第448話 クランとギルドの違い
「何を言ってるんだコネコ君、君も白銀級に昇格を果たしたんだよ。本来は面倒な手続きや試験を受けずに昇格出来たのだから喜ぶべきところじゃないのかい?」
「そうだけどさ~あんちゃんと一緒の階級というのがな~」
「おい、何で僕と一緒なのが不満みたいな事を言ってるんだ!?言っておくけど、ここにいる全員が白銀級に昇格したんだからな!!」
「まあまあ、落ち着きたまえ……さて、ここからは本題に入るが君達に軽く
ルイはイルミナの肩に手を置いて彼女に説明を任せると、簡単にギルドとクランの違いを説明した。言われてみればレナ達も両者の違いはよく知らず、この際にしっかりと理解する事にした。
「それでは私の方から説明します。まず、皆さんはギルドとクランがどのように違うのか知っていますか?」
「聞いた話によると、ギルドは冒険者を管理する組織、一方でクランは冒険者同士が集まった組織だとお母様から聞いた事がありますわ」
「はい、その認識で間違っていません。ですが、この二つの具体的な違いは分かりますか?」
「いえ、そこまでは……言われてみれば名前はよく聞くのに確かによく知りませんでした」
ギルドの場合は冒険者の管理、クランの場合は冒険者が集まった組織だとはドリスも理解していたが、この二つの組織が具体的にどのように違うのかまでは知らなかった。
冒険者であるレナもコネコも二人が所属していたギルドではクランは存在しなかったので所属した経験もなく、冒険者でありながらどのような存在なのかも知らない。そこでイルミナは感嘆にギルドとクランの解説を行う。
「ギルドとクランの大きな違いがあるとすれば仕事の報酬の分配が大きく違います。例えば冒険者ギルドで発注されている依頼は実は手数料で3割ほど金額が引かれているのは知っていますか?」
「えっ!?そうだったのか!?知らなかった……」
「ギルドも維持するためにもお金が必要になるのだから手数料を取るのは当たり前ですわね」
「そうです。冒険者の行う依頼の3割、更に国からの依頼があった場合は冒険者を優先させる契約を結んでいるため、ギルドはヒトノ国側からも多額の援助を受けています。しかし、これがクランの場合だと報酬に関しては大きく異なります」
「どうしてですか?」
「いいですか、ギルドの場合は経営を維持するために報酬の3割は手数料として支払わなければなりません。しかし、クランの場合は依頼人がギルドを介さずに直接仕事の依頼料を支払います。ですが、クランによって異なりますが報酬から惹かれる手数料がギルドよりも低いのが当たり前です。場合によっては報酬の9割以上を得られる事もあります」
「えっ!?じゃあ、ギルドで依頼を受けるよりも稼げるかもしれないんですか!?」
イルミナの発言に全員が驚き、クランの場合は依頼の報酬の手数料は必要最低限に留まり、依頼を成功すれば殆どの報酬を得られる。但し、ギルドと違ってクランで仕事を引き受ける場合、失敗した場合は自己責任になるという。
「但し、クランで依頼を引き受けて失敗した場合、仕事の損失は自己責任でとる場合が多いです。ギルドの場合は依頼が失敗しても冒険者ギルドが対応してくれますが、クランの場合は依頼を引き受けた本人が責任を負うのが通例です」
「つまり、報酬が多く得られる分だけ失敗すれば責任も大きくなる」
「そういう事です。また、ギルドに所属する冒険者はもしも仕事中に不慮の事故で死亡した場合、遺族に冒険者の遺品と退職金が支払われますが、クランで引き受けた仕事の場合はギルド側は退職金は支払いません。ギルド側が発注した依頼ならばともかく、クランとして引き受けた依頼はギルド側には手数料が発生していませんので自己責任という形で処理されます。なので退職金の支払いはありませんが、代わりにクラン側から遺族に弔慰金が支払われます」
「あの、もしもクランに所属したら冒険者ギルドの仕事は受けられないんですか?」
「いいえ、そんな事はありません。クランが取り扱う仕事の中には冒険者ギルド側から発注を頼んだ仕事もあります。これらの仕事の場合はあくまでもギルド側の依頼として引き受けるので報酬は手数料を引かれていますが……」
「なるほど……」
ギルドとクランの違いを説明を聞いていたレナ達は、思っていたよりも両者に違いがある事を理解する。クランの場合は依頼を果たせば報酬をほぼ独り占めできるが、失敗した場合の責任が大きく、またギルドの依頼は手数料が3割も引かれるが、その分に冒険者の保証はしっかりとしていた。
話を聞く限りではギルドもクランもどちらもメリットとデメリットが存在し、一概にもどちらが優れているとは言えない。クランの依頼は失敗すればデメリットは大きいが、成功すれば多額の報酬も期待できるハイリスクハイリターン方式、一方でギルドの方は失敗してもギルド側が責任を取るが、その分に成功報酬の3割を払う必要があるローリスクローリタン方式である。
一般人の間ではギルドもクランも冒険者で運営していると考えれば似たような組織に想えるが、実際の所は仕事の方針に関しては正反対であり、一獲千金を狙うのならばクラン、地道に安全に稼ぎたいのならばギルドに所属するのが無難だと言えた。
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