第445話 試験〈レナ〉
『突貫!!』
「なっ!?殺す気ですかカツ!!」
「待て、イルミナ!!」
戦技を発動させたカツに対してイルミナは試合を止めるために魔法を発動しようとしたが、それをルイが遮る。一方でレナの方は盾で身を隠した状態で突進してくるカツに対し、正面から挑む。
重騎士であるカツは攻撃と防御のどちらにも優れており、まともに喰らえばレナの身体は耐え切れないだろう。だが、重戦車の如く迫りくるカツに対して敢えてレナは闘拳を構えると、付与魔法を重ね掛けして叩きつける。
「
『ぬおっ!?』
掌底を叩き込むようにレアは闘拳を放つと、闘拳に付与させていた魔力を一気に解放して重力の衝撃波を生み出す。正面から衝撃波を受けたカツは体勢を崩し、突進の勢いが止まってしまう。
その隙を伸ばさずにレナは動き、自分のブーツにも付与魔法を施し、足の裏に内蔵されている鉄板を利用して蹴りつけた。
「だあっ!!」
『うおおっ!?』
「あ、あのカツが押されているだと!?」
「いっけぇっ!!兄ちゃん!!」
盾越しに蹴りつけられたカツは怯み、それを見たロウガが驚愕の声を上げ、コネコが声援を送る。それに応えるようにレナは今度は左手の籠手に付与させた魔力を解放させる。
「
『うぎゃっ!?』
「カツ!?」
「やったっ!!」
左手からも強烈な衝撃波を放ったレナの攻撃はカツの巨体を吹き飛ばし、場外に落とす。それを見たロウガは更に驚愕するが、ミナが歓声を上げる。しかし、場外に落ちたから落ちたからといって試験は終らず、カツは難なく起き上がった。
『いてててっ……なるほどな、これがお前の魔法か。凄いな、風属性の砲撃魔法よりも利くぜ……だがな、この程度で終わると思ってねえよな!!』
「……勿論です」
大して損傷を受けていないのかカツはすぐに試合場に戻ると、改めてレアは黄金級冒険者の恐ろしさを思い知る。現時点のレナの「三重強化」はロックゴーレム程度の相手ならば一撃で粉砕する威力を誇るのだが、カツの甲冑も大盾も凹んですらいない。恐らくは魔法耐性が高い金属で構成されているらしく、中に入っているカツも衝撃は受けているはずだが大きな損傷には至っていない。
カツが戻るのを確認するとレアはどのような攻撃を仕掛けるのか悩み、とりあえずは魔銃に関しては効果が薄い事を予測していた。魔銃の弾丸は貫通力は高いが、先ほどからレナの攻撃を受けても耐え切っているカツの甲冑に弾丸が通じるとは考えにくい。魔石弾を使用すればあるいは通じるかもしれないが、魔石弾は前回のゴブリンキングとの戦闘で使い切っていた(そもそも原材料が高純度の地属性の魔石なので易々と作れる代物ではないが)。
(やっぱり黄金級冒険者となると強いな……けど、まだ手はある!!)
甲冑で身を守っているカツを見てレナは「間接付与」を施し、カツの身に着けている甲冑その物を重くしてカツを倒す方法を思いつく。この方法でレアはあのヒトノ国の将軍であるゴロウにも模擬線とはいえ勝利しているため、どうにか近付くために手を考える。
『よし、次は俺の番だぞ!!刺突!!』
「うわっ!?」
「は、早いっ!?」
今度は大盾ではなく、ランスを突き出してきたカツに対してレナは咄嗟に避けるが、あまりの速度で完全には避けきれず、籠手に衝撃が走った。掠っただけでも腕が折れるのではないかという衝撃が走り、慌ててランスの射程圏外に移動するが左腕が痺れてしまう。
もしも直撃を受けていたら左腕が折れるどころではなく、下手をしたら抉り取られていた可能性もある。単純なカツの膂力も凄まじく、デブリ並の怪力を誇るかもしれない。
『どうしたどうした!?逃げているだけだと俺には勝てないぞ!!』
「くっ!?」
カツは大盾で身を守りながらレナに接近し、ランスを突き出す。レナは一定の距離を保ちながら瞬間加速も利用して回避するが、もしもまともに受ければ無事では済まない。一方でそれを見ていたイルミナはルイに止めるように願う。
「これ以上は危険です!!本当に彼が死んでしまいます、止めてください団長!!」
「……レナ君、試合を放棄するか?」
「いえ……まだ、やれます!!」
「お、おい!!意地を張るな、お前はよく頑張った!!もう諦めろ!?」
ルイの言葉にレナは反射的に言い返すと、ロウガでさえも口を止めようとする。最初はレナ達に試験を受けさせても合格させるつもりはなかった彼だが、今は本気でレナの身を案じて試合を放棄するように伝える。しかし、レナは意地でも自分から試合を放棄する意思はなかった。
攻撃を回避しながらもレナはカツの動作を観察し、反撃の手段を考えた。移動中では集中力が乱れるので付与魔法に関しても「三重強化」以上の魔法は扱えない。だが、レナの武器は闘拳以外にもいくつか存在し、ここでレナは魔銃を抜く。
(ここだ!!)
魔銃で弾丸を撃ち込んだところでカツには大して損傷を与えられない事は承知しているが、少しでも彼の意識を反らせれば十分だと判断したレナは銃口を構えると、ランスを突き出そうとしたカツの腕を狙い撃つ。
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