第406話 レナVSホブゴブリン
「さあ、ナオ!!一気に畳み掛けますわよ!!」
「ああ、行こう……ちょっと待って、ドリス」
勢いに乗って攻め寄せようとしたドリスをナオは後ろから引き止めると、彼女は周囲に異変に気付く。最初は気付かなかったが、何時の間にか草原に大量に存在したホブゴブリンの大群に異変が起きていた。
「どうしましたのナオ!?この勢いに乗って攻め寄せなくては……あ、あら?」
「ドリスも気付いたよね……敵の数が少なすぎる」
「……本当ですわ」
ドリスも周辺に存在するホブゴブリンの数が妙に少ない事に気付き、最初の頃は周囲一面が敵によって埋め尽くされていたのだが、現在はドリスとナオの周囲にはせいぜい十数匹のホブゴブリンしか存在しなかった。
先ほどの攻撃で相当な数のホブゴブリンを一掃したとはいえ、相手は500近くは存在する大群だった。それにも関わらずに二人の周囲には異様なほどにホブゴブリンの数が少ない事に違和感を抱き、他の人間に視線を向ける。
「そうだ、レナさん達は無事ですの!?」
「読んだかドリスの姉ちゃん!!」
「わあっ!?びっくりしましたわ!!」
バトルブーツによって加速したコネコがドリスの目の前に急停止すると、ドリスの目にはコネコが一瞬で現れたように見えて仰天してしまう。騒ぎを聞きつけたのかミナも飛竜に乗り込んだ状態で近付き、デブリの方も両脇にホブゴブリンを抱えて寄ってきた。
「皆!!大丈夫!?」
「おい、お前等無事か!?誰もやられてないよな!?」
「ミナさんにデブリさん、私達は無事ですわ!!」
「兄ちゃんとシノの姉ちゃんは?まさか、やられてないよな……」
「私はここにいる」
「わあっ!?い、何時の間に背後に……!?」
シノもナオの背後に音も立てずに現れると、これでレナを除く全員の無事が確認できた。それぞれが先ほどまでホブゴブリンと戦闘を繰り広げていたが、急激にホブゴブリンの数が減った事で身体を休める好機に恵まれ、一つの場所に集まる。最後にレナだけは姿が見えない事に全員が不安を抱いた時、強烈な衝撃音が草原に鳴り響く。
『グギャアアアアッ!?』
「な、何ですの!?」
「あれを見て!!レナ君がっ……!?」
大量のホブゴブリンの悲鳴が響き渡った瞬間、空中に十数匹のホブゴブリンが舞う。それを見た誰もが驚き、すぐにミナはホブゴブリンが吹き飛んだ方向に視線を向けると、そこには大量のホブゴブリンに囲まれるレナの姿が存在した。
草原に立ち尽くすレナの周囲には100匹を超えるホブゴブリンが存在し、更に続々と周囲から新手のホブゴブリンが駆けつけてきた。ドリス達の元で戦っていたホブゴブリンも多数存在し、状況から察するにホブゴブリンの軍勢はレナを標的に定めて集中的に襲いかかっている様子だった。
「グギィイイッ!!」
「ギィアアアッ!!」
「あっ!?あいつらまだ残ってたのか!!」
甲冑を纏ったホブゴブリンが3体ほどレナの元へ目掛けて駆け出し、鋼鉄製の棍棒を掲げてレナの正面から迫る。だが、それを見たレナは闘拳に付与魔法を発動させると、強烈な一撃を叩き込む。
「
「グゲェエエッ!?」
「ギャウッ!?」
「ギヒャッ!?」
先頭を走っていた1体に対してレナは拳を突き出すと、重力によって強化された一撃を受けた重武装のホブゴブリンは後列の2匹を巻き込んで吹き飛ぶ。その威力はボアの突進を遥かに上回り、レナを取り囲む他のホブゴブリンを震え上がらせる。
あまりにも圧倒的な力の差に先ほどまでは勇んでレナに立ち向かおうとしていたゴブリン達も震え上がり、圧倒的な強者を前にして野生の本能が逃げろと告げていた。
「グギギッ……!?」
「ギギィッ……」
「ギャギャッ……」
「……どうした、来いよ」
怯えて近付いて来ようとしないホブゴブリンに対してレナは睨みつけると、ホブゴブリン達は大型の魔獣に遭遇したかのように怯えてしまう。しかし、その中で1体のホブゴブリンが前に出る。そのゴブリンは額に傷が存在し、過去にレナに崖の上から落とされ、一命をとりとめたゴブリンだった。
「ニンゲンガ、チョウシニノルナッ!!」
「……お前、前に会ったことがあるな」
他のホブゴブリンからは「スカー」と呼ばれるホブゴブリンは前に出ると、手斧を両手に構えて向かい合う。レナは自分が最初に倒したと思い込んでいたゴブリンの登場に少し驚くが、気を取り直したように闘拳を構える。
しかし、レナの予想に反してスカーは自分から近づいてくる様子を見せず、口元に笑みを浮かべると後方へ振り返って手斧を投げ放つ。投擲された手斧の方向先には金属製の柵が存在し、その扉に掛けられていた南京錠に手斧が衝突すると、南京錠が破壊されて内側に閉じ込められていた魔獣が解き放たれた。
「――ガアアアアアッ!!」
姿を現したのは全身が血塗れのように赤毛に染まった巨大な熊が出現し、その姿を見たレナは即座に「赤毛熊」だと見抜く。しかも過去にレナが倒した赤毛熊よりも体格は一回りは大きく、大きな鎖が首元に取りつけられていた。
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