第455話 付与魔法の新たな可能性

「いきます……電撃!!」

「おおっ!?」

「こ、これは……!?」



イルミナが気合の入れた声で魔法を発動した瞬間、彼女の両手から電流が迸る。通常は初級魔法は初級魔術師以外の者が扱う場合は威力は各段に落ちるのだが、黄金級冒険者でもあるイルミナの場合だと電圧も高いらしく、付与魔法を発動させたレナの闘拳に電流が迸る。


すぐに彼女は魔法を解除して離れると、残されたのは闘拳に纏った電流のみであり、レナは驚いた表情を浮かべて電流を帯びた闘拳を見つめた。闘拳を動かしてみても電流が身体に流れ込む様子はなく、見た限りでは闘拳その物に帯電しているというよりは闘拳の周りに電流が走っているように見えた。



「……うん、特に大丈夫です。腕が痺れる様子もありません」

「これは驚いたね……まさか、他人の発動した魔力を取り込むなんて」

「信じられません……本当にこんな事があるなんて」



レナの地属性の付与魔法が雷属性の魔法を取り込んだ事にルイとイルミナも心底驚ている様子であり、事情を察していたイルミナでさえも動揺を隠せない。魔術師としては優秀な二人だけにレナの「付与魔法」の効能を思い知らされて驚きを隠せなかった。



「これはもしかしたら僕達はとんでもない信実に辿り着いたかもしれない……まさか、付与魔術師の付与魔法がこんな事を出来るなんて……」

「いえ、まだ付与魔法が他の魔法を取り組めるとは限りません。極化にまで至ったレナ様の付与魔法だからこその性質かもしれません」

「ふむ、確かに結論を急ぐ事はないな。だが、研究は続けるべきだ。レナ君、悪いが今度は別の属性の魔法も試してくれるかい?」

「えっ……別の属性ですか?」



ルイの言葉にレナは嫌な予感を覚えるが、ここで丁度イルミナの魔法の効果が切れたのか電流が消えてしまい、それを確認したルイは今度はドリスの方に視線を向ける。



「ドリス君と言ったね、悪いけど今度は君の初級魔法でレナ君に協力して貰えるかい?」

「えっ!?私がですのっ!?」

「頼む、これはもしかしたら世紀の大発見かもしれないんだ!!もしも付与魔法が他の魔法を取り込む力が持っているとなれば、付与魔術師の評価は一変するんだ!!」

「そ、そういわれましても……レナさんを危険な目に遭わせるかもしれませんし」

「大丈夫だ、いざという時は僕達が必ず怪我を負う前に止めて見せる!!レナ君も協力してくれ、もしかしたら君のお陰で蔑まれていた付与魔術師の称号の人達を救えるかもしれないんだ!!」

「ええっと……そ、そこまで言うのなら」



レナも付与魔術師の評価が一変するという言葉を聞いては黙っていられず、言われた通りに協力を行う。自分と同じように付与魔術師という理由だけで冷遇される人間がいなくなるかもしれないと聞けば断る事は出来ない。


ドリスは戸惑いながらもレナが承諾するのならば断わり切れず、彼女は比較的に危険は少ない風圧の魔法を利用してレナの闘拳に近づけさせる事にした。



「で、では……行きますわよレナさん」

「うん、いいよ……」

「風圧!!」



ドリスは先ほどのイルミナのように両手でレナの腕を覆いこむと、そのまま風属性の初級魔法を発動させた。その結果、ドリスの両手に渦巻状の風の魔力が発生した瞬間、まるでレナの闘拳に飲み込まれるように風の魔力が流れ込み、闘拳に竜巻の如く纏わる。



「うわぁっ!?」

「な、何ですのっ!?」

「まさか、雷属性だけではなく風属性も取り込んだのか!?」

「凄い……!?」

「いやいやいや、危ないってこれ!?」



闘拳に小規模の竜巻が纏わりつき、慌ててレナは腕を上げると竜巻の強風が部屋の中の人間達に襲いかかる。その際にスカートだったイルミナとドリスは慌ててスカートが捲れないように抑えた。



「きゃっ!?」

「いやんっ!?は、ハレンチですわっ!?」

「ご、ごめん……でも、消し方が分からないんだよ!?」



レナは慌てて腕を振っても竜巻が解除される様子はなく、恐らくはドリスの魔法の効果が切れるまでは消す事が出来ないのだろう。仕方がないとばかりにルイは杖を取り出すと、レナに忠告する。



「レナ君、その状態で付与魔法を解除するんだ!!」

「付与魔法をですか!?でも、そんな事をしたら……」

「大丈夫だ、僕を信じてくれ!!」

「は、はい!!」



ルイの言葉を聞いてレナは腕を伸ばした状態で付与魔法を解除した瞬間、闘拳に纏っていた紅色の魔力が消え去り、同時に闘拳の周囲に渦巻いていた竜巻が拡散しかけようとした時、ルイは右手を伸ばす。


レナの腕に伸ばした彼女の右手の人差し指には、無色の水晶玉を装着された指輪が嵌められており、拡散した風属性の魔力を吸い込む。その結果、水晶玉の内部に風属性の魔力の渦巻が誕生すると、それを確認したルイは額の汗を拭う。



「ふうっ……危なかった。危うく、うちの副団長の可愛い猫さんパンツがいたいけな少年たちに晒されるところだった」

「団長!!変な事を吹き込まないでください、だいたいそんな可愛い絵柄のパンツなんて履いてませんから!!」

「わ、私も危うくレナさんとデブリ君に黒のショーツを見られるところでしたわ」

「ドリス、何を言ってるの!?はしたないよ!!」



ドリスの天然のボケに慌ててナオが突っ込みを行い、部屋の中で男の子であるレナとデブリは頬を赤く染める。

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