第447話 金色の隼の証

――その後、レナ達はクランマスターの部屋に案内されると、まずはロウガの謝罪を受ける。彼が自分の勝手な判断で試験を行った事は事実であるため、その場で土下座して謝罪を行う。



「すまない!!お前達の実力を認めず、試験なんて理不尽な事をさせて本当に申し訳ない!!」

「……やっぱりおかしいと思ってたんだよ。推薦状をわざわざ渡したくせに試験なんて受けさせるなんて、どうかしてると思ったぞ」

「でも、ロウガさんの気持ちは分かりますわ。金色の隼に所属する人たちから見れば私達のような子供がいきなり団員になるなんて、正直に言えば信じられない話でしょうし……」

「別にあたしは怒ってないぞ。試験といっても、あたしにとってはどうって事なかったしな」

「でも、レナ君の試験は流石にどうかと思いましたけど……」

「い、いや……カツの件は俺も予想外と言うか、それにそこの坊主も承諾しただろ?」

「まあまあ、彼も謝ってる事だし許してくれないか?」

「……それを団長が言いますか?」



レナ達はロウガの行為に対して不満はあったが、別に全員が本気で怒っているわけではなく、最後のレナの試験に関しては理不尽にも思えるがレナ本人が承諾した以上は文句は言えない。


仮にレナ達が逆の立場であれば見知らぬ他人が急に自分達の仲間になると聞かされても納得は出来ず、いったいどんな人物なのかを確かめようとするだろう。なのでレナ達はロウガの行為は攻めるつもりはないが、イルミナはそれでも謝罪を行う。



「訓練場にて試験が行われている事は私達も把握していました。しかし、止めるのが遅れてしまい、申し訳ありません」

「イルミナは悪くないよ、責任があるとしたら僕の方さ。どうしても君達の今の実力を計りたくてロウガを止めずに試験を受けさせてしまった。気を悪くしたのなら謝る、どうか許してほしい」

「態度がなんか偉そうで気に入らない、もっとちゃんと謝ってほしい」

「……ぼ、僕が悪かった。許してくれないかな?」

「許してほしいじゃ駄目、ちゃんと謝る」

「ご、ごめんなさい……これでいいかな?」

「分かった、許す」

「シノ、お前……結構容赦ないな」



シノの発言にイルミナは頭を下げてしっかりと謝罪すると、不満を抱いていた者達も仕方がなく許す事にした。だが、今後はこのような事が起きないようにしっかりと注意しておく。


謝罪を行ってレナ達の許しを得ると、ここから本題になるのでルイは真剣な表情を浮かべて彼女は机の中から箱を取り出し、レナ達の前に差し出す。そして箱を開くと、そこには銀色に光り輝く腕輪が存在した。



「これが金色の隼に所属する冒険者の証となる腕輪だ。遠慮なく、受け取ってくれ」

「え、これをですの!?」

「綺麗……それに何か刻まれている?」

「こちらが金色の隼を象徴する「隼の紋章」です」



銀色の腕輪には金色に光り輝く隼の紋章が刻まれており、腕輪を受け取るとレア達はそのあまりの輝きに圧倒されるが、コネコは腕輪のサイズが合わない事に嘆く。



「これ、大きすぎてあたしの腕だと外れるんだけど……」

「僕のは小さすぎるな……」

「それに外見が豪華すぎて盗賊とかに狙われそうですわ……」

「ははは、腕輪のサイズに関しては後でちゃんと調整した物をあげよう。それに腕輪が派手な方が目立つだろう?金色の隼はまだまだ作り立ての冒険者組織だ、これから知名度をあげるためには派手な証を用意して初めてのお客様でも印象が残す必要があるんだよ」

「……というのは建前で、団長の趣味ではないですか?」

「……な、何を出だすのかな、そんなはずが無いだろう?」



イルミナが眼鏡越しに鋭い視線を向けると、ルイはあからさまに顔を反らす。最も印象を与えるという点では銀色の腕輪に金色に光り輝く隼というデザインは悪くなく、これを見ればだれでも記憶に残るだろう。


この腕輪だけでも相当な価値がありそうではあるが、金色の隼の団員には制服が与えられ、こちらの方は必ず着用する義務はないが、退魔のローブと同じような性能を誇るという。



「この制服の方は見た目は長袖なので暑そうに見えるが、通気性は優れているから暑い環境でも平気なんだ。それと、魔法耐性も高い素材で出来ているから安心してくれ。頑丈で破れにくく、デザインも悪くないだろう?」

「確かにデザインは中々ですわ。私、気に入りました」

「こっちもぶかぶかであたし着られないんだけど……」

「くっ……ボタンが閉まらない」

「お、御二人には改めて新しいのを用意させますから……」



コネコは服を着ても袖が合わず、デブリの方は無理やりに切ろうとしても腹が邪魔をして着られなかった。一方でレナの方は退魔のローブが気に入っているので制服の方は受け取るだけ受け取り、普段は退魔のローブで過ごす事に決めた。


腕輪と制服を受け取ったレナ達は次は本格的に金色の隼の団員として働くために契約を交わす事になる。ちなみに元々冒険者であったレナとコネコ以外の者は冒険者になるための手続きも行う。こちらの方は事前に冒険者ギルドの了承を得ており、契約書を記入する。



「……ミナ様、シノ様、ドリス様、ナオ様、デブリ様の契約書の確認をしました。こちらの書類を冒険者ギルドの方に提出し、受理されたら皆さんは冒険者と認められます。階級に関しては白銀級からとなります」

「これで私達も晴れて冒険者の仲間入りですわね」

「たく、皆ずるいよな~最初から白銀級冒険者になれるなんてさ」



本来は依頼をこなして評価点を稼ぎ、昇格試験を受けて合格すれば階級を上げられるのだが、ミナ達の場合は最初から白銀級冒険者として働ける事にコネコは羨ましがる。

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