第402話 頼もしき仲間達
「レナだと!?あのレナが戻って来たのか!?」
「おお、あの赤毛熊を倒した子供の冒険者か!?」
「イチノの小さな英雄が戻ってきてくれたぞ!!」
レナが戻って来たという事実に兵士や冒険者は歓声を上げ、攻撃を仕掛けてきたホブゴブリン達でさえも唐突に現れた謎の人間達に警戒心を抱く。
イチノの街で最も有名だった子供の冒険者の帰還、それは生き残っていた冒険者と兵士達の士気を取り戻すのは十分であり、彼等は希望を見出す。その一方でレナの仲間達は周囲の反応を見て少し戸惑う。
「へえ、兄ちゃん人気者だったんだな……」
「流石はレナ君だね!!」
「ですが、大分疲れているようですわ。皆さん、話を聞いてくださいっ!!ここから先は私達が戦いますわ!!だから皆さんは無理をせずにここに残って守ってください!!」
「おおっ!!という事は本当にあんたらは援軍なんだなっ!?それで、あとどれぐらいの味方が来るんだ!!」
ドリスの言葉を聞いてレナ達が本当に援軍として派遣された人間だと知ると兵士と冒険者達は歓声を上げるが、そんな彼等に対してドリスは口元に笑みを浮かべて告げる。
「そうですわね……ここにいる人数は7人、という事は7000人の援軍が来たと考えてくださいましっ!!」
「7000人!?それはど、どういう意味だ!?」
「私を含め、ここにいるのは全員が称号持ち!!そして一騎当千の強者たちですわ!!」
「どすこいっ!!」
「うおおっ!?」
「ゆ、揺れたっ!?」
「へえっ……中々見事な肉付きだね。相当に鍛えているね、あんた」
ドリスの言葉に兵士と冒険者が戸惑う中、デブリは上着を脱ぐと上半身が裸となり、その筋肉と脂肪で構成された見事な肉体を披露する。唐突に脱ぎだしたデブリに戸惑うが、バルは彼を見て感心した表情を浮かべた。
デブリが足を踏みつけると軽い振動が走り、その頼もしき姿に兵士達は圧倒され、全員が城壁の端に移動すると、ホブゴブリンの軍勢を見下ろす。
「敵の数は推定で500……その内の100匹はゴブリン、他にも赤毛熊とボアが数体」
「えっ?凄いなシノの姉ちゃん、ここから見ただけで敵の数まで分かるのか?」
「上空から味方限りでは予想よりも数は少ないようですが、ここが一番戦力が集まっているように見えますわ。逆に言えば他の城壁の方は戦力が低いという事です」
「他の城壁には金色の隼と、ブラン君たちが守護しているから大丈夫だと思う。だけど、他の城壁も手一杯だと思うから援軍は期待出来ないと思う」
「はんっ!!あんな奴等の手を借りなくてもあたし達だけで十分だ!!なあ、ヒリュー?」
「シャアアアッ!!」
城壁の上に降り立った飛竜にコネコが声を掛けると、ミナが連れてきた「ヒリュー」は頷く素振りを行う。ここまでの道中でミナ以外の者達ともコミュニケーションが取れるようになっており、唯一デブリだけがヒリューに餌として認識されているのか偶に頭を齧りつこうとしてくる。
「シャアッ!!」
「うわっ!?ちょ、止めろ!!いい加減に僕の事を餌と間違えるな!?オークじゃないんだぞ!!」
「こら、ヒリュー!!デブリ君を齧っちゃ駄目でしょ!!反省!!」
「シャウッ……」
レナが叱りつけると飛竜はしょんぼりとした表情を浮かべて頭を下げ、その様子を見たバルは動揺する。
飛竜を見るのは彼女も初めてだが存在自体は知っており、竜種の中では下位の存在だが、それでも恐ろしい魔物だと聞いていた。しかし、目の前のレナ達は飛竜を完全に従えさせている事に戸惑いを隠せない。
「レナ、こいつらは誰だい?友達か?」
「……頼りになる仲間達だよ」
「仲間……そうか、それは心強いね」」
バルの言葉にレナは笑顔で答えると、仲間と答えたレナに対してバルは驚き、同時に安心した。イチノに居た時は仲間を作らず、常に単独で行動していたレナが仲間を作って共に帰って来た事に彼女は嬉しく思う。
イチノに居た頃のレナは同年代で自分と同等、あるいはそれに近い実力を持つ若者が存在せず、常に冒険者家業は一人で行っていた。しかし、王都に赴いてから自分の同世代で実力もある者達と接するようになり、今では仲間と呼べる存在を作り出せた。もしもイチノで暮らし続けていたらレナはずっと一人で行動していただろう。
しかし、今のレナは一人ではなく、頼りになる仲間と共にイチノに帰ってきた。城壁の上からホブゴブリンの軍勢を見下ろしたレナ達はその数と規模を見ても圧倒されず、むしろ余裕の表情を浮かべていた。
「こいつらが兄ちゃんの村を襲った奴等か……」
「レナ君のお父さんとお母さんの仇なんだよね?」
「……数は多い、油断はできない」
「ふんっ!!だけど、今の僕達の敵じゃないな!!」
「デブリさんの言う通りですわ!!私達はミノタウロスもブロックゴーレムも倒したという実績があります!!だからこの程度の数のホブゴブリンなど恐れる必要はありません!!」
「レナ君、号令を……この戦いは君から始めるのが筋だと思います」
「号令か……うん、分かった。じゃあ、皆、準備はいいね?」
仲間達の言葉にレナは振り返ると、全員が同時に頷く。その態度を見てバルは彼等がこれから何をするのかに気付き、慌てて引き留めようとした。
「おい、あんたら!!まさかっ……!?」
「突撃ぃっ!!」
『うおおおおおっ!!』
レナが声を上げた瞬間、全員が同時に城壁の上から勢いよく跳躍を行い、ホブゴブリンの軍勢に向けて落下した。
※今までの投稿の中で一番楽しく話を書いている気がします( ´ω`)
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