火竜編

第423話 王都に帰還

――イチノを奪還してから十数日後、大量の素材と共にレナ達は王都へと引き返した。幸いというべきか、王都の方では特に大きな異変は起きておらず、火竜の襲来もなかった。


天馬と飛竜に乗ってレナ達は王都へと辿り着くと、先にレナ達は王城へと免れた。今回の一件に関して報告する必要があり、レナ達も当事者として王城へ連れて行かれる。



「ううっ……だ、大丈夫だよな?僕達、叱られたりしないよな?」

「デブリさん、そんなに緊張する必要はありませんわ。ここは紅茶を飲んで心を落ち着かせましょう……あ、これ珈琲でしたわ。誰か砂糖とミルクを用意してください!!」

「いや、ドリスも落ち着いて!!」

「へえ、ここが城の中なのか。思ったよりも面白そうな場所だな、探検したくなってきた」

「コネコ、言っておくけど勝手に外に出たら駄目だからね?」

「大丈夫、コネコなら気付かれずに城の中を見まわる事が出来る」

「何が大丈夫だ!?お前ら、絶対に余計な事はするなよ!!ここから一歩も出るんじゃないぞ!!」



客室にてレナ達は待機を命じられ、黄金級冒険者であるイルミナとカツとダンゾウは国王の元へ直々に赴き、他の魔術師達はサブの元に戻った。レナ達が客室にて待機を命じられたのはマドウに呼び出されたからであり、彼が訪れるまで大人しく待つ事にする。


ちなみにミナだけは客室には存在せず、父親と叔父に呼び出されてこの場にはいない。飛竜を借り出した件で相当な無茶をやったらしく、今頃は二人に説教されているらしい。



「おおっ、全員おったか。待たせてすまなかったのう」

「ま、マドウ大魔導士!!お待ちしておりました、ほらお前達も頭を下げろ!!」

「いやいや、そうかしこまらなくてもよい。ダリル殿でしたな、今回の件は色々と迷惑をかけてしまい申し訳ない」



マドウが入り込むと慌ててダリルは立ちあがり、深々と頭を下げる。ダリルにとっては大魔導士など天上人に等しく、一介の商人にしか過ぎない自分が対等に話せる相手ではないと思っていた。顔を合わせるのは初めてではないが、どうしても相手が大魔導士だと意識するとかしこまってしまう。


部屋の中に入ったマドウは全員居る事を確かめると、まずは席に座らせて向かい合う。そしてレナに顔を向けると、その場で頭を下げた。



「すまぬ……必ずお主の力になると約束しておきながら、碌に力を貸せなかった事を許してくれ」

「えっ?」

「ま、マドウ大魔導士!?頭を上げてください!!」



頭を下げてきたマドウにダリルが慌てふためくが、レナはマドウの言葉を聞いて疑問を抱き、マドウに頭を上げるように促す。



「あの、約束の事なら気にしないでください。学園長も大変だったみたいだし、それに約束はちゃんと守ってくれたじゃないですか?金色の隼さんに力を貸してくれるように手配してくれたのも学園長なんでしょう?」

「しかし、あれだけ豪語しておきながら儂自らは何も出来なかった……本来ならば儂自らが出向き、力になるのが道理だろうが状況が許さず、結局はお主達に危険な目に遭わせた。指導者という立場でありながら生徒の期待に応えることが出来ずに申し訳ない」

「いいえ、マドウ学園長のお陰で俺はイチノを救われたと思っています。だって、学園長が魔法学園を創設してなければ俺も皆と会えなかったし、強くなることも」出来ませんでした。だから、イチノが救えたのはマドウ学園長のお陰です」

「……そうか、そういってくれるのは有難い」



レナの言葉を聞いてマドウは安堵した表情を浮かべるが、実際にマドウが魔法学園を創設しなければイチノは壊滅していた可能性が高い。レナが魔法学園に通い、コネコ達と出会い、共に指導を受けて強くなっていなければイチノは救えなかった可能性が高い。


もしもレナが魔法学園に入らずにイチノで冒険者を続けていたとしても今以上の強さを手に入れたとは考えにくい。恐らくはゴブリンの軍勢に挑んで死亡していた可能性も高く、そう考えればマドウがいなければレナはとうの昔に死んでいただろう。



「イチノが救えたのはマドウ学園長が魔法学園に誘ってくれたお陰だと俺は思っています。だから、約束の件は気にしないで下さい」

「なあ、兄ちゃん。前々から思ってたんだけど、その約束って何なんだ?前に聞いたときはうやむやにされたけど、この爺ちゃんと何の約束をしてたんだ?」

「それは私も気になりますわ」

「教えて」

「あ、えっと……」



レナの話を聞いていた仲間達は彼がマドウと交わしたという約束を尋ねると、どのように応えるべきかとレナは困った風にマドウに視線を向けると、かわりにマドウは答えてくれた。



「うむ、実は儂はここにいるレナ君が魔法学園に入学したばかりの頃、ある約束をしたのだ。その内容は……七影の打倒を協力する代わりに、儂もレナ君に力を貸す、という約束をしていた」

「七影の……打倒!?」

「そ、そんな約束をしてたのか!?」

「どうしてレナ君がそんな約束を……!?」



約束の内容を知った仲間達は戸惑うが、マドウはここまで来た以上は隠しきれないと判断し、まずは自分がどうしてレナと接触したのかを話す。

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