第480話 修行の成果
王都の中心に存在する3つの大迷宮へと繋がる魔法陣、その中でも最も危険度が高く、挑戦者の死亡率が高い「煉瓦」の大迷宮に繋がる魔法陣の前には金色の隼に所属する冒険者たちが集う。
団長であるルイ、副団長のイルミナ、そして二人と同じく黄金級冒険者のカツとダンゾウの姿もあり、他にも金級冒険者が数名と白銀級冒険者が多数存在した。彼等の前にはこの三日間、修行を乗り越えて強くなったレナ達が存在し、今回の任務のためにレナ達は準備を整えていた。
「いいかい、もしも危険だと判断したらすぐに転移石を使用して戻ってくるんだよ。僕たちはここで待機しているから、不慮の事態に陥ったらすぐに転移石を使用して戻ってくるように気を付けてくれ」
「探索の時間は3時間、それ以上の時間が経過しても戻ってこない場合は不慮の事態が起きたと判断し、私たちも大迷宮に入って皆さんの救助に専念します。どうかお気を付けて……」
「はい、ありがとうございます」
「期待して待っていてほしいですわ」
「うふふ~」
ルイとイルミナはレナとドリスに肩を掴んで事前に立てた作戦の内容を再確認し、その間に他の仲間達も指導してくれた冒険者と話し合う。
『まあ、お前らなら大丈夫だろ。ミナ、コネコ、しっかりとそこの坊主の役に立てよ』
「はい!!」
「言われなくても分かってるよ!!」
「デブリ、油断するな。必ず仲間を守れ」
「押忍!!」
「ナオ……俺の事は気にするな、無理に仇を討とうとしなくてもいい。危険だと判断したらすぐに逃げるんだぞ」
「師匠……分かりました」
「私も頑張るわ~」
カツはミナとコネコ、ダンゾウはデブリ、ロウガはナオに最後に勇気付けると、煉瓦の大迷宮に繋がる魔法陣の前にレナ達は集まった。全員の顔つきが緊張が滲んでおり、前回の時ほどに高揚感はなかった。
これから挑むのは最も危険な大迷宮であると同時に冒険者を狙うゴブリンキングという驚異が待ち構えていた。以前にレナ達は大迷宮の主であるミノタウロスを撃破したことがあるが、今回の敵はミノタウロス以上の脅威と断定した方がいい。
(今回は魔石弾は使えない……だけど、これがある)
今回の探索にはレナは魔石弾を所持しておらず、その代わりとなる武器は用意していた。そして全員の心の準備が整ったのを確認すると、お互いに頷いて転移魔法陣の発動を願う。
「兵士さん、お願いしますわ」
「……武運を祈る」
魔法陣を発動させるため、台座の前に兵士が手を添えると、魔法陣が光り輝き、やがて光の柱と化してレナ達の身体を飲み込んだ――
――数か月ぶりに煉瓦の大迷宮へと訪れたレナ達は、相も変わらず煉瓦で構成された迷宮の風景を前にして自分たちが遂に大迷宮へ訪れた事を実感した。
「なんか……気のせいか、前に来た時よりも緊張する」
「当然の事ですわ。この迷宮の何処かに私たちを狙う明確な敵が存在するのですから」
「く、来るなら来いっ……僕がぶっ飛ばしてやる!!」
「デブリ君、落ち着いてください。下手に大声を上げると他の魔物にも気づかれますわ」
「……静かだね」
「ここが大迷宮……思っていたよりも静かな場所なんですね~」
レナ達は周囲の状況を警戒し、目に見える範囲では魔物の姿は見えない。だが、迷路という構造上、身を隠せる場所はいくらでも存在し、常に奇襲されるかもしれないという警戒を怠る事は出来ない。
しかし、一か所に留まり続けても目当てのゴブリンキングと遭遇できる可能性は低く、意を決してレナ達は探索を開始した。念のために全員が転移石を所持しており、さらにコネコが気配感知の技能を発動させて常に周囲の様子を伺いながら移動を行う。
「コネコちゃん、何か感じる?」
「う~ん……近くには何もいないと思うけど、なんか変な感じがするな。嫌な予感が止まらないというか……こういう時にシノの姉ちゃんもいてくれたら心強かったのにな」
「そうだね」
感知能力の類に関してはコネコよりもシノの方が優れており、彼女が同行していれば非常に心強かったが、残念ながら今回は頼りにはできない。だが、歩いてから数分が経過した頃にコネコは強い気配を感じ取った。
「……っ!?そこの曲がり角から何かが近づいてくる!!たぶん、強い奴だ!!」
「ご、ゴブリンキングか!?」
「皆さん、戦闘準備を整えてくださいましっ!!」
コネコの言葉に全員が身構えると、通路の曲がり角から確かに大きな足音が鳴り響き、やがて全身が緑色の皮膚に覆われた巨人が出現した。レナ達は到着早々にゴブリンキングを発見してしまったのかと思ったが、その緑色の巨人は何故か既に傷だらけの状態だった。
「フガァッ……!?」
「えっ!?こ、こいつは……」
「前に何処かで……思い出しましたわ!!レナさんが餌を与えたトロールですわ!?」
通路に出現したのは前回にレナ達が大迷宮に訪れた時、レナが餌を与えたお礼に自分が所持していた大剣を渡したトロールで間違いなかった。一体何があったのかトロールは全身にひどい傷を負っており、既に意識も失いかけていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます