第444話 カツとの再戦
『さあ、来いっ!!俺に勝てたら黄金級冒険者の称号をくれてやってもいいぞ!?』
「馬鹿野郎!!そんな事が認められるわけないだろうが!!何処の世界に試験で黄金級冒険者と戦わせる
「それを言ったら君が勝手に彼等の試験官を勤めているのも問題だと思うけどね」
「えっ……団長!?それに副団長まで……」
「全く……やってくれましたね」
背後から声を掛けられ、ロウガは驚いて振り返るとそこには腕を組んで顰めた表情を浮かべるイルミナと、肩をすくめるルイの姿が存在した。団長と副団長の登場に慌てて金色の隼の冒険者達は敬礼を行うが、ロウガは顔色を青くさせる。
勝手に自分の判断で推薦状を持ち込んだレナ達に試験を受けさせている状況のため、上司であるルイとイルミナの登場にロウガは焦りを抱き、どのように言い訳するのか必死に考えた。
「ロウガ、いつから推薦状を持ち込んだ冒険者の試験を行う規則が出来たんだ?しかも私の許可もなく試験官を勤めているようだな」
「いや、それは……」
「だが、君の気持ちも分からなくはない。このまま試験官を勤めてくれ」
「えっ!?」
「……私は不服ですが、今回の試験の責任は貴方が取ってください」
ロウガは二人が現れたのは勝手にレナ達の試験を行った自分を咎めるために訪れたと思ったが、予想外の言葉に驚愕する。そんな彼にルイは耳元で囁く。
「こうなった以上、このまま試験を押し通すんだ」
「だ、団長……だが、俺のした事は……」
「勿論、許される事ではないよ。だから今回の試験が終わり次第、一週間の間は建物の掃除係をしてもらう。それに……君の気持ちも分かる」
「え?」
「生半可な実力者を金色の隼に入れる事を拒みたいという気持ちはよく分かる。私とイルミナが認めた相手だとしても、自分の目で彼等が金色の隼に相応しい実力を持っているのかを見極めたかった……そうだろう?」
「そ、それは……」
「但し、今回の件が終ればレナ君たちには全て君の方から事情を伝えて許しを請うんだ。もしも彼等が機嫌を損ねて一人でも立ち去ろうものなら……便所掃除1年の刑だ」
「うっ……わ、分かった。だが、次の試験の相手がカツというのはまずいだろう。まだ、相手はガキだぞ?」
「子供といっても、黄金級冒険者の昇格試験の資格を持つ少年だ。それに実力はここにいるイルミナも認めている、私としても彼が七影のイゾウを倒したところを見ている……あの子は金の卵どころじゃない、黄金の卵かもしれない」
「な、何だって!?」
ロウガは驚いた表情を浮かべてレナの方に振り返り、七影の中でも最強と称される事が多いイゾウと倒したという話に驚く。一方でレナの方はカツに視線を向け、何かを思い出すように表情を真剣な物へと変える。
――数か月前、レナはカーネの屋敷にて1日だけ用心棒として雇われていたカツと対戦した事がある。あの時はデブリとナオの力を借りたとはいえ、3人で挑んで最終的にはカツを気絶に追い込む事には成功した。だが、最初からカツが戦闘を楽しむために手加減せずに本気で挑んでいればレナ達も無事ではなかっただろう。
今回のカツは用心棒を行っていた時と同じ装備をしており、万全な状態だった。相手が黄金級冒険者である事、今回は1人で挑まなければならない事にレナは考え込み、やがて結論に至る。
「よろしくお願いします!!」
『おおっ!!来い来いっ!!』
「レナ君!?」
「兄ちゃん!?」
「おい、本気か!?相手は現役の黄金級冒険者だぞ!?」
装備を整えたレナは試合場に乗り込むと、闘拳と籠手を重ね合わせ、鼻息を鳴らす。その様子を見て仲間達は驚くが、レナとしては前回の戦闘での借りを返したい気持ちがあった。
(あの時とは違う、今度は全力で戦ってやる!!)
前回の時はデブリとナオがいなければ勝てなかった相手だけにレナは気合を込めるように頬を叩き、カツと向き合う。前回の戦闘でも感じたが、黄金級冒険者ともなると向かい合うだけで凄まじい気迫が感じられ、立っているだけでもきつい。
しかし、今回のレナは前回の時よりも装備は整い、全力で戦える状態だった。カーネの屋敷に忍び込んだ時は碌な装備もない状態でカツにいいように痛めつけられた事は忘れておらず、あの時の屈辱を晴らすためにレナは仲間の制止を振り切って本気で挑む事にした。
「ロウガさん、試合の合図をお願いします!!」
「お、おい!?本当にいいのか?そいつは手加減なんて出来るような奴じゃないぞ!!」
『いいから早くしろロウガ!!こっちは戦いたくてうずうずしてんだ、早く合図しろ!!』
「……という事だ、本人たちの希望した以上は試合を続けてくれ」
「団長!?」
ルイの言葉にイルミナが信じられない表情を浮かべるが、本気で黄金級冒険者のカツをレナと戦わせるのかとイルミナは動揺する。折角訪れてくれたレナを危険な目に遭わせるのかと正気を疑う。
だが、当の本人たちは既にやる気になっており、団長であるルイが許可を出している以上は止めるわけにもいかず、仕方なくロウガは試合の合図を行う。
「ああ、もう……分かったよ!!どうなっても知らないからな!!試合……開始ぃっ!!」
『おっしゃあああっ!!』
試合が始まった瞬間、カツは重心を低く構えると、大盾で身を隠す。一見するだけでは防御の体勢に見えるが、カツとの戦闘を経験しているレナはすぐに彼が防御でhなかう、攻撃の体勢に入った事を悟って自分も戦闘準備に移る。
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