第403話 デブリVSボア

「なっ!?嘘だろっ!?何してんだあんたらっ!?」

「飛び降りたぞっ!?」

「なんて事をっ!?」



城壁の高さは20メートルは存在するのにも関わらず、躊躇なく飛び降りたレナ達をみてバルを含め、城壁の兵士と冒険者達は驚愕の声を上げる。戦闘職の人間だろうとこの高度ならば着地を失敗すれば大怪我は免れず、今のバルでさえも飛び降りれば命を落としかねない。


しかし、レナ達は全員が躊躇なく飛び降りると、そのままホブゴブリンの軍勢の元へ落下する。そしてレナは空中にて手を伸ばすと、事前に付与魔法を施していたスケボを引き寄せる。



「こいっ!!」



レナの足元に金属板が飛来すると、そのまま乗り込んで空中を自由自在に飛び回る。その光景を見てバルは過去にレナが木造製の板を使って空を飛ぶ練習をしていた事を思い出す。しかし、まさか本当に空を飛べるようになっていたなど夢にも思わなかった。


明らかにイチノにいたときよりも巧みに付与魔法を操作しているレナにバルは動揺を隠せず、彼女は「重力」の事はよく理解しているわけではないが、レナの付与魔法は物体を操作する魔法だと考えていた。しかし、イチノに居た頃のレナはせいぜい重い物を軽くさせる程度の事しか出来なかったが、現在のレナは重量を軽減するどころか完全に空を飛べるようになっていた。



「へへっ!!あたしだって負けないぞ!!」



レナがスケボを利用して空を飛んだのを確認すると、コネコは自分の両足の「バトルブーツ」に視線を向け、踵の付近に装着している風属性の魔石を回転させる。その直後、彼女の両足に風属性の魔力が纏わると、足の裏から衝撃波を発生させて空を飛ぶ。


コネコが足を動かすたびにバトルブーツから風圧が発生し、まるで空を駆け抜けるかのように彼女は移動を行う。その速度はレナのスケボにも匹敵した。



「ヒリュー!!」

「シャアアアッ!!」



一方でミナは自分の可愛がっている飛竜に声を掛けると、主人の言葉に反応して飛竜は馬車を引き千切って城壁から飛び立つ。そのまま飛竜は空中にてミナの元へ追いつくと、彼女を背中に乗せて飛ぶ。


飛竜がミナを抱えたのと同時にシノの方も大きな布袋を取り出し、両手と両足に巻き付けて落下速度を落とす。その隣ではナオがドリスをお姫様抱っこで抱えた状態で彼女が作り出した氷の塊に乗り込む。



「氷塊!!」

「行くよ、ドリス!!」



空中に出現した氷の塊を足場にしながらナオは着地すると、そのまま次々と生み出される氷の足場を階段代わりにして下りていく。そして最後にデブリだけが誰からの助けも借りず、地上へと降り立つ。



「うおおおおっ!!」

『グギィイイイッ!?』



まるで隕石の如く落下してきたデブリに大してホブゴブリン達は慌てて逃げ惑うが、デブリが地面に着した衝撃で振動が走り、周囲に存在したホブゴブリンが転倒する。相当な衝撃がデブリの身体にも走ったはずだが、常日頃から鍛えている彼にとっては問題はなく、何事もなかったように立ち上がる。



「ふんっ!!この程度の高さなら問題ないな!!」

「ギギィッ……!?」

「グギィイッ!!」



降り立ったデブリに大してホブゴブリンの集団が取り囲み、彼に襲いかかろうとした。デブリは自分を取り囲んだゴブリンの集団に視線を向けると、鼻息を鳴らして地面を力強く踏みつける。


デブリが地面を踏みつけただけで地面に振動が走り、ゴブリン達は体勢を崩す。それを確認したデブリは自分の頬を叩いて気合を入れると、体勢を屈めて「戦闘体勢」に入った。



「かかってこい!!」

「ギギッ……グギィイイッ!!」



自分達を挑発する言葉を発したデブリに大してホブゴブリン達は怒りを抱くが、相手が只者ではないと判断して1体のホブゴブリンが後方に待機させていた部隊に大声を放つ。その意図を察した後方の部隊は木造製の檻に捉えていた「ボア」を解放した。



「グギィッ!!」

「フゴォオオオッ!!」

「んっ!?」



檻を解放してホブゴブリンが鞭を叩きつけると、興奮状態のボアがデブリの元へ突進する。それを目撃したデブリはボアに対して両腕を広げると、正面から受け止めようとした。



「こいやぁっ!!」

「フゴォッ……!?」

『グギィッ!?』




――ボアの突進に対してデブリは正面から受け止めると、一歩も引かずにその衝撃を受け切り、逆に攻撃を仕掛けたボアの方が身体を痺れさせる。


それは何百年、あるいは何千年も地面の奥深くに根を食い込ませた大樹に衝突したかのような錯覚にボアは陥り、気合の雄たけびを上げながらデブリはボアの身体を持ち上げる。




「どす、こぉおおおいっ!!」

「フガァアアアアアッ!?」

『グギャアアアッ!?』




デブリはボアの巨体を持ち上げるだけではなく、そのまま身体を回転させって周囲に存在したホブゴブリンを蹴散らし、そのあまりの怪力にゴブリン達は自分達が「あれ、こいつ人間じゃなくてトロールなのか!?」と思うほどに凄まじく、一気に数十体のホブゴブリンが叩きのめされた。

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