』
二人は同時に上着を脱ぐとデブリは筋肉と脂肪が合わさった肉体、一方でヒリンの方は引き締まった一切の脂肪が存在しない筋肉美を露にすると、自分たちに襲い掛かってきたゴブリンに突っ込む。
「諸手突きぃっ!!」
『グゲェッ……!?』
「潰れろぉっ!!」
『ッ――!?』
デブリは突進するのと同時にゴブリンの胸元に目掛けて強烈な突っ張りを食らわせ、今度は壁ではなく天井に叩きつける勢いで吹き飛ばす。その一方でヒリンは笑い声をあげながら2体のゴブリンを掴むと、そのままゴブリンの頭部同士を叩きつけて押し潰す。
断末魔の悲鳴を上げる暇もなく2体のゴブリンは互いの頭部が衝突して中身が飛び散り、ヒリンの身体がゴブリンの血で染まる。その地をヒリンは舌で舐めとり、すぐに血反吐を地面に吐く。
「ぺっ……雑魚がっ」
「お前、その姿だと本当に態度が悪いな……」
「ああん?なんか文句あんのかデブちん?」
「で、デブちんだと!?」
態度が一変したヒリンにデブリが冷や汗を流すが、そんな彼にヒリンは不機嫌そうに尋ね返す。そんな彼女にデブリは文句を告げようとしたとき、二人の間に高速で動く物体が通り抜けた。
「うおおおおっ!!」
「うわっ!?」
「ああっ!?」
デブリとヒリンの間を通り抜けたのはバトルブーツによって加速したコネコらしく、彼女は広場の中を駆け回りながら加速していく。その様子を見て他の者たちは驚くが、コネコはある程度まで加速すると移動方法を跳躍へと切り替えていく。
コネコは攻撃を行う際、ある程度加速しなければどんな魔物だろうと損傷を与える事は出来なかった。まだ身体が未発達で年齢的にも身体を鍛えたとしてもコネコの腕力では魔物との戦闘では通じない。だが、幼少期から走る事だけは得意だった彼女の脚力は情人離れしており、更に風属性の魔石の力で速度を上昇させる。
これまでのコネコは全力で走り回ってある程度の加速を行ってから相手に攻撃を仕掛けていた。しかし、この攻撃方法の場合だと加速するための助走、そして攻撃を行った際に勢いが殺され、次の攻撃を行うためには再び加速しなければならないという弱点もあった。だが、カツとの修行でコネコはその弱点を補う戦術を身に着ける。
「おらぉっ!!」
「アガァッ!?」
1体のゴブリンの頭部に向けてコネコはドロップキックの要領で叩きつけると、攻撃を行ったゴブリンの首がへし折れた。しかし、その際にコネコの加速が止まってしまい、それを見た他のゴブリンが動き出す。
「ギギィッ!!」
「シャアッ!!」
「おっと、捕まるかよ!!」
左右から飛び掛かってきたゴブリンに対してコネコは笑みを浮かべると、両足のバトルブーツに装着した風属性の魔石が光り輝き、足の裏から衝撃波を放つ。その結果、コネコは空中で加速すると天井近くまで上昇し、体勢を反転させて逆に天井を足場にして飛び掛かってきたゴブリンの1体の頭上に踵を叩きつけた。
「必殺!!兜落としぃっ!!」
「ギャアッ……!?」
「ギィアッ!?」
「せいやぁっ!!」
「アガァッ!?」
相棒のゴブリンがコネコによって頭を踏みつぶされた光景を見て、もう片方のゴブリンは目を見開くが、そんなゴブリンの頭部に向けて少し離れた場所に存在したミナが槍を放つ。ゴブリンの開け放たれた口に的確にミナの投擲した槍が突き刺さり、そのまま壁際にまで吹き飛ぶ。この三日の間、ミナは離れた相手にも攻撃できるように「投擲技術」を磨き、その成果によって10メートル以内の相手ならば確実に命中させる技術を手に入れた。
殆どのゴブリンがミナ達の活躍によって倒される中、レナは残された3体のゴブリンに壁際まで追い詰められていた。3体は他のゴブリン達と異なり、その手には人間から奪った武器ではなく、恐らくは自分たちが倒した魔物の素材から作り出したと思われる武器を手にしていた。
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