第459話 お世話になります
――時刻は流れ、夕方を迎えるとレナはコネコと一緒に荷物をまとめてダリルの屋敷を後にする。屋敷の玄関にてダリルとシノが見送り、しばらくの間はこちらの屋敷に戻る事もないのでレナはダリルに別れの挨拶を行う。
最も別れるといってもあくまでもしばらくの間に過ぎず、ミナが寂しくないように二人も一時的に世話になるだけなので気が向いたときは屋敷に戻る事もあるだろう。
「じゃあ、ダリルさん。しばらくの間は離れる事になりますけど、何かあったらすぐに連絡ください」
「おう、お前等も気を付けろよ。金色の隼さんに迷惑をかけるんじゃないぞ」
「へへ、大丈夫だって……こう見えてもあたし達だってもう立派な冒険者だからな」
「私は用心棒の仕事があるからあんまりいけないけど、もしも用事がある時はこの子を送るから安心して」
「ウォンッ!!」
シノの側には彼女が飼育している忍犬ならぬ忍狼のクロも存在した。普段は姿を見せないクロだが、今後はレナがダリル達と連絡を取るために役立ってもらう。また、近所の人は驚かせないようにクロという名前の首輪も装着していた。
「久しぶりだねクロ君、元気だった?」
「クゥ~ンッ」
「よしよし」
「こ、こっちにすり寄るなよ……あたしは犬が苦手なんだよ。子供の頃に大きな犬に追い回されてトラウマなんだよ」
「それよりもコネコ、改造が完了したからこれを渡しておいてとムクチに頼まれた」
「あっ!?あたしのバトルブーツじゃん!!やった、ありがとなシノの姉ちゃん!!」
「こらこら、こんな所で靴を履き替えるんじゃない!?」
レナはクロの頭を撫でるとコネコは犬(狼)が苦手なのか怯えるようにレナの後ろに隠れる。そんな彼女にシノは頭を撫でやると、コネコにある物を渡す。
バトルブーツを渡されたコネコは嬉しそうに受け取り、その場で嬉しそうに自分が履いていた靴を脱いでバトルブーツに履き直す。その様子を見てダリルはまるで父親のように注意するが、コネコは新しいバトルブーツに嬉しそうに足を振り翳す。
「へへ、前のよりもぴったりくる!!それに新しい魔石も装着してるし……うん、気に入った!!」
「持ち帰った魔物の素材も使用しているから前よりも頑丈になったと言ってた。だけど、今度からは風属性の魔石の方は代金を取ると言われた」
「うえっ……おっちゃんにツケといてくれよ」
「何で俺が払うんだよ!?ちゃんとお前のお小遣いから引いておくからな!!」
ちなみにレナとコネコは引き取られてからダリルが面倒を見ており、レナの場合はロックゴーレムの狩猟でミスリル鉱石を定期的に回収してもらっているので給金は支払っている。一方でコネコの方はレナの仕事を偶に手伝う事はあるが、基本的には子供らしく近所の子供と遊ぶ事も多い。なので仕事に関してはせいぜい家の手伝い程度しかしていない。
しかし、これからはコネコも本格的に金色の隼の団員として働く事になるため、正式に給金を受け取れるようになれる。そうなればバトルブーツに必要な魔石の代金などすぐに稼げると考えた彼女は早く性能を試したいとばかりにレナを引っ張っていく。
「兄ちゃん、さっさと行こうぜ!!じゃあな、ダリルのおっちゃんにシノの姉ちゃん。偶には帰ってくるからな~!!」
「あ、待ってよコネコ!!じゃあ、ダリルさん、それにシノ……行ってきます」
「おう、行ってこい」
「またね」
レナとコネコが立ち去ると、その後姿をダリルは少し寂しそうな表情に視線を向け、別にもう会えないというわけではないが面倒を見ていた子供達が自分の元を離れていく事に、まるで子離れを経験した父親のような気分を味わう。
「……うう、あいつら本当に大丈夫だろうな?上手くやっていけるといいんだが……」
「大丈夫、二人なら問題ない」
「クゥ~ンッ?」
若干涙ぐんでいるダリルにシノは肩を掴み、そんな彼にクロは不思議そうに顔を見上げた――
――改めてレナ達は金色の隼のクランハウスへと辿り着くと、そこには先に大荷物を抱えたミナが存在し、彼女は一足先にクランハウスへと向かっていた。ミナは荷物が多かったのでミ何度かダリルの屋敷を往復して荷物を運び込み、ようやく最後の荷物を抱えて辿り着いたらしい。
荷物運びならばレナの付与魔法で一気に運ぶ手もあったが、ミナは迷惑をかけられないのと男の子であるレナには少し見られたくない荷物(下着の類)もあるので自力で荷物を運んでいた。ミナはクランハウスの玄関の前で二人の姿を発見すると、元気そうに腕を振って迎え入れる
「あ、レナく~ん!!コネコちゃ~ん!!戻って来たんだね!!」
「よう、ミナの姉ちゃん……って、何だそれ!?」
「どうしたのその荷物……そんなのあったっけ?」
「えへへ、これはね。さっきアリアさんが来たんだけど僕が忘れていた荷物を運んできてもらったんだ」
ミナの背中には大きなぬいぐるみが存在し、その大きさはコネコも中に隠れられるのではないかという程の大きなぬいぐるみだった。どうやらミナのジオの屋敷に忘れていた私物らしく、白毛の狼を想像させる外見をしていた。
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