第426話 金色の隼からの推薦状
「話を戻すが、レナ君が盗賊ギルドから命を狙われる立場であるのは間違いない。だからこそ今後は身の周りに気を付けて行動して欲しい」
「はい……分かりました」
これまでの件もあり、盗賊ギルドの方も本格的にレナの命を狙う危険性が高く、マドウが注意を行う。今までは盗賊ギルドが動かなかったのは競売の件でヒトノ国が本格的に盗賊ギルドと敵対した事で王都の警備が強化されたからだが、それでも今後も安全とは言い切れない。
レナの今までの行動によって盗賊ギルド側は七影を二人も失い、更に競売で得るはずの莫大な金も手に入らなかった。少し前まではレナはミスリル鉱石を回収する人材としてカーネに重宝されていたが、そのカーネもいなくなった今はレナの命を狙わない理由はなくなった。
「大丈夫だって兄ちゃん!!何があろうと私達が守ってやるからな!!」
「コネコの言う通り、なにがあろうと私達が守って見せる」
「そ、そうだな……僕達がレナを守ればいいんだよな」
「友達の危機ならば私も全力で力を貸しますわ」
「僕もドリスと同意見です。レナ君のためなら頑張ります」
「皆……ありがとう」
「ううっ……いい友達を持ったなお前」
命を狙われていると聞いてレナの仲間達も協力する事を約束し、それを聞いたダリルは涙ぐむが、ここでマドウが咳ばらいを行う。
「ごほんっ……実はな、お主を呼び出したのは他にも理由があるのだ」
「理由?」
「先ほど、国王様に謁見する前に金色の隼の冒険者が儂の元に訪れてな。ある話を儂の方からお主に勧めるように頼まれたのだ」
「え?」
「これをお主に渡そう」
「これは……何ですか?」
「推薦状じゃ……これを冒険者ギルドに持ち込めばお主は黄金級冒険者の昇格試験を受けられる」
『黄金級冒険者!?』
現在、城内に存在する金色の隼に所属する冒険者となると必然的にイルミナたちに限られ、彼女達がマドウを通してレナに何を伝えたいのかと全員が不思議に思うと、マドウは真剣な面持ちで推薦状を取り出す。
――推薦状を受け取ったレナは内容を確認すると目を見開く。そこには「金色の隼」の団長を務める「ルイ」副団長の「イルミナ」そして団員の「カツ」「ダンゾウ」の4名の署名がされていた。
推薦状を渡すように頼まれていたマドウの方も戸惑っているらしく、忙しなく自分の顎鬚を撫でながら受け取った時の経緯を話す。
「推薦状に書かれている通り、金色の隼に所属する4名の黄金級冒険者がお主を黄金級冒険者へと昇格試験を受ける資格を持つと認めておるのだ。そして冒険者ギルドの規定として黄金級冒険者の試験を受けるには3名以上の黄金級冒険者の署名、あるいは金級冒険者10名以上の署名が必要になるのだが……ここに書かれている通り、その条件は満たされておるな」
「えっ……じゃ、じゃあ……」
「うむ、お主がこの推薦状を冒険者ギルドに持ち込み、試験に合格すれば……お主は黄金級冒険者と認められる事になるのう」
『えええええっ!?』
マドウの言葉に再び部屋の中にレナ達の驚きの声が響き渡り、その反応を予想していたようにマドウは事前に耳を塞ぐ。
「れ、レナが……うちのレナが黄金級冒険者に!?」
「マジかよ!!やったな兄ちゃん、黄金級ていうのは確か冒険者の中で一番偉いんだろ!?」
「正確には階級が一番上……黄金級よりも上の立場はもうギルドマスターぐらいしか存在しない」
「やったなレナ!!お前、遂に黄金級冒険者になれるかもしれないんだぞ!?」
「これはめでたいですわ!!レナさん、是非黄金級冒険者になったらうちの商会と専属契約を結びませんか!?」
「ドリス、どさくさに紛れて何を言ってるの!?」
「ちょ、ちょっと待って!!皆、落ち着いて!?」
唐突な話にレナ以上に他の者達が騒ぎ出し、その様子を見ていたマドウは難しい表情を浮かべながら腕を組む。今回の推薦の話に関しては彼も対応に困り、このまま素直に喜ぶべき事なのかと悩む。
「歴史上、黄金級冒険者の中で一番若い年齢で昇格した冒険者は「12才」だが……そもそも10代で黄金級冒険者に昇格した者はここ数十年は存在しない。金色の隼の団長を務めるルイでさえも21才で黄金級冒険者へ昇格したという話だからのう。正直に言って、儂はレナ君が黄金級冒険者になるのは少し早すぎると思うのだが……」
「えっ……ならやめておいた方が良いですか?」
「いやいや、決めるのはあくまでもお主だ。別に反対しているわけでないので気にせんでくれ?」
マドウの話を聞いてレナは黄金級冒険者の推薦状を確認し、どうするべきか悩む。レナは冒険者になったのは自分が強くなるためであり、力を身に着けて自分の村を襲ったゴブリン達に復讐を果たすためである。
しかし、イチノを救った件と村を襲ったゴブリン達の親玉であるゴブリンキングを討ち取った事でレナの中の復讐心は消え去り、目的は達成していた。前に何度か金色の隼から勧誘を受けたが、今回はまさか黄金級冒険者への推薦状を渡されるなど思いもよらず、正直に言えば戸惑いの感情しか浮かばない。
(こんなの急に渡されても困るよ……でも、黄金級冒険者か)
今まではあまり意識しなかったが冒険者の階級の最上位であり、もしも試験に合格すればレナは数十年ぶりの10代で黄金級冒険者に昇格を果たした存在になる。ムノーには魔術師としては落ちこぼれの「付与魔術師」だと馬鹿にされた自分が、冒険者の最上位の階級に昇格を果たせるかもしれないと思うと無意識に推薦状を握り締める手に力がこもる。
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