第483話 ナオの修行の成果
「ギギィッ!!」
「うわっ!?こいつっ……調子に乗るなっ!!」
「ギャッ!?」
短剣を突き刺そうとしてきたゴブリンに対してコネコは咄嗟に刃を回避して蹴り飛ばすが、続けて別の個体が攻撃を仕掛けたコネコの足首に狙いを定めて刃を振り下ろす。
「シャアッ!!」
「おわっ!?」
「コネコちゃん!!」
咄嗟にミナがコネコの身体を引いたお陰で刃は回避できたが、危うく自分の繰り出した足が切られそうになったコネコは警戒心を高め、ミナと背中合わせの状態に陥る。その一方でドリスを守るためにナオは3体のゴブリンの前に立ちふさがると、ゴブリン達は手斧、手槍、短刀を構えて彼女に飛び掛かろうとした。
「ギィイッ!!」
「ギャンッ!!」
「ギャギャッ!!」
「……回し受けっ!!」
それぞれが頭上、左右から攻撃を仕掛けようとするが、それに対してナオは両腕を円を描くように高速に動かすと、突き出された刃物を素手で弾き返す。防御用に特化戦技でもあり、攻撃を正面から受けるのではなく、円の動きを利用して受け流す戦技によって3体のゴブリンは弾かれた様に吹き飛ばされる。
自分たちの攻撃を素手で振り払ったナオに対して3体のゴブリンは目を見開くが、すぐに彼女の足元に視線を向け、笑みを浮かべて同時に襲い掛かった。
『シャアアッ!!』
「なっ!?」
「ナオ!?」
咄嗟にナオは跳躍を行う事で繰り出された刃を回避する事に成功するが、その様子を見てゴブリン達はナオの「回し受け」が足元まで防げない事を見抜く。そして攻撃を彼女の足元に集中させ、追い詰めてる。
瞬時に自分の技の性質を見抜き、適格に弱点を突いてきたゴブリン達に対してナオは焦りを抱くが、ここで引けばドリスを狙われるかもしれず、彼女はゴブリン達を打ち倒すために右足を繰り出す。
「連脚!!」
「ギエッ!?」
「ギャアッ!?」
「グゲェッ!?」
拘束に繰り出された前蹴りによってゴブリン達の身体が吹き飛び、そのまま地面へと叩きつけられる。ミナの「乱れ突き」の足技で再現したような戦技だが、ナオの場合は足刀を叩きこむように蹴りだすため、貫通力に関しては本物の槍には及ばないが威力は高い。
しかし、攻撃を仕掛けた方のナオはゴブリン達に攻撃を当てる際に違和感を覚え、当てた時の感触から彼女はゴブリン達が攻撃を受ける寸前に後ろに飛んでいた事を見抜く。そのせいで完全には威力を発揮できず、足元をふらつかせながらも3体のゴブリンは起き上がった。
『ギギギッ……!!』
「そ、そんなっ!?ナオの攻撃を受けて立ち上がるなんて……あり得ませんわ!!」
「……こいつら、前に戦ったホブゴブリンよりも強い」
ナオは先日にイチノを襲撃した多数のホブゴブリンと戦っているが、目の前に立つ3体のゴブリン亜種はイチノで対戦したホブゴブリンよりも強いと判断した。ホブゴブリンよりは体格は小さいが非常に身軽でナオの攻撃にも反応する優れた反射神経を持ち、極めつけにナオの戦技の弱点を一瞬で見抜く高い知性を誇る。
ホブゴブリンよりも厄介な力を持つゴブリン亜種に対してナオはこのままではまずいと思い、確実に敵を仕留める攻撃を繰り出さなければゴブリン亜種は倒せないと判断した。そこで彼女はロウガに教わった戦技を試すため、再び接近してきたゴブリン達に自分の利き足である右足を繰り出す。
『ギシャシャシャッ!!』
「……飛燕連脚!!」
先ほどの攻撃を受けきった事で過信したのか、再度真正面から突進してきた3体のゴブリン亜種に対してナオは前蹴りを繰り出す。先ほどと同じ攻撃を仕掛けてたナオだが、違いがあるとすれば速度が段違いに上昇しており、今度はゴブリン達も反応できずにまともに喰らってしまう。
『ッ――!?』
「うおおおっ!!」
あまりにも強烈な衝撃を受けたゴブリン達は腹部を陥没させ、そのまま反対側の壁にまで叩きつけられた。速度を上昇させる事で威力が格段に高まり、結果としてナオは3体のゴブリンを一度に蹴り飛ばす。
だが、攻撃を繰り出したナオの方も苦痛の表情を浮かべ、右足を抑えて左足の膝を崩してしまう。この三日間の間にロウガに教わった戦技の一つだが、まだ彼女には完全には扱えず、反動が大きすぎて耐え切れなかった。そんなナオの姿を見て、他のゴブリンが短剣を構えながら接近してきた。
「ギィイイッ!!」
「ぐぅっ……!?」
「させませんわ!!
「ウギャッ!?」
動けないナオに近づこうとしたゴブリンに対してドリスは咄嗟に指先を構えると、掌程の大きさの氷塊を生み出し、小規模ながらの螺旋氷弾を生み出して膝を打ち抜く。ゴブリンは悲鳴を上げて地面に倒れこみ、その間にナオがドリスの元に駆けつける。
「ナオ、無茶はいけませんわ!!」
「ありがとう、ドリス……けど、大丈夫。これぐらいなら平気だよ」
どうにかドリスの手を借りてナオは立ち上がると、周囲の状況を伺う。既に他の仲間達も戦闘に突入し、複数のゴブリンがデブリの元に迫っていた。
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