第425話 盗賊ギルドの関係者の末路
「こ、こうなったら……夜逃げするしかない!!レナ、コネコ、すぐに荷物をまとめて今日中に王都を抜け出すぞ!!イチノに戻って大人しく暮らそう!!」
「ええっ!?」
「いや、落ち着けよおっちゃん!!というか、夜逃げした所でどうにかなるのか!?」
「待て待て、落ち着くのだダリル殿。逃げた所で状況は悪化するだけだぞ?」
盗賊ギルドにレナが命を狙われていると知った以上、ダリルは王都にはいられないと判断してレナとコネコを連れて逃げ出そうと考えるがそれを慌ててマドウが引き留める。
実際の所、逃げた所で盗賊ギルドが簡単に諦めるとは思えず、むしろ王都を離れた場合はマドウもレナ達を守り切れずに逆に狙われる危険性が高くなる。
「ダリル殿も心配する気持ちは分かるが、もうしばらくの間は王都に留まっておいた方が良い。盗賊ギルドの件に関しては、この儂がどうにかしてみせよう」
「でも、そのためにレナの力を借りたいの?」
「うむ……確かに儂一人の手には余る相手だからのう」
シノの指摘にマドウは否定はせず、レナの力が必要になる時が来るかもしれない。しかし、レナの親代わりであるダリルとしては彼が悪名高い盗賊ギルドのしかも七影に狙われていると知れば心中が穏やかではない。
「その、マドウ大魔導士がそこまで言われるのならば王都に残りたいとは思いますけど、本当に大丈夫なんでしょうか?レナを狙ってうちの屋敷に暗殺者が送り込まれたりとかは……」
「うむ、その不安は最もじゃ。だが、盗賊ギルドは昔と違い、今は派手に動く事はできまい。立て続けに七影のリッパーとイゾウが死亡し、更に奴等と繋がっていたゴマン伯爵も失踪した。奴等の勢力は間違いなく削られておる……これまではどうしても見逃さざるを得なかった内通者共も拘束しておる」
「内通者?」
「盗賊ギルドと内通していた兵士や冒険者の事だ。前に街中でお主達も冒険者に襲われた事があったといっていただろう?その話を聞いた時に儂はすぐに調査を行い、盗賊ギルドと繋がっていた者達を捕縛した。ちなみにムノーとルインの奴も盗賊ギルドと繋がりがあったようだが……知っての通り、あの二人は殺されておる」
「……誰だっけそいつら?」
「こ、コネコちゃん忘れちゃったの!?ほら、僕達が初めてであった頃にちょっかいをかけてきた冒険者ギルドのサブマスターだよ」
「あっ……居たな、そんな奴!!あたしと兄ちゃんとナオの姉ちゃんが初めてロックゴーレムを倒してミスリル鉱石を手に入れた時、まんまとあたし達の罠に引っ掛かった奴か!!」
「お前等、何をしたんだ……?」
ルインの名前を聞いてもコネコはすぐに思い出せなかったが、ミナが指摘すると彼女はレナと出会ったばかりの頃を思い出す。冒険者ギルドのサブマスターではあったが、性格が嫌味で「赤虎」という冒険者ギルドとカーネと結託してダリルの商会を潰そうとした男である。
ムノーに関してはレナが王都に来たばかりの頃、推薦状を所持していたにも関わらずに彼の魔法学園の入学を拒否して追い出そうとした魔導士である。結局はレナは騎士科の試験に受かった事で無事に入学できたが、ムノーは上司であるマドウの命令に逆らった事で解雇された。
この二人は後に手を組んで自分を陥れたと逆恨みしてレナの命を狙う。結果的にはレナは仲間達に救われて助かったが、二人を拘束した後に現れた謎の黒装束の集団に命を奪われている。恐らくは盗賊ギルドの手の者だと考えられる。
「ムノーもルインも職を解雇された後に発覚したのだが、どうやらこの二人は盗賊ギルドに物資を横流ししていたらしい。ムノーは魔導士が扱う魔石を、ルインの場合は冒険者を利用して裏の仕事を密かに手伝わせていた疑いがある。本来ならば本人たちを捕まえて情報を聞き出せればよかったのだが……もうどちらも亡くなっておるからのう」
「そういえば前に騎士科と魔法科の対抗戦が行われた時、あの召喚魔術師のウカンもレナさんの命を狙ってましたわね」
「ああ、居たなそんな奴も!!別にそんなに前の話じゃないのに、全然思い出せなかった……」
「あの男は年齢を詐称して学園の生徒に化けていましたから、私はよく覚えてますわ。そういえばあの男は捕まった後、どうなったのですか?」
「……死亡した。死因は獄内での服毒自殺、どうやら看守に紛れて誰かが毒を持ちこんだらしい」
「そ、そんなっ!?」
対抗戦でレナ達と戦ったウカンは捕まった後、すぐに死亡したという話を聞いてドリスも動揺する。全く知らない仲ではなく、同じ生徒として授業を受けてもいたので彼女は少なからず衝撃を受けた。それはレナ達も同じであり、まさかウカンが既に死亡していた事に驚く。
ムノー、ルイン、ウカン、他にもレナの命を狙った「カマセ」という名前の暗殺者、この全員が盗賊ギルドに関わったばかりに悲惨な末路を迎えている。その事に対して盗賊ギルドがどれほど厄介で恐ろしい存在なのか嫌でも思い知らされた。
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